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ウサギさんと出会いました
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面接先は商業区の中にあった。良い立地みたいだし、パーティーリーダーさんはお金持ちな人かも。
目的地までの道には、露店が広がる通りがあった。
昨日も少し見て回ったけど、ここの露店は少額の税金を払えば誰でも自由に店を出せるようだった。フリーマーケットみたいな感じで、趣味で作ったっぽい手作りの雑貨を出している人もいた。
――色々あって見てて飽きない。面白いなぁ。ちょっと寄り道していこうかな。
面接の時間は決まっていないし、急ぐ必要もない。
私はのんびり露店を見ながら歩いた。そのとき、ふと目に留まるアクセサリーショップがあった。
繊細な金属細工のネックレスや指輪に、きれいな石がはめ込まれている。
……ちょっと待って。これ、ただの石じゃないよ!???
この世界の私であるレイナは公爵令嬢だ。高価な品を見慣れている。この露店に並べられている宝石は、非常に危険なドラゴンの住む山脈でしか採れなかったはず。で、こっちの金属は、高難度ダンジョンの鉱石……。
「どうだ? 気に入ったのはあるか?」
目を丸くして商品を見ていると、店主に声をかけられた。私はその店主を見て、さらにびっくりさせられた。
「……ラビットマン?」
真っ白な身体にピンと伸びた耳、背丈は私の腰くらいまでだろうか。2足歩行のウサギさんだ。真っ白いお顔の中で、Y字のほんのり桜色の鼻が、ときどきヒクヒクと動いている。彼は後ろ足でちょこんと立って、赤い大きな瞳でこちらを見つめていた。かわいい。
「オレはラビットマンのラビリオだ。獣人を見るのは珍しいか?」
「あ、はい。えっと、失礼してたらすみません」
かわいいから、めっちゃジロジロ見てしまった。
「気にしないぞ。ラビットマンが人間の国に来ることは稀だからな」
彼、ラビリオ君の言う通り、人間の国に獣人は少なかった。差別とかではなく、種族によって快適な環境が違うから、住む場所が分かれるようだった。
「オレは今売っているみたいなアクセサリーを作るのが好きでな。昔っから色々作っていたんだが、ラビットマンにはあまりこういうのを喜ぶ奴がいなかったんだ。それで、ヒト族はお洒落だから、オレの作るものの価値が分かると思って来た。期待通り、売れ行きは順調だ」
ふふん、と、自慢げに語るウサギさん。いやでも、この品物の価値が分かってないのは、あなたも同じような……。こんな貴重な宝石類を、飲み屋の代金程度の値段で売るなんて……。
「えっと、この宝石とかはどうしてるの?」
「ああ、綺麗な石が採れる山があるんだ。強いモンスターがいるけど、オレはすばしっこいから捕まらないぞ」
また、ふふん、と自慢げにするウサギさん。もしかして、無自覚超ハイスペックだったりするのかな。すごい子に会ったかも。
このアクセサリーを買い占めて、適正価格で売れば、大儲け出来るんじゃ……。
「どうだ? どれにする? どれでも似合いそうだな。お前、ヒューマンでは美人って言われてるんじゃないか? この赤い石なんて、お前の黒髪に映えて良いと思うぞ」
楽しそうに商品を勧めるウサギさんのもふっもふの白いお手々の上で、赤い宝石のブレスレットがキラキラと光る。
ウサギさんのつぶらな瞳に、欲深い自分の顔が映っていた。
ダメ。転売ヤーは、絶対許さないっ!!!
「えと、じゃあ、この赤い石のブレスレットを……」
「まいどあり~♪」
結局、ウサギさんお勧めのブレスレットを1つだけ買った。
周りの人たちは今のところ、宝石の価値が分からないみたいで、騒ぎにはなっていなかった。でも、見る人が見たらいずれ気づく。大丈夫かな、あのウサギさん……。
目的地までの道には、露店が広がる通りがあった。
昨日も少し見て回ったけど、ここの露店は少額の税金を払えば誰でも自由に店を出せるようだった。フリーマーケットみたいな感じで、趣味で作ったっぽい手作りの雑貨を出している人もいた。
――色々あって見てて飽きない。面白いなぁ。ちょっと寄り道していこうかな。
面接の時間は決まっていないし、急ぐ必要もない。
私はのんびり露店を見ながら歩いた。そのとき、ふと目に留まるアクセサリーショップがあった。
繊細な金属細工のネックレスや指輪に、きれいな石がはめ込まれている。
……ちょっと待って。これ、ただの石じゃないよ!???
この世界の私であるレイナは公爵令嬢だ。高価な品を見慣れている。この露店に並べられている宝石は、非常に危険なドラゴンの住む山脈でしか採れなかったはず。で、こっちの金属は、高難度ダンジョンの鉱石……。
「どうだ? 気に入ったのはあるか?」
目を丸くして商品を見ていると、店主に声をかけられた。私はその店主を見て、さらにびっくりさせられた。
「……ラビットマン?」
真っ白な身体にピンと伸びた耳、背丈は私の腰くらいまでだろうか。2足歩行のウサギさんだ。真っ白いお顔の中で、Y字のほんのり桜色の鼻が、ときどきヒクヒクと動いている。彼は後ろ足でちょこんと立って、赤い大きな瞳でこちらを見つめていた。かわいい。
「オレはラビットマンのラビリオだ。獣人を見るのは珍しいか?」
「あ、はい。えっと、失礼してたらすみません」
かわいいから、めっちゃジロジロ見てしまった。
「気にしないぞ。ラビットマンが人間の国に来ることは稀だからな」
彼、ラビリオ君の言う通り、人間の国に獣人は少なかった。差別とかではなく、種族によって快適な環境が違うから、住む場所が分かれるようだった。
「オレは今売っているみたいなアクセサリーを作るのが好きでな。昔っから色々作っていたんだが、ラビットマンにはあまりこういうのを喜ぶ奴がいなかったんだ。それで、ヒト族はお洒落だから、オレの作るものの価値が分かると思って来た。期待通り、売れ行きは順調だ」
ふふん、と、自慢げに語るウサギさん。いやでも、この品物の価値が分かってないのは、あなたも同じような……。こんな貴重な宝石類を、飲み屋の代金程度の値段で売るなんて……。
「えっと、この宝石とかはどうしてるの?」
「ああ、綺麗な石が採れる山があるんだ。強いモンスターがいるけど、オレはすばしっこいから捕まらないぞ」
また、ふふん、と自慢げにするウサギさん。もしかして、無自覚超ハイスペックだったりするのかな。すごい子に会ったかも。
このアクセサリーを買い占めて、適正価格で売れば、大儲け出来るんじゃ……。
「どうだ? どれにする? どれでも似合いそうだな。お前、ヒューマンでは美人って言われてるんじゃないか? この赤い石なんて、お前の黒髪に映えて良いと思うぞ」
楽しそうに商品を勧めるウサギさんのもふっもふの白いお手々の上で、赤い宝石のブレスレットがキラキラと光る。
ウサギさんのつぶらな瞳に、欲深い自分の顔が映っていた。
ダメ。転売ヤーは、絶対許さないっ!!!
「えと、じゃあ、この赤い石のブレスレットを……」
「まいどあり~♪」
結局、ウサギさんお勧めのブレスレットを1つだけ買った。
周りの人たちは今のところ、宝石の価値が分からないみたいで、騒ぎにはなっていなかった。でも、見る人が見たらいずれ気づく。大丈夫かな、あのウサギさん……。
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