難攻不落の黒竜帝 ――Reload――

遊木晶

文字の大きさ
27 / 231

憧憬《Ⅱ》

しおりを挟む

 傭兵不法都市エースダルは、高い城壁に囲まれている。そして、壁を越える程の巨大な塔を中心に都市がある。

 その上、エースダルの中央都市とは別に、一段下の下層都市と呼ばれる中央都市をぐるりと囲む巨大な都市が形成されている。
 それこそが、エースダルが傭兵不法都市と呼ばれる由縁。
 一段上の中央都市には、一般人と都市維持に欠かせない重役や軍人が住んでいる。
 そんな中央とはうって変わって、下層都市には他所から集まった《冒険者》や《荒くれ者》達が日夜騒いでいる。
 これが、傭兵不法都市の由縁。中央都市以外の全てに法は存在しない。
 ただ、傭兵都市としての建前があるから、傭兵が減るのは困る。だから、殺人は禁止されている。
 それ以外の法は、原則下層都市には存在しない。治安が最悪な傭兵都市の絶対王者が大勢の部下を引き連れて、塔から降りてきた。

 「……状況はどうなの?」
 「はッ! 1時間前に連行した違法入国者が暴れたとの報告を受け、国境警備隊のエドワード隊長が交戦していると――」
 「そう、エドワードなら問題ないわ。それよりも、中央への被害が予想されるわ。すぐに避難勧告を出して、それと万が一中央に被害が出るようなら……下層に落として」
 「は!!」

 赤と黒を貴重とした軍服を羽織った少女が、腰の軍刀を抜き身で地面に突き刺す。
 杖のように両手を柄に置いて、僅かな地面の振動を軍刀で感じ取る。
 次第に揺れが増していく。慌てる部下を一喝し、地面を吹き飛ばして出現した2人を視界に入れる。
 本気で衝突する2人を前に、兵士達は畏縮する。そんな部下を見て、呆れる彼女が地面から軍刀を抜く。
 エドワードと黒の2人が火花を散らすの他所に、彼女の軍刀が砂塵諸とも2人を一刀両断する。

 「安心しろ。峰打ちじゃ……何てね」

 吹き飛ばされた砂塵の中から、腹部に深傷を負った黒とエドワードの2人が地面に真っ逆さまに落ちる。
 鞘へ軍刀を締まった彼女が部下に命じて2人を医務室へと運ばせる。
 1人残った彼女は、物珍しそうに2人が飛び出した穴を覗き込む。
 黒く渦巻く魔力から、一体何処の誰の魔力なのかは一目瞭然。不適に笑みが溢れた。

 「そう、流石ね。エドワード」

 その場を足早に後にし、塔のエントランスの職員に地下牢獄の修繕を命じて最上階へと続くエレベーターに乗る。
 手元の手帳の最後のページに記載されている。憧れの騎士団長欄のトップには、黒と未来の名前が記されている。

 「あぁ、橘様。2年前と変わらずの魔力に、エドワードを相手取る手腕……。あぁ、流石です」

 軍服を脱ぎ捨てて、まるで踊るかのように風呂場へと向かう。
 鼻歌交じりに全身を隅々まで洗ってから、新しい軍服へと手早く着替える。
 化粧や髪を結って、完璧な自分を鏡で確認する。

 「――黒ちゃんが、来たのかな。カエラちゃん?」

 《カエラ》と、名を呼ばれると透かさずその場で跪く。
 顔を上げずに、軍帽を床に置いて目の前の男の質問に答える。
 ゆっくりとカエラが目線を上げる。椅子の上に座って、考えにふける男に無礼だと知った上で、カエラは質問をした。
 塔の最上階と言う事もあって、夕焼けが大きな窓から差し込む。
 夕焼けを背にした男は笑みを浮かべる。赤色の髪の毛がトレードマークの男は、鋭い犬歯を隠す事なく笑った。
 そんな彼の笑みを見て、カエラは頬を赤く染める。憧れの相手は、何も1人とは限らない。
 そして、カエラの憧憬の対象は複数人存在する。
 正確には、1つの騎士団の創設に携わった。創設メンバーが、彼女《カエラ・エターニャ》の憧憬対象である。

 それは、カエラの前に立っている彼の事でもあった。


 《黒焔騎士団》所属――副団長補佐――
 階級《大公マイスター》の称号《鮮血ヴラド》を有する。
 黒焔騎士団創設メンバーの1人にして、2年前の大規模作戦にて戦場を駆け抜けて、戦死したとされている――《暁叶あかつき かなめ》――

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

処理中です...