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(十七年前)
王立貴族学園の入学式の日。
春の陽射しが花弁を透かし、校庭は新入生たちの明るいざわめきで満ちていた。
レア・フェルディナンは、その中心に立つだけで周囲の景色までも華やかにしてしまう少女だった。
漆黒に近い栗毛は春風にふわりと揺れ、白磁の肌は光を受けて淡く輝く。
物怖じしない態度に、きらきらとした微笑み――
愛されて育った少女ならではの、眩しい自信と明るさがあった。
(学園生活が実りあるものになりますように……)
そう胸に願いを抱きつつ、レアは入学後最初の学生行事――春季討論会へと足を向けた。
*
王立貴族学園では、入学後最初の月、
「春季総合討論会」 が開かれる。
一年生にとっては、学園生活で最初に自分を示す大きな晴れ舞台だ。
討論会は講堂に設けられた半円形の壇上で行われる。
全学年の教師と多くの上級生が見守る中、各クラスの選抜生が二つの陣営に分かれて討論を交わす。
テーマは年によって異なるが、この年のテーマは
「王国の財政における地方貴族の役割」
政治・経済・歴史――
それぞれの知識と論理力が試される、まさに学園の伝統行事だった。
壇上には、選ばれた8名の一年生が立つ。
成績優秀者が揃うAクラスからは、灰金の髪の少年――ジュール・エヴェラール。
肩までの長さの灰金の髪が春光を受けて淡く光り、端正な顔立ちに、深い蒼の瞳は聡明さを写しだす。
背が高く、姿勢の良さから芯の通った“静かな存在感”があった。
その姿を見た上級生がざわついた。
「Aクラスの新入生が壇上に立つのは三年ぶりらしいぞ」
「首席で入学したんだって?」
「港町の子爵家らしい。珍しいな……もう風格がある」
「十五歳とは思えない。落ち着きが違う」
演説台の前に立つだけで、空気がすっと澄むようだった。
観客席側では、Bクラスの席に座るレアが胸を高鳴らせていた。
“学園一の才気が集う舞台”
それが春季討論会。
華やかで、緊張に満ち、一年の始まりにして学園中の視線が集まる儀式のような場所だ。
どんな討論が交わされるのか。
どんな生徒たちがこの学園を引っ張っていくのか。
興味が抑えられなかった。
幼い頃から優れた家庭教師に囲まれて育ったが、同年代の少年少女たちが真剣に理を交わす姿など見たことがない。
(今年はきっと退屈なんかじゃないわ)
思わずそんな期待がこぼれた。
レアの世界は、これから大きく広がる——その予感に、胸が自然と高鳴っていた。
その予感は、壇上に立つ一人の少年を見た瞬間、確信に変わった。
その少年は、ひとりだけ光の密度が違って見えた。揺れる春光を受けて、灰金の髪がふわりと透ける。
横顔の輪郭は静かな彫像のようで、伏せた睫毛の影が落ちるたび、蒼い瞳が静かな熱を宿して議題を見据える。
(……あの子、誰?)
レアは、自分が壇上の誰よりもその瞳に引き寄せられていることに気づけなかった。
そして——
彼は、静かにしかし揺るぎなく口を開いた。
「……今回の問題の本質は、“法が誰を守るためにあるのか”という一点にあります」
低く澄んだ声が講堂に響き渡る。
荒げるでもなく、強調するでもなく、
ただ理を積み重ねるような落ち着いた調子だった。
なのに、その一語一句が耳の奥に深く届く。
彼が誰かを論破するためではなく、“正しいと思う道筋”を静かに描こうとしているのがわかった。
彼の言葉は、若い学生たちには珍しいほど確かな信念と冷静な思考に満ちていた。
言葉が進むほどに、会場はしんと静まり返る。
まるで、みんなが息を飲んで、彼の声に耳を澄ませているようだった。
(……なに、この人……)
最初に浮かんだのは驚きだった。
“美形”――それだけなら学園には何人もいる。華やかな容姿の貴族子息は珍しくない。
けれどーー
(……光って見える……)
春の舞台の中央で、ひとり淡い光をまとって立つ少年。
背筋はすっと伸び、誇り高さと静けさが同居している。
周囲がざわつくほどの凛とした美貌なのに、本人はそれに無頓着なように見えた。
(どうして……こんな落ち着いた話し方ができるの?)
