運命の番探しは婚活アプリで【オメガバース】

たけうめ

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『ニックネーム:ケンタ
 性別:男
 バース性:オメガ
 年齢:27歳
 国籍:日本
 学歴:大卒
 職種:会社員(営業)
 年収:500万くらい
 身長:172cm
 体型:普通
 結婚歴:独身(未婚)
 こどもがほしいか:わからない
 出会うまでの希望:マッチング後すぐに会いたい
 性格:明るい、楽観的
 タバコ:吸わない
 好きなこと・趣味:ダイビング、旅行、ゲーム、英会話』

「うへ~ 質問項目多くね? まだ自己紹介文も書くの? 後から変更できるし適当にいれとくか」

『友達にすすめられてはじめました。
 運命の番と出会いたいっす。
 よろしくお願いします(^ω^)』

 写真フォルダから、夏に男友達と海釣りに行って「獲ったどーー!」と満面の笑顔を向けてる写真を選ぶ。犬っぽいと言われるくしゃっとした俺の笑顔は女性からの評判がなかなか良い。
 身分証明として免許証の写真を送信し、登録が完了した。
 わくわくしながらお相手を検索する。

「すっげー! スペックたっか!!」

 ずらずらとアップされる美男美女に歓声をあげた。

 俺が登録したのは“Barthyバーシー“というアプリだ。アルファとオメガしか登録できない婚活アプリ。
 従来、”運命の番”はお互いの匂いーーフェロモンーーを嗅ぐことでわかると言われてきた。
 発情期ヒートにかかわらずお互いにだけわかる甘い香があるらしい。しかし”運命の番”ならば、写真だけでも僅かながらピンとくるという研究論文が発表されて、Barthyは一躍有名になった。Barthyで運命の番が見つかったという体験談がいくつも投稿されている。

 そんなわけで、最近ベータの彼女に振られた俺も登録しようって気になったのだ。

 昔は定期的にヒートになるオメガは差別されていたらしいが、今は抑制剤が開発されてオメガも問題なく社会生活が送れる。
 オメガが虐げられるのはフィクションの中だけだ。虐げられていたオメガが運命のアルファに救われるシンデレラストーリーはただの定番のおとぎばなしだ。
 今までずっと俺は差別を感じたことはなかった。

 しかし、結婚も考えていたベータの彼女にオメガだと告白したら「ごめんなさい。他に運命の相手がいるかもしれない人はちょっと」と振られたのだ。
 いるのかいないのかわからない運命なんてものが障害になるなんて。

ーー運命の番め、いるなら現れてみやがれ!と半ばやけくそで流行りのアプリに登録した。


“Sunshineeeen!!!”

「なんだコイツ?」

 ふざけたプロフィールについ目を止めた。
 ジャングルを背景にサングラスと柄シャツの怪しい男。

『自己紹介文:今、油田を探してまーす。石油王に俺はなるwww』

「変な奴」
「あ、この超美人のおねーさん、住んでるとこ近そう! イイネっと。うお、こっちの子胸でけー!!」



「これ、けっこう俺いけてんじゃね? 簡単に運命みつかったりー?」

 そう調子乗ってた頃もありましたーー。

「あかん。俺氏ぜんぜんモテへんのや」
 てきとうな関西弁をマネてくだを巻く俺に、隣の超絶美人がため息をついた。

「ケンタはさぁ、女に限定してるからダメなんじゃないの?」
「えぇ~ だって俺、おっぱい好きなんだもん。ぱふぱふしたい」
「たしかにおっぱいは正義」
「だろ? 男に興味ねーよー」

「でも、運命の相手は男かもしれないでしょ」

 超絶美人ーーさやかさんは少し眉をしかめながら俺に忠告した。

 さやかさんはBarthyでマッチングしたアルファだ。職場が近いこともわかり、すぐに会ってみた。
 1回目のデートの首尾は上々で、さばさばした気性で姉御肌のさやかさんとは話題も合って盛り上がった。
 これはイケるとテンションアゲアゲで臨んだ2回めのデート。

