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11 共に過ごす日々
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ルーカスが目を覚ましたとき、部屋の中は薄暗く、カーテンの隙間からわずかに朝の光が漏れていた。
傍らでは、椅子に浅く腰かけたアリシアが、膝に置いた布巾を抱えたまま、静かに眠っている。
「……アリシア……?」
呼びかけると、彼女ははっと目を開けた。疲れた目元に、安堵の色が滲む。
「ルーカス……よかった、目が覚めたのね」
アリシアは椅子から立ち上がり、そっとルーカスの額に手を当てた。手のひらは冷たく、けれどとても優しかった。
「熱は……少し下がってるみたい。まだ無理しないでね」
ルーカスは軽く首を横に振った。
「……すまない。迷惑をかけて」
「いいえ、迷惑なんかじゃないわ。……私、あなたを見つけたとき、本当に……胸が潰れるかと思ったの」
声が震えていた。ルーカスはそれ以上、何も言えなかった。
「…ここは?」
「街の宿をしばらく借りたの。ルーカスが元気になるまで、ゆっくり休んでほしいわ。」
「宿・・・」
「今、お金ね心配をしたでしょう?
大丈夫よ。孤児院を出てから商会で働き始めてね、そこの商会が割とお給料良いの。実はお金持ちなの。」
アリシアはおどけた口調で続ける。
「あ、今、疑いの眼差し!!本当よ。
寮暮らしだし、食事付きだし、
ご覧の通り、私はオシャレしないでしょう?!
お金を費う所がないの。」
ルーカスは改めて久しぶりに
アリシアを見つめる。
シンプルなワンピースに
さらさらの黒髪は一つに縛られて
すっきりまとめている。
幼い頃、ルーカスと共に過ごした
アリシアと変わらない。
アリシアは、透き通る白い肌、
黒い瞳、通った鼻筋、形の良い唇。
端正であり、清楚な美しさを持っていた。
変わった点は、あの頃より背が少し伸びて
女性らしくなっていた。
「ごめん・・・」
「謝るのは無しよ!謝られるより、ありがとうと言われた方が嬉しいわ」
ルーカスは昔と変わらない口調の
アリシアに嬉しさを感じて思わず微笑む。
「ありがとう」
「うん。その方が嬉しい」
2人はぎこちなく微笑み合った。
⸻
アリシアが借りた小さな部屋は、古びているが清潔で、窓辺に花を飾る余裕もあった。
彼女が住み込みで働く商会までは徒歩で通える距離であり、昼の数時間を除いて、ルーカスのそばにいることができた。
ある日、ルーカスが痛む右腕を庇いながら起き上がろうとすると、アリシアが慌てて駆け寄った。
「ダメよ、無理に動かないで」
「……自分でできる」
「できるかどうかじゃなくて、回復を早めるには安静が一番なの。少しくらい、人を頼ってもいいのよ」
「……そういうの、慣れてない」
「私だって慣れてないわ。でも、あなたが頑張ってきたこと、知ってるもの」
その言葉に、ルーカスはふと目を伏せた。
⸻
アリシアは毎日、傷の手当てをし、温かいスープを持ってきた。夜には小さな灯りの下で本を読み聞かせることもあった。ふたりの会話は最初は断片的だったが、次第に長く、そして深くなっていった。
「……孤児院で育ったって、変な意味じゃなくて……あの頃が一番、安心してたかもしれないな」
「……私も。皆で支え合ってたから。辛いこともあったけど、誰かが必ず笑っててくれた。ルーカスがいてくれたから、私は怖くなかったの」
ルーカスは少し驚いた顔で、アリシアを見た。
「……そうだったか」
「うん。だから今度は、私が支えたいの。ルーカスが笑えるように」
不器用な沈黙のあと、ルーカスは初めて、ほんの少し口元を緩めた。
「……ありがとう」
⸻
夜。ふたりは灯りを少しだけ落とし、
並んで窓の外を見つめていた。
そろそろアリシアは寮に戻る。
街の灯が滲むなか、アリシアが静かに言った。
「ルーカス、あなたがもう筆を握れないとしても……それでも、あなたがあなたであることに変わりはないのよ」
ルーカスの瞳が揺れた。まだ傷は癒えない。でも、彼の心には、確かに温かいものが灯りはじめていた。
傍らでは、椅子に浅く腰かけたアリシアが、膝に置いた布巾を抱えたまま、静かに眠っている。
「……アリシア……?」
呼びかけると、彼女ははっと目を開けた。疲れた目元に、安堵の色が滲む。
「ルーカス……よかった、目が覚めたのね」
アリシアは椅子から立ち上がり、そっとルーカスの額に手を当てた。手のひらは冷たく、けれどとても優しかった。
「熱は……少し下がってるみたい。まだ無理しないでね」
ルーカスは軽く首を横に振った。
「……すまない。迷惑をかけて」
「いいえ、迷惑なんかじゃないわ。……私、あなたを見つけたとき、本当に……胸が潰れるかと思ったの」
声が震えていた。ルーカスはそれ以上、何も言えなかった。
「…ここは?」
「街の宿をしばらく借りたの。ルーカスが元気になるまで、ゆっくり休んでほしいわ。」
「宿・・・」
「今、お金ね心配をしたでしょう?