年齢は自分と同じ十五歳のはずなのに、その声には、不思議な深みがあった。
討論が進むにつれ、レアは胸の奥が熱くなっていく。
「すごい……この人……」
気づけば、手に持つハンカチをきゅっと握りしめていた。
(……素敵な人…)
その瞬間、レアははっきりと悟った。
どんな宝石よりも、どんな称賛よりも――
壇上で言葉を紡ぐその少年のほうが、ずっと眩しかった。
ああ――
この人を“私のもの”にしたい。
理性が言葉を探すより先に、心が彼に落ちていた。
***
討論会が終わり、生徒たちが講堂から溢れ出る。
レアはその流れの間をすり抜け、ただひとりを探すように視線を巡らせた。
窓辺へ向かう、灰金の髪の少年。
肩までの髪が春光を受けて淡く揺れ、背筋が真っ直ぐ通っている。
(……見つけた)
レアの胸がかすかに跳ねた。
足が勝手に向かう。
自分でも驚くほど迷いがなかった。
「ねぇ、あなた」
呼び止めた声に、ジュールは立ち止まった。
ゆっくりと振り向き、レアの姿を認めると、わずかに目を丸くしたが、すぐに表情を整えた。
「……フェルディナン嬢。何かご用ですか?」
穏やかで、礼を失さない声音。
けれど、近くで見ると耳がほんのり赤い。
(可愛い……でも、堂々としてる……)
レアは微笑みを浮かべた。
「さっきの討論会、あなた……とても印象的だったわ」
「……光栄です」
ジュールは軽く頭を下げたが、視線は逃がさない。彼なりの礼儀とまっすぐさが、その一瞬に宿っていた。
「構成の仕方も、反論の切り返しも鮮やかだった。Aクラスって、皆あんなに優秀なの?」
「いえ。今日、僕がうまく話せたのは……議題が得意だったからです」
レアは一歩近づく。
ジュールのまつげがかすかに揺れた。
「私は、あなたの話し方が好きだったわ」
ジュールの蒼の瞳が、ほんのわずか揺れる。その反応を見た瞬間――胸の奥が甘く痺れた。
「……ありがとうございます。フェルディナン嬢」
「レアでいいわ」
ジュールは瞬きをし、少しだけ視線をさまよわせてから、小さく息を整えて言った。
「……では、レア嬢。僕のことも、ジュールと呼んでください」
堂々としているのに、不器用で照れやすい。その絶妙なバランスが、レアにはたまらなかった。
「ええ。じゃあ――ジュール」
名前を呼ぶと、ジュールの喉がかすかに震えた。
それは誰にも気づかれないほど小さな揺れだったけれど、レアにははっきりと伝わった。
(……私の名前を呼ばせたら、きっともっと可愛い反応をするわね)
「よかったら、また話してくれる?」
レアの問いに、ジュールは一瞬だけ戸惑ったが――小さく、しかし確かに頷いた。
「……ええ。機会があれば」
「ふふ、“機会”なんて待たないわ。では、また明日」
そう言って歩き出したレアの背中は、勝利を収めた将のように軽やかで、誇らしかった。
(始まった。私の恋が)
気づけば口元には、抑えきれない笑みが浮かんでいた。
王立貴族学園の入学式の日。
春の陽射しが花弁を透かし、校庭は新入生たちの明るいざわめきで満ちていた。
レア・フェルディナンは、その中心に立つだけで周囲の景色までも華やかにしてしまう少女だった。
漆黒に近い栗毛は春風にふわりと揺れ、白磁の肌は光を受けて淡く輝く。
物怖じしない態度に、きらきらとした微笑み――
愛されて育った少女ならではの、眩しい自信と明るさがあった。
(学園生活が実りあるものになりますように……)
そう胸に願いを抱きつつ、レアは入学後最初の学生行事――春季討論会へと足を向けた。
*
王立貴族学園では、入学後最初の月、
「春季総合討論会」 が開かれる。
一年生にとっては、学園生活で最初に自分を示す大きな晴れ舞台だ。
討論会は講堂に設けられた半円形の壇上で行われる。
全学年の教師と多くの上級生が見守る中、各クラスの選抜生が二つの陣営に分かれて討論を交わす。
テーマは年によって異なるが、この年のテーマは
「王国の財政における地方貴族の役割」
政治・経済・歴史――
それぞれの知識と論理力が試される、まさに学園の伝統行事だった。
壇上には、選ばれた8名の一年生が立つ。
成績優秀者が揃うAクラスからは、灰金の髪の少年――ジュール・エヴェラール。
肩までの長さの灰金の髪が春光を受けて淡く光り、端正な顔立ちに、深い蒼の瞳は聡明さを写しだす。
背が高く、姿勢の良さから芯の通った“静かな存在感”があった。
その姿を見た上級生がざわついた。
「Aクラスの新入生が壇上に立つのは三年ぶりらしいぞ」
「首席で入学したんだって?」
「港町の子爵家らしい。珍しいな……もう風格がある」
「十五歳とは思えない。落ち着きが違う」
演説台の前に立つだけで、空気がすっと澄むようだった。
観客席側では、Bクラスの席に座るレアが胸を高鳴らせていた。
“学園一の才気が集う舞台”
それが春季討論会。
華やかで、緊張に満ち、一年の始まりにして学園中の視線が集まる儀式のような場所だ。
どんな討論が交わされるのか。
どんな生徒たちがこの学園を引っ張っていくのか。
興味が抑えられなかった。
幼い頃から優れた家庭教師に囲まれて育ったが、同年代の少年少女たちが真剣に理を交わす姿など見たことがない。
(今年はきっと退屈なんかじゃないわ)
思わずそんな期待がこぼれた。
レアの世界は、これから大きく広がる——その予感に、胸が自然と高鳴っていた。
その予感は、壇上に立つ一人の少年を見た瞬間、確信に変わった。
その少年は、ひとりだけ光の密度が違って見えた。揺れる春光を受けて、灰金の髪がふわりと透ける。
横顔の輪郭は静かな彫像のようで、伏せた睫毛の影が落ちるたび、蒼い瞳が静かな熱を宿して議題を見据える。
(……あの子、誰?)
