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イシュルワの王《Ⅱ》
しおりを挟む四大陸に、それぞれ騎士が存在する様に『皇帝』も当然存在する。
が、このイシュルワで少し他の国とは異なる点が存在する。それも、イシュルワと言う国に皇帝が倭よりも存在する事が原因の1つであった。
王とは、強き者の事を指す。となれば、皇帝が集えば――《序列》が生まれる。
序列によって、その国での皇帝間の立場は大きく変わる。そして、いつの日かは序列が原因の対立が起こる。
――まさに、今のイシュルワがそうである。
トゥーリから貰った平手打ちで、頬を赤く染めながらタバコの火を早々に握り潰して消す。
男の横へと付いたトゥーリを見て、ウォーロクが気付かれない様に舌打ちする。
ニヤとアディスの2人は、男から思わず目線を反らす。
「2人とも、じいさんの指示で黒竜に手を出したみたいだな。……はぁ、ちょっかいを掛けるにしても、それ相応の実力の兵隊で行ってくれ。頼むから、アイツに中途半端な戦力をぶつけんな――半端な戦いして、負けるとかダセェから」
「フォフォ――。傍観者に成り下がった分際で、口を出すなこの狼藉者め……トゥーリが庇わなければ、お前何ぞ。王の末席から除名じゃ」
杖を力強く握りながら、憤りを抑え込む。
ウォーロクは、この男がこの場で自分に危害を加えないと言う絶対の自信があってのこの言動である。
この場で自分が一番弱いと理解しているウォーロクだからこそ、争いを好まないトゥーリをこの場に必ず呼んでいる。
そして、この男はトゥーリには――勝てない。
「ローグ……ウォーロク様に失礼だぞ」
「トゥーリ、お前もよくこんなエロじじいに従ってるな。俺なら、今ここで殺してるよ」
「――ローグッ!!」
トゥーリが必死になってローグを止める。
トゥーリからすれば、この場に集まる事の無い人物筆頭の《ローグ・スター》と言う男がこの場に居る。
今年一番のイレギュラーと言っても過言はない。
この男は例え国のトップが相手であろうと、何をするか分からない。
そして、2人の間柄はダイナマイトの導火線を前にライタを握っている様なものだ。
指を動かす度に火花が散っている状態。いつ爆発するかなど――分からない。
ちょっとした言動で、国1つ消えるほどの大戦争が勃発する。
国内だけでも、皇帝同士の小競り合いを隠さないと行けないのに、他国にまで知られればそれこそイシュルワと危機に繋がる。
――それだけは、何としても止めなければならない。
トゥーリの額から汗が滲み出る。
万が一にでも、この2人が衝突するような事があれば、トゥーリにしか止めれない。
この一触即発な状況を覆す為に、トゥーリが胸ポケットのホルスターに隠し持っていた拳銃の引き金に指を掛ける。
ローグが最後の1本だったタバコに火を付け、指で弾いてウォーロクへと飛ばす。
タバコの飛来に驚くウォーロクが一歩、後ろへと後退すると――
音もなくウォーロックの真横へと移動していたローグが左足を振り上げていた。
歴戦の老骨であったとしても、この一撃を無傷で避けるのは不可能。
この一撃を以て、イシュルワが崩壊する――
「――もう、バカッ!!」
トゥーリが銃口を向けるよりも先に、ローグ同様に破壊された扉から、会議場へと飛び込む人影がトゥーリの視界の端に見える。
ローグとウォーロックの間に割り込んだその男は、平然とローグの蹴りを受け止めていた。
ただの蹴りだとでも言うのか、片手で受け止めたままローグへ笑顔を向けていた。
「当然、冗談だよな。ローグ?」
「まぁ、本気ならお前もじいさんも吹き飛んでる」
ウォーロクが杖を握りながら、ローグを睨む。それに負けじとローグもウォーロクを睨む。
ウォーロクの眼光よりも、冷酷に殺意を込めた眼光を向ける。それは、トゥーリへのセクハラ行為の代償でもあった。
ウォーロクが髭を触って、ローグの背中を睨み続ける。確実に今の一撃で死んでいた。
男の妨害が無ければ、確実に殺されていた。トゥーリの銃を以てしても、ローグは止まらずに一撃で仕留めていた。
ウォーロクが背筋を凍らせ、恐怖に震えた。目前に迫っていた死を前に恐怖を噛み締める。
「まぁ、お前らが……黒竜と戦うのは勝手だ。が、イシュルワのメンツに泥を塗るな」
ローグが止めに入った男と共にこの場を後にする。両者を見て、どうするか迷った末にトゥーリが頭を下げてローグの後を追っていく。
トゥーリの足音が遠退き、扉の修繕に集められた魔導師達が扉を直すのを待ってから、ウォーロックが怒りを爆発させる。
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