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 ざっと体を洗って部屋に戻る。寝室は明かりが落とされていた。 
「俺も浴びてくるね」と柔らかい声とともに相楽さんが横をとおりすぎる。緊張と、手持無沙汰で、とりあえずベッドの端に座った。
「……」 
 掛け布団はよけられ、ピンと張ったシーツの上には大きなバスタオルが広げられている。
 アロマ?的なものも用意したのが、ほんのり甘い香もする。
 どうしたらいいんだ?!
 魂が身体からサヨナラする前に相楽さんが帰ってきた。俺と同じガウンを羽織っている。

「じゃあ、脱いでうつぶせになってくれるかな。まずは……リラックスするためにマッサージをするよ」
 相楽さんに背を向けておそるおそるガウンを脱いで横によける。バスタオルの上に寝そべった。

「オイルマッサージってやったことあるかな?」
「ないです」

 AVで見たことならありますーー!

「ちょっと垂らすね。いい香りがするでしょう」
 相楽さんの指がぬるりと背中に触れた。その指で背中をひと撫ですると、彼の両方手の平が肩に添えられた。そのまま、ぐっぐっと圧される。
「肩凝ってるね」
「あー。座り仕事であんまり動かないから」
「運動はあんまりしない?」
「そうですね」
 気持ちいい。体重をかけられながら肩から背中にかけてほぐされる。
 本当にマッサージだ。血行がよくなりそう。

「ッ」
 相楽さんの指がうなじに近いところを掠めた。

「仰向けになろうか」

 往生際悪く股間を隠しながら体の上下を入れ替える。恥ずかしくって相楽さんの顔なんか見れない。
 その腕をとられてぐうっと伸ばされる。凝り固まった肩から腕の筋が伸びるようで気持ちいい。
「ばきばきって音する」
 相楽さんがくすくすと笑う。鎖骨の上、首のあたりのツボをぐりぐりと押された。
「全身、ほぐしていくね」
 相楽さんの手がオイルを塗りこむように撫でる。胸部、へその周辺、脇腹ーーはくすぐったくて身をよじってしまった。それからふくらはぎや太ももの外側。
 体がだんだんと温まっていって、眠たくなる。

「気持ちいい?」
「っ!!」
 急に脚のつけ根、パーソナルな部分を撫であげられて震えた。

 思い出した。
 これは整体でも懲りほぐしマッサージでもなくてSEXなんだって。
 吸い込む空気が甘くなった気がする。
 相楽さんが顔を近づける。鼻が触れ合いそう。
 キスする?!と思って目を閉じるが、彼の唇は俺の耳元に落ちた。

ーーくちゅり

 「ひゃっ、あ?!」
 水音が響く。同時に不埒な指が乳輪をなぞる。
 耳に相楽さんの舌が入っている?!と状況を理解した瞬間、体温が上がった。

「や、っ、ぁ、ちょっと待って」
「ーーかわいい」
「な?!」
 やっと耳を離した唇は俺の鎖骨をかすめて、乳首に落ちる。
 イケメンが見せつけるようにそこを弄る。
 なにこれ視覚の暴力。
 さらさらと裸の胸に滑る相楽さんの髪がくすぐったい。

「こっちも反応してる」
「あっ」
 性器を微塵も遠慮なく握りこまれた。
「待って、まって」
「まさか」
 ふっとどこか意地悪に彼が口角をつりあげた。
「声、だしな。その方が気持ちいいよ」
「む、むり、やぁっ」
 漏れる自分の声が恥ずかしい。でも乳首を軽く甘噛みされてぐちぐちと性器を弄られるともうダメだった。
 声が出ないように自分の手で口をふさぐ。
「こら」
 相楽さんに手が掴まる。
「ね。こっち触って」
 誘拐された手が触れたところは熱くて。びくついた指先が逃げる前にそこを握らされた。びくりとそれが脈うつ。「怖い?」
 ふるふると頭を振る。驚いた。イケメンで玄人な相楽さんが俺なんかに興奮している。
 相楽さんに性器を育てられる。初めての他人の手はそりゃもう気持ちよかった。
 そろそろイきたいと思ったところで突然放り出された。