レアは、自分が壇上の誰よりもその瞳に引き寄せられていることに気づけなかった。
そして——
彼は、静かにしかし揺るぎなく口を開いた。
「……今回の問題の本質は、“法が誰を守るためにあるのか”という一点にあります」
低く澄んだ声が講堂に響き渡る。
荒げるでもなく、強調するでもなく、
ただ理を積み重ねるような落ち着いた調子だった。
なのに、その一語一句が耳の奥に深く届く。
彼が誰かを論破するためではなく、“正しいと思う道筋”を静かに描こうとしているのがわかった。
彼の言葉は、若い学生たちには珍しいほど確かな信念と冷静な思考に満ちていた。
言葉が進むほどに、会場はしんと静まり返る。
まるで、みんなが息を飲んで、彼の声に耳を澄ませているようだった。
(……なに、この人……)
最初に浮かんだのは驚きだった。
“美形”――それだけなら学園には何人もいる。華やかな容姿の貴族子息は珍しくない。
けれどーー
(……光って見える……)
春の舞台の中央で、ひとり淡い光をまとって立つ少年。
背筋はすっと伸び、誇り高さと静けさが同居している。
周囲がざわつくほどの凛とした美貌なのに、本人はそれに無頓着なように見えた。
(どうして……こんな落ち着いた話し方ができるの?)
年齢は自分と同じ十五歳のはずなのに、その声には、不思議な深みがあった。
討論が進むにつれ、レアは胸の奥が熱くなっていく。
「すごい……この人……」
気づけば、手に持つハンカチをきゅっと握りしめていた。
(……素敵な人…)
その瞬間、レアははっきりと悟った。
どんな宝石よりも、どんな称賛よりも――
壇上で言葉を紡ぐその少年のほうが、ずっと眩しかった。
ああ――
この人を“私のもの”にしたい。
理性が言葉を探すより先に、心が彼に落ちていた。
***
討論会が終わり、生徒たちが講堂から溢れ出る。
レアはその流れの間をすり抜け、ただひとりを探すように視線を巡らせた。
窓辺へ向かう、灰金の髪の少年。
肩までの髪が春光を受けて淡く揺れ、背筋が真っ直ぐ通っている。
(……見つけた)
レアの胸がかすかに跳ねた。
足が勝手に向かう。
自分でも驚くほど迷いがなかった。
「ねぇ、あなた」
呼び止めた声に、ジュールは立ち止まった。
ゆっくりと振り向き、レアの姿を認めると、わずかに目を丸くしたが、すぐに表情を整えた。
「……フェルディナン嬢。何かご用ですか?」
穏やかで、礼を失さない声音。
けれど、近くで見ると耳がほんのり赤い。
(可愛い……でも、堂々としてる……)
レアは微笑みを浮かべた。
「さっきの討論会、あなた……とても印象的だったわ」
「……光栄です」
ジュールは軽く頭を下げたが、視線は逃がさない。彼なりの礼儀とまっすぐさが、その一瞬に宿っていた。
「構成の仕方も、反論の切り返しも鮮やかだった。Aクラスって、皆あんなに優秀なの?」
「いえ。今日、僕がうまく話せたのは……議題が得意だったからです」
レアは一歩近づく。
ジュールのまつげがかすかに揺れた。
「私は、あなたの話し方が好きだったわ」
ジュールの蒼の瞳が、ほんのわずか揺れる。その反応を見た瞬間――胸の奥が甘く痺れた。
「……ありがとうございます。フェルディナン嬢」
「レアでいいわ」
ジュールは瞬きをし、少しだけ視線をさまよわせてから、小さく息を整えて言った。
「……では、レア嬢。僕のことも、ジュールと呼んでください」
堂々としているのに、不器用で照れやすい。その絶妙なバランスが、レアにはたまらなかった。
「ええ。じゃあ――ジュール」
名前を呼ぶと、ジュールの喉がかすかに震えた。
それは誰にも気づかれないほど小さな揺れだったけれど、レアにははっきりと伝わった。
(……私の名前を呼ばせたら、きっともっと可愛い反応をするわね)
「よかったら、また話してくれる?」
レアの問いに、ジュールは一瞬だけ戸惑ったが――小さく、しかし確かに頷いた。
「……ええ。機会があれば」
「ふふ、“機会”なんて待たないわ。では、また明日」
そう言って歩き出したレアの背中は、勝利を収めた将のように軽やかで、誇らしかった。
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