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露店市での再会2
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「で、レナ。そのローブ、いくらで売るつもりなの?」
露店市までの道を歩きながら、ロシェ君が聞いてくる。
うーん、ゲームで販売するときの相場は、1000ゴールドくらいだったかなぁ。
この世界のお金の単位はゴールドだ。宿屋とかの値段を見ると、1ゴールド1円くらいの感覚で良さそうだった。でも、生鮮食品の値段は日本よりちょっと安くなる。
「そうだねぇ。とりあえず、1着5000ゴールドくらいでどうかな?」
ゲームでの販売価格はプレイヤーの競争で値下がりした値段だし、最初はこれくらいかなぁ。
しかし、ロシェ君に大きなため息をつかれてしまった。
「10倍でいい。1着50000ゴールド」
「高級店に卸すなら、さらに高くてもいけそうだね」
アンジェラさんにも言われてしまった。
「まあ、レナの社会勉強と考えて、露店をやってみるのもいいんじゃない? 5万で出したら掘り出し物にはなるけど、極端に目立つものでもないだろ」
なんて話しながら露店を管理する役人のところへ向かっていると、誰かが言い争う声が聞こえてきた。
「何で露店の許可が出ないんだ。昨日まではすぐに出してただろ?」
「いいえ。あなたのお店で不当な扱いを受けたとおっしゃる方がいるのです。調査が済むまで、許可を出すことはできません」
「誰が言っているんだよ。オレはそんな変なことはしていないぞ!?」
どうやら、市を出しにきた人が役人と言い争っているらしい。ん? あれ、以前に露店市で見たアクセサリー屋のウサギさんじゃない? 名前は確か――
「ラビリオ君、どうしたの?」
声をかけると、小さなラビリオ君は私を見上げ、首を傾げた。
「お前、誰だ? どっかで会ったか??」
あう、覚えられてなかったか。まあ、露店に1回来ただけの客なんていちいち覚えてられないか。
「ほら、3日前にアクセサリーを買った者よ」
私はその時買ったブレスレットを着けた腕をラビリオ君に見せた。
「ああ、まいどどうも。着けてくれているんだな」
嬉しそうに私の腕を見るラビリオ君。かわいい。
「で、こんなところで言い争って、どうしたの?」
聞いてみると、彼は項垂れて、
「昨日まで金さえ払えばすぐに露店を出せたのに、今日になって急にダメだって言われたんだ」
と言った。
「ふむふむ。昨日、何か変わったことはあった?」
「そういえば、嫌な客が来たぞ。オレのアクセサリーを全部買うって言いだして。自分で身に着けるものしか売らないって追い返したんだ」
そういうことか。大体読めてきた。
ラビリオ君の露店は、子どもでも買える値段で自作のアクセサリーを売っていた。でも、そのアクセサリーには高額な宝石が使われていたのだ。周りの、露店市の普通のお客さんには、それを見抜く目がないから、綺麗な石ころでも使っているんだろうと思われていた。でも、見る人が見れば気づく。
「おや、こんなところで騒ぎですかな。どうされました?」
ふいに声がして、恰幅の良いおじさんが近づいてきた。
「あ、コイツだぞ。昨日の嫌な客!」
おじさんを指さしてラビリオ君が言った。
うんうん。そんな感じだね。身なり的にも、高級店をやってそうな商人さんだ。
「あなたは、昨日お会いしたウサギさんではありませんか。お困りなら、お話をお聞きしますよ。私はこの辺で顔が利きますのでなぁ」
ニヤニヤしながらおじさんが言う。ラビリオ君は、険しい顔をしていた。
「ねえ、ラビリオ君、一度落ち着くために、場所を移さない? 相談に乗るよ」
私が提案すると、様子を見ていたアンジェラさんも頷いて、
「そうだな。私の家に来な。茶くらい出すよ」
と乗ってきた。
「おい、小娘! 私が喋っているんだ。商売の邪魔をするな!!」
おじさんは怒鳴り声で私をにらんできたが、逆にアンジェラさんににらみ返された。
「おや。先に話していたのは私たちだと思ったけどねぇ。私はA級冒険者のアンジェラって者だけど、あんた、どこの商会だい?」
「A級冒険者? ぐ……、不用意に揉めるのはまずいな。ここは引こう。だが、ウサギさん、あなたの困りごと、冒険者では解決できませんよ。5番通りの私の店を訪ねなさい。そうすれば、すべて解決しますからね」
言うだけ言って、おじさんは去って行った。ラビリオ君はその背に向かってアカンベェをした。