「……え?」
「ナカ触るね。自分でやったことある?」
「あ。ヒートの時に少し。でも、あんまり良くなくて」
「そっか、そっか。じゃ、力抜くことだけ意識して」
 オイルを足した相楽さんの長い指がそこをくすぐる。つぷりと1本入った。
「はっ、あ、うぅ」
「うん。声だして。力抜いて」
 いつの間にか緊張して力が入っていた脚を意識して弛緩させる。

「ん、んん。……あっ」
 あっという間に指が2本になっていた。
「びりっとくるところあった?」
「あっ、あぁっ、ぁ、よくわかんな、い。ぞわぞわする」
「大丈夫。その、ぞわぞわするところに集中してごらん」
 浅いところの壁をおされると、ぞわぞわと少しびりびりがくる。

「はぁっ、あ、ぁ、あ、ぁん」
 だんだん浅いところだけじゃなくて奥を突かれてもぞわぞわするようになってきた。つま先が丸まる。

「も、もう。はぁっ、あ」
 汗が額を伝うのがわかる。ぐちゃぐちゃとそこがたてる音にも煽られる。

 ピピピピピピ。

 びくっと目を開けた。ちっと舌打ちした相楽さんがタイマーを止める。
 あ、もう終わるのかとどこか冷静な自分が思う。

「気持ちよくなろうか」
 イタリア人の挨拶のような軽いチークキスのあと、散々攻め立てられた。
 ナカはびりびりするところをスイッチのように何度も押されて、同時に性器は強くしごきあげられた。

 頭が真っ白になる。
 思い出すのも恥ずかしいような声をたくさんあげてイった。

 整わない呼吸のままはぁはぁと胎児のように丸くなる。
 ぐちっと相楽さんが穴の周りを撫でた。
「あんっ」
 イったばかりで敏感なのに。
「ねぇ。もしかしてヒートが近いのかな?」
「?」
「すごく濡れてる」

 そんなはずはない。今はヒートの時期ではないし、定期的な薬の飲み忘れもない。そう靄がかかったような頭で考えるけれど、相楽さんに説明することはできなかった。

 相楽さんが立ち上がってどこかへ行った。
 俺も動いて、後片付けとか、シャワーとか浴びなきゃ。
 でも、丸まって目をつぶることしかできなかった。

 ベッドが軋んで相楽さんが帰ってきた。肩を撫でられてびくっと跳ねる。やめて。たぶん今はどこ触られても反応してしまう。
「ごめんね。抑制剤飲んできたんだけど、止まれないかも……」
「?」
「そんなとろとろのかわいい顔しないで」
 覆いかぶさってきた相楽さんに頬を撫でられる。太ももに熱くて固くなっている相楽さんの性器が擦れた。

 アルファが俺を欲しがっている。
 背中から首にむかってぞくりとうずいた。

「ねぇ、俺が、君の初めてもらってもいいかな?」
 相楽さんの性器が脚に押し付けられて、欲望を宿した瞳が俺を捕らえる。

 処女。いいんじゃないか? もともとそのつもりだったんだ。

「あ、でも、追加料金払えない」
「そんなものはいらない。払うものは何もないよ」

 なら、何も問題はないんじゃないか?とぐちゃぐちゃな頭が安易に答を弾き出す。
 相楽さんの背中に手をまわして抱きしめると何故か安心した。

 そこからあっという間に再び高められて俺はぐずぐずに溶けた。
 「さっきは3本も指が入ってたから大丈夫」って相楽さんが囁くのを信じたんだけど、挿入ってきた指の比じゃないくらい圧迫感があって、泣いた。
 大きなそれは浅いところを圧迫するだけじゃなくて、ぞわぞわしていた奥をがんがん突かれて、わけがわからなくなる。
 首筋を舐められて、前も刺激されて、もう一度昇りつめた。
 耳元で低くうなる声がして、ゴム越しに相楽さんも達したのがわかった。


 わかったのはそこまで。
 座り仕事ばっかりで対して運動もしていない俺はそこで体力が尽きた。
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