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終わる世界《Ⅳ》
しおりを挟むメリアナの斬撃がトレファの肉体を傷付けるが、直ぐに再生を始める。
それも今までよりも断然速い速度で、治療を行う。もはや、メリアナの火力ではトレファに致命傷は与えれない。
与えるには、同出力の魔法攻撃か物理攻撃を同時に2方向から与えるしか無い。
「ホント、面倒だね。その能力――ッ!!」
振るう聖剣から凄まじい魔力が斬撃と共に放たれるが、その攻撃の中をトレファは平然としている。
「少々、痛いですね……」
「チッ、ゾンビ野郎が……」
再生能力の根幹たる八雲を狙って、その握る手を吹き飛ばしても八雲を介する肉体とトレファの肉体が結び付きを強めている現状。
八雲が自動で再生を行うので、肉片同士が離れた位置からでも再生する為に引っ張りあって、八雲を手放させるのは実質的に不可能となる。
やはり、メリアナは自分の奥の手に賭けるしか無かった。
「何やら、待っていますね?」
「しま――ッ!」
一瞬の油断から、間合いを詰められる。目前に迫る八雲の刃先がメリアナを切り裂く――
メリアナが死を覚悟した次の瞬間、横から割って入った未来の細剣が八雲を弾く。
「メリちゃん!! 大丈夫!?」
「未来姉様!? どうして――」
メリアナを庇うように、未来がトレファと対峙する。
細剣を握る手が、僅かに震えていた。魔力を半分も抑えられている。
それでも、彼女は戦場に立ち続ける。大切な仲間や家族を守る為に、弱い筈の自分を押し殺して彼女はいつも笑顔で1人背負って戦う。
だから、メリアナは未来の為に――強くなる事を決心した。
――もう、守られるだけの弱い自分が……キライだったから。
細剣を手に、未来はトレファの猛攻を防ぐ。
一瞬の油断が命取りとなるこの場で、トレファは未来を徐々に追い込む感覚に酔いしれる。
「黒竜帝に守られていた。お姫様であるお前が、この私に勝てる訳がない!! 無様に足掻いて、足掻いて――地獄を見ろッ!!」
「確かに、私は守られてきた……でも、何も出来ないお姫様何かじゃ――ないッ!!」
真横から迫る八雲を体を捻って、半歩後ろに退いて避ける。紙一重で躱わしていた。
だが、それだけではない。完全に、狙っていた。その事実に驚くトレファは未来の攻撃を避けるのが遅れる。
油断――。元より、未来の手の内を侮っていた。
他の騎士ですら到底知り得ないある秘密。それは、剣術や体術などの肉体を使った技術では、未来は黒を遥に凌ぐ。
何せ、黒に1度体術のみの勝負で勝っているのだから――
肩から脇腹へと斜めに細剣の刃先が深く、その肉体を切り裂く。
血が吹き出す。切り裂かれた箇所から血液を滴らせながら、トレファは未来を睨む。
空気を蹴って、両翼の打撃と細剣、手足を用いた格闘術を巧みに組み合わせた独自の格闘術によって、トレファと未来の形勢は逆転する。
しかし、未来は一切の油断を抱かない。この優勢な状況で、どれだけ押し切れるかが戦いの勝敗左右する。
その事だけに集中し、攻撃の手を緩めない。決して、この男に気付かれないようにする為にも。
未来の猛攻は止まらない。魔力が枯れ始め、呼吸が荒くなる。
その隙きをトレファは見抜き、完全に防御へと徹する。未来もその防御を崩そうと、全神経を攻撃へと回す。
「はッァァァァァァァ―――ッ!!!!」
両翼が上下、細剣が正面、3方向からの攻撃で防御が崩れる。
そのまま押し切る未来だが、トレファの手が未来の首を掴む。
そこで魔力が途切れ、ボロボロと両翼が朽ち始める。
汚い笑みを浮かべ、未来の四肢を舐め回す様に見るトレファの獣のような眼に、未来が恐怖を抱く。
トレファの手が未来の胸へと迫る。胸へと手を入れ、未来の内部に宿る黒竜の魔力を奪う為に――
が、未来を掴む腕と未来の胸へと伸びる手の2つが切り落ちる。
汚い悲鳴を上げるトレファの顔をその者は、力任せに蹴り飛ばす。
瞬時に両腕を再生させ、八雲を構えるトレファの視界に光が降り注ぐ。
眩い閃光の後に、軽鎧を身に纏った女性の騎士が一閃。
凄まじい魔力の攻撃で、鮮血を吐き散らすトレファの体に両方向から聖剣の斬撃が迫る。
「――な!?」
反応出来ず。トレファの体を2方向か聖剣攻撃にその体がズタズタにされる。
その攻撃の正体が、メリアナの魔力攻撃というのは直ぐに分かった。
だが、視界に映った軽鎧の女性が誰なのか全く検討が付かなかった。
しかし、肉体の再生を終えたトレファの前に、その答えはあった。
「天地、在れ。――《アストレイア》」
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