大丈夫よ。孤児院を出てから商会で働き始めてね、そこの商会が割とお給料良いの。実はお金持ちなの。」
アリシアはおどけた口調で続ける。
「あ、今、疑いの眼差し!!本当よ。
寮暮らしだし、食事付きだし、
ご覧の通り、私はオシャレしないでしょう?!
お金を費う所がないの。」
ルーカスは改めて久しぶりに
アリシアを見つめる。
シンプルなワンピースに
さらさらの黒髪は一つに縛られて
すっきりまとめている。
幼い頃、ルーカスと共に過ごした
アリシアと変わらない。
アリシアは、透き通る白い肌、
黒い瞳、通った鼻筋、形の良い唇。
端正であり、清楚な美しさを持っていた。
変わった点は、あの頃より背が少し伸びて
女性らしくなっていた。
「ごめん・・・」
「謝るのは無しよ!謝られるより、ありがとうと言われた方が嬉しいわ」
ルーカスは昔と変わらない口調の
アリシアに嬉しさを感じて思わず微笑む。
「ありがとう」
「うん。その方が嬉しい」
2人はぎこちなく微笑み合った。
⸻
アリシアが借りた小さな部屋は、古びているが清潔で、窓辺に花を飾る余裕もあった。
彼女が住み込みで働く商会までは徒歩で通える距離であり、昼の数時間を除いて、ルーカスのそばにいることができた。
ある日、ルーカスが痛む右腕を庇いながら起き上がろうとすると、アリシアが慌てて駆け寄った。
「ダメよ、無理に動かないで」
「……自分でできる」
「できるかどうかじゃなくて、回復を早めるには安静が一番なの。少しくらい、人を頼ってもいいのよ」
「……そういうの、慣れてない」
「私だって慣れてないわ。でも、あなたが頑張ってきたこと、知ってるもの」
その言葉に、ルーカスはふと目を伏せた。
⸻
アリシアは毎日、傷の手当てをし、温かいスープを持ってきた。夜には小さな灯りの下で本を読み聞かせることもあった。ふたりの会話は最初は断片的だったが、次第に長く、そして深くなっていった。
「……孤児院で育ったって、変な意味じゃなくて……あの頃が一番、安心してたかもしれないな」
「……私も。皆で支え合ってたから。辛いこともあったけど、誰かが必ず笑っててくれた。ルーカスがいてくれたから、私は怖くなかったの」
ルーカスは少し驚いた顔で、アリシアを見た。
「……そうだったか」
「うん。だから今度は、私が支えたいの。ルーカスが笑えるように」
不器用な沈黙のあと、ルーカスは初めて、ほんの少し口元を緩めた。
「……ありがとう」
⸻
夜。ふたりは灯りを少しだけ落とし、
並んで窓の外を見つめていた。
そろそろアリシアは寮に戻る。
街の灯が滲むなか、アリシアが静かに言った。
「ルーカス、あなたがもう筆を握れないとしても……それでも、あなたがあなたであることに変わりはないのよ」
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