「ごめんなさい、ケンタくん。運命の番がみつかったの」

 俺の下心は玉砕した。
 さやかさんは俺との1回目のデートのあと、Barthyで不思議と気になる子を見つけたそうだ。北海道の子だった。運命なんて半信半疑だったさやかさんだが、落ち着かない気持ちを持て余して悩むくらいなら行動をと、ぱっと飛行機のチケットを取って会いに行った。
 そこで運命の番だと確信したらしい。

 さやかさんはメッセージアプリで済まさずに運命の番がみつかったことを直接告げにきてくれた。そこから、なんだかんだで馬が合った俺たちは飲み友達になっている。

「私も女子に興味なかったのよ。でも、モモは別。あんなにくらくらするような甘い香りはじめて」
 そう言って愛おしそうに微笑んださやかさんはぐいっとビールをあおって「それに、モモのFカップは私だけのもの」とニヤリと挑戦的に笑った。

ーーくっそ、俺も巨乳のアルファ彼女に出会いたい!

ーーBarthyで運命がみつかるって言うけど、結果論ね。会いに行かなかったらモモに気づけなかったかもしれないわ。だからあなたもどんどん会ってみなさい。
 飲みすぎてふにゃふにゃになっている俺に、さやかさんからそうアドバイスしていた。



「男かぁ」

 俺に”いいね”するアルファは男も多い。今まで無視スキップしてきた。
 ヴンっとスマホが振動してメッセージの受信を知らせる。
 いや、たった一人だけマッチングした男がいる。

 画面には"Sunshine"と表示されている。

『準備おーけー』
『あと30分くらいで家につくからちょっと待て』
『早くしろよー。明日からマサイ族に会いに行くからネット繋がんねーかもしれないんだよ』
『マサイってwww 太陽何やってんだよw アフリカに電波あんの?!』

 ぽんぽんとメッセージを返しながら家路を急ぐ。

 Barthyで太陽からイイネとメッセージをもらった。
『はじめましてー。俺の名前太陽ね。なんかケンタと趣味とか被ってて気になったんだけど、友達になんない? あのマイナーなゲーム好きなやついるとかびっくりした笑』
 Barthyでは趣味やこだわりとか登録し、そこから同じ趣味の相手を検索することもできる。
 俺も好きな映画やらゲームやらバンドを登録していた。

 ”いいね”をもらって太陽のプロフィールをのぞくと、”Sunshineeeen!!!”って名前で石油王になるとか書いていた奴だった。そしてやたら趣味が被っていて驚いた。マイナーなゲームも音楽の傾向もホラー映画好きってことも。

 男はスキップの俺だけど気になってマッチングしてみた。
 太陽はおもしろい奴だった。

 どうもふらふらして国内外を飛び回っていたら、親父さんに怒られて油田をみつけてこいとアラブに飛ばされたらしい。
『でも、ラマダン断食月になってさー。スタッフが日中は断食しててふらふらで仕事になんねーの。それでヒマでさ』
 ヒマでBarthyに登録した、と。

 趣味も合うし、太陽のワールドワイドな話は聞いていて本当におもしろい。
 俺たちはメッセージアプリの連絡先を交換して、オンラインゲームで集うダチになった。

「ログインしたよ」
「おせーよ」
「今日はさやかさんと飲んでたんだ」
「さやかさんって、Barthyで知り合ったっていう?」
「そうそう」

 メッセージアプリの通話機能は無料で海外の相手とも話せる。便利な世の中だ。

「男ともマッチングしてみたらどうだって」
「気をつけろよ」
「え? あああ、死んだーー」
「お前、隙があるんだよ」
「うっせ。早く生き返らせろって」


 太陽が俺を心配していたって知ったのはだいぶ後の話。
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