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第三章【カレンへの試練】
ローズマリー
集合場所は、首都リースの『帝国広場』。
巨大な円形の噴水の周りを自動車や馬車がひっきりなしに往来している。噴水と車道の間は円形の歩道になっており、さらには通常の歩道と接続する地下歩道も整備されていて、噴水前まで人々が自由に行き来できるようになっている。
正面には株式証券取引所があり、人の通行量も知名度も申し分ない、首都屈指の観光スポットだ。
人目につかない場所どころか、人目に晒される場所の方がいいとロイは判断したらしい。
カレンは、ハルヒコに「もう大丈夫だから」と声をかけ、一人車を降り、噴水前で待機した。
ハルヒコにロイの姿を見られていないかソワソワしていると、一人の女性が話しかけてきた。
「こんにちは。カレンさん」
「え?」
長い栗色の髪に、上品なエンジ色のドレスを纏っている。カレンの真っ黒な地味なドレスとは、華やかさに天と地ほどの差がある。
「あの……どちら様ですか?」
「ローズマリー」
「え?」
「どういうこと?!」とカレンは唖然とした。
よく見ると女装したロイだ。
「うそ!」
普段の声とも、先程の電話口の声とも違う、伸びやかな女性の声だった。
「『チャーリー』じゃなくて?」
「だから『ローズマリー』ですよ。この格好の時は」
ロイは「このマヌケが」とピシャリと視線をやる。声も地声に戻っている。
「ご、ごめんなさい」
カレンは萎縮した。
「い、今からロイくんの家に行くんだよね?」
「いいえ」
「え? どうして?」
「「転校初日。貧血で倒れた僕と医務室でバッタリ出会って急接近。」という設定でしょう?」
「あ……」
カレンは顔を赤らめた。
「何のために協力関係を結んだのかを思い出してください。そしてそのために今からある試験をします。僕の家にはこれに合格してから来てください。その時には正式にお迎えに上がります」
「試験って……?」
ローズマリー、もといロイはニ、三度瞬きした。
「百人の名前と住所を聞いてきてください。そしてそれを僕に報告してください。メモ用紙とペンは差し上げます。じゃあ、僕は別の任務があるので、これで」
ロイはつらつらと述べ終えると、メモ用紙とペンをカレンに押し付け、そそくさとタクシーを捕まえるために手を上げた。
カレンは思わず、ローズマリーの袖を掴む。
「ちょっと待って! 百人?? 百人なんて無理よ」
「ここで終わるんですか?」
そうだ。試験に不合格になったら、今度こそ本当に暗殺されてしまうかもしれない。それに、絵を描いていて良い世界と遠のいてしまう……。
「終わるって。でも……そんなの無理だもん。どうやって百人になんて聞けるのか」
絶望しかけたカレンが子供のように泣き言を言ってもロイは一切聞き入れない。構わずその手を振り解く。
一台のタクシーが、ローズマリーの横に容赦なくついた。
「頑張ってくださいね」
立ち去るタクシーに置き去りにされたカレンは、呆然と立ち尽くした。
巨大な円形の噴水の周りを自動車や馬車がひっきりなしに往来している。噴水と車道の間は円形の歩道になっており、さらには通常の歩道と接続する地下歩道も整備されていて、噴水前まで人々が自由に行き来できるようになっている。
正面には株式証券取引所があり、人の通行量も知名度も申し分ない、首都屈指の観光スポットだ。
人目につかない場所どころか、人目に晒される場所の方がいいとロイは判断したらしい。
カレンは、ハルヒコに「もう大丈夫だから」と声をかけ、一人車を降り、噴水前で待機した。
ハルヒコにロイの姿を見られていないかソワソワしていると、一人の女性が話しかけてきた。
「こんにちは。カレンさん」
「え?」
長い栗色の髪に、上品なエンジ色のドレスを纏っている。カレンの真っ黒な地味なドレスとは、華やかさに天と地ほどの差がある。
「あの……どちら様ですか?」
「ローズマリー」
「え?」
「どういうこと?!」とカレンは唖然とした。
よく見ると女装したロイだ。
「うそ!」
普段の声とも、先程の電話口の声とも違う、伸びやかな女性の声だった。
「『チャーリー』じゃなくて?」
「だから『ローズマリー』ですよ。この格好の時は」
ロイは「このマヌケが」とピシャリと視線をやる。声も地声に戻っている。
「ご、ごめんなさい」
カレンは萎縮した。
「い、今からロイくんの家に行くんだよね?」
「いいえ」
「え? どうして?」
「「転校初日。貧血で倒れた僕と医務室でバッタリ出会って急接近。」という設定でしょう?」
「あ……」
カレンは顔を赤らめた。
「何のために協力関係を結んだのかを思い出してください。そしてそのために今からある試験をします。僕の家にはこれに合格してから来てください。その時には正式にお迎えに上がります」
「試験って……?」
ローズマリー、もといロイはニ、三度瞬きした。
「百人の名前と住所を聞いてきてください。そしてそれを僕に報告してください。メモ用紙とペンは差し上げます。じゃあ、僕は別の任務があるので、これで」
ロイはつらつらと述べ終えると、メモ用紙とペンをカレンに押し付け、そそくさとタクシーを捕まえるために手を上げた。
カレンは思わず、ローズマリーの袖を掴む。
「ちょっと待って! 百人?? 百人なんて無理よ」
「ここで終わるんですか?」
そうだ。試験に不合格になったら、今度こそ本当に暗殺されてしまうかもしれない。それに、絵を描いていて良い世界と遠のいてしまう……。
「終わるって。でも……そんなの無理だもん。どうやって百人になんて聞けるのか」
絶望しかけたカレンが子供のように泣き言を言ってもロイは一切聞き入れない。構わずその手を振り解く。
一台のタクシーが、ローズマリーの横に容赦なくついた。
「頑張ってくださいね」
立ち去るタクシーに置き去りにされたカレンは、呆然と立ち尽くした。
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