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しおりを挟むスマホの充電が切れたのが先か、俺が寝落ちしたのが先か。見慣れない天井に驚いて、時間を見ようとスマホを探ったら画面は真っ暗で。辺りを見回すとベッドサイドのデジタル時計が翌朝をさしていた。
「とりあえず、シャワー浴びるか」
うんともすんとも言わないスマホを充電器に繋げ、脱ぎ捨てた服をかき集めながら風呂場に向かった。
一通りの家具は揃っているが人の生活臭はしない。ぼんやりとしか覚えていないのだが自由に使っていいと言われたはずだ。
シャワーを浴びた俺は新品のバスローブをみつけ、拝借することにした。
脱ぎ捨てた服とシーツを洗濯機につっこんで起動させる。
充電中のスマホを確認すると電源をいれることができた。
「うわ」
おびただしい量の着信とメッセージが入っていた。
「太陽を心配させたよな~」
濡れたままの髪をがしがしとかきながら返信をうとうとしたとき、ピンポーンとチャイムが鳴った。
誰?と思いつつも勝手に使用しているのは俺だ。慌てて玄関に向かう。
「え」
ドアをあけると、背の高いサングラスをかけた男が立っていた。
「ケンタ大丈夫か?!」
「太陽?! えっ?! おま、槍?!」
押し入るように玄関から中に入ってきた男は柄もののTシャツにビーサン、何より背中に武骨な槍を背負っていた。
俺のあげた素っ頓狂な声に男はぴたりと動きを止めて、あーとかうーとかうなりながら「とりあえず上がっていいか」と俺に尋ねた。
槍を置いてサングラスを外した男とリビングのテーブルを囲む。
「……」
ーーいや、こんなわけがわからない状況あるか。
「お前、けっこうでかいんだな」
ーーああ、俺混乱してる。こんなこと聞いている場合じゃないのに。
でも、アプリのプロフィール写真で感じたより太陽は背が高かった。
俺と10センチ以上差があるんじゃないか?
「ケンタは写真より、かわ……、いや、いい」
ーーカワ?
太陽は動揺したように日に焼けたごつごつした大きな手で口元を覆って視線を下に向けてしまった。
その動揺が移ったのかなぜかドキドキしてきて俺まで視線をさまよわせてしまう。
槍がある。
俺の目線に太陽は気づいたようだ。
「あー、それは、マサイの首長に......」
そこで言いよどんだ太陽はしっかりと俺の目をみつめてきた。こいつの瞳、茶色っぽいんだな。
「俺の、魂の番がピンチだって言ったら、戦士なら闘って番を守れって槍をわたされた。機内持ち込みで引っかかって大変だったが、まぁ、なんとか。
ってかその飛行機も親父に、こ、婚約者の危機だって言って無理やりチケット取った。ここまで生きた心地がしなかった。
ケンタ、お前は俺の運命だ」
「は? ちょっと待って、情報が多すぎる。戦士? 運命?」
「ああ。俺もなんか半信半疑だったけど、なんかお前がアルファと会うっていうともやもやして。さやかさんだっけ女性のアルファは何もないってすぐにわかったけど、次は男に会うとか言い出すし。
日本に帰る都合つけられなくて、とりあえずお前の住んでるところ調べて近くに清水に家だけ借りてもらってて……よかった。
もー、隙だらけなんだよ。そんなに甘いにおいさせてんのに、無防備な格好してるし」
「へ」
太陽の視線に晒されて急にバスローブ一枚が心もとなくなってくる。かぁっと頬に熱があつまったように感じて心臓がどきどきと存在を主張し始めた。
太陽が話した内容は情報過多すぎて処理が追いつかない。
がたりとやたら音が響いて太陽が立ち上がった。
太陽は大きな背をまるめて俺の顔をのぞきこんだ。
「髪、まだ濡れてる」
大きな両手で頭を包みこまれて、指が触れた耳がぞわぞわする。
昨夜の熱は完全に終わっていて、抑制剤はよく効いているのに。
ついさっき初めて会った男なのに。
嫌悪感は全くない。
大量のワインをまき散らしたような芳香がする。昨夜以上に酔ったみたいに頭がぐらぐらしてきた。
俺より先に俺の体が運命だと反応していた。
「けんた」
俺は目をつむって落ちてきた唇を受け止めた。
この後、婚約者に牛をプレゼントするべきだって太陽のマサイ族の友達から連絡が入ったり、太陽がいろんな手を使って俺のこと調べていたことがわかって殴ったり、なぜか歌のおにーさんがテレビに出なくなったり、運命の番の婚約者を連れてこいって二人で親父さんに呼びだされたり、さやかさんとモモちゃんに報告したり、たまにはテレフォンセッ〇スもやろうなどのたまう太陽を殴ったり、俺も油田探しに行くことになったり。
すったもんだしたけれど、それはまた別の話で。
こうして俺と太陽は運命の番に出会えたことを運営に報告して、二人でBarthyを退会したのだった。
君も"運命の番さがしは婚活アプリで" ね。
~Happy End~
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