「さて。だいたいの察しはついたけど、細かいことは分かってないんだ。説明してもらうよ」
私たちはラビリオ君を連れて、家に戻ることにした。
露店市までの道を歩きながら、ロシェ君が聞いてくる。
うーん、ゲームで販売するときの相場は、1000ゴールドくらいだったかなぁ。
この世界のお金の単位はゴールドだ。宿屋とかの値段を見ると、1ゴールド1円くらいの感覚で良さそうだった。でも、生鮮食品の値段は日本よりちょっと安くなる。
「そうだねぇ。とりあえず、1着5000ゴールドくらいでどうかな?」
ゲームでの販売価格はプレイヤーの競争で値下がりした値段だし、最初はこれくらいかなぁ。
しかし、ロシェ君に大きなため息をつかれてしまった。
「10倍でいい。1着50000ゴールド」
「高級店に卸すなら、さらに高くてもいけそうだね」
アンジェラさんにも言われてしまった。
「まあ、レナの社会勉強と考えて、露店をやってみるのもいいんじゃない? 5万で出したら掘り出し物にはなるけど、極端に目立つものでもないだろ」
なんて話しながら露店を管理する役人のところへ向かっていると、誰かが言い争う声が聞こえてきた。
「何で露店の許可が出ないんだ。昨日まではすぐに出してただろ?」
「いいえ。あなたのお店で不当な扱いを受けたとおっしゃる方がいるのです。調査が済むまで、許可を出すことはできません」
「誰が言っているんだよ。オレはそんな変なことはしていないぞ!?」
どうやら、市を出しにきた人が役人と言い争っているらしい。ん? あれ、以前に露店市で見たアクセサリー屋のウサギさんじゃない? 名前は確か――
「ラビリオ君、どうしたの?」
声をかけると、小さなラビリオ君は私を見上げ、首を傾げた。
「お前、誰だ? どっかで会ったか??」
あう、覚えられてなかったか。まあ、露店に1回来ただけの客なんていちいち覚えてられないか。
「ほら、3日前にアクセサリーを買った者よ」
私はその時買ったブレスレットを着けた腕をラビリオ君に見せた。
「ああ、まいどどうも。着けてくれているんだな」
嬉しそうに私の腕を見るラビリオ君。かわいい。
「で、こんなところで言い争って、どうしたの?」
聞いてみると、彼は項垂れて、
「昨日まで金さえ払えばすぐに露店を出せたのに、今日になって急にダメだって言われたんだ」
と言った。
「ふむふむ。昨日、何か変わったことはあった?」
「そういえば、嫌な客が来たぞ。オレのアクセサリーを全部買うって言いだして。自分で身に着けるものしか売らないって追い返したんだ」
そういうことか。大体読めてきた。
ラビリオ君の露店は、子どもでも買える値段で自作のアクセサリーを売っていた。でも、そのアクセサリーには高額な宝石が使われていたのだ。周りの、露店市の普通のお客さんには、それを見抜く目がないから、綺麗な石ころでも使っているんだろうと思われていた。でも、見る人が見れば気づく。
「おや、こんなところで騒ぎですかな。どうされました?」
ふいに声がして、恰幅の良いおじさんが近づいてきた。
「あ、コイツだぞ。昨日の嫌な客!」
おじさんを指さしてラビリオ君が言った。
うんうん。そんな感じだね。身なり的にも、高級店をやってそうな商人さんだ。
「あなたは、昨日お会いしたウサギさんではありませんか。お困りなら、お話をお聞きしますよ。私はこの辺で顔が利きますのでなぁ」
ニヤニヤしながらおじさんが言う。ラビリオ君は、険しい顔をしていた。
「ねえ、ラビリオ君、一度落ち着くために、場所を移さない? 相談に乗るよ」
私が提案すると、様子を見ていたアンジェラさんも頷いて、
「そうだな。私の家に来な。茶くらい出すよ」
と乗ってきた。
「おい、小娘! 私が喋っているんだ。商売の邪魔をするな!!」
おじさんは怒鳴り声で私をにらんできたが、逆にアンジェラさんににらみ返された。
「おや。先に話していたのは私たちだと思ったけどねぇ。私はA級冒険者のアンジェラって者だけど、あんた、どこの商会だい?」
「A級冒険者? ぐ……、不用意に揉めるのはまずいな。ここは引こう。だが、ウサギさん、あなたの困りごと、冒険者では解決できませんよ。5番通りの私の店を訪ねなさい。そうすれば、すべて解決しますからね」
言うだけ言って、おじさんは去って行った。ラビリオ君はその背に向かってアカンベェをした。
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