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師団長の役割《Ⅰ》
しおりを挟むアッシュに手を引かれ、異形の波を抜ける。
とは言え、油断はできない。ここは戦場であって、ピクニックに来ている訳では無い。
が、ミィーファには関係無い。ポケットから取り出した端末を鼻歌混じりに叩いて、黒へと繋げる。
隣のアッシュが状況を見てくれ――と、小さくボヤく。が、ミィーファはアッシュの気など知りはしない。
端末の向う側から聞こえる。僅かな黒の問い掛けに、目付きを変えたアッシュとミィーファが答える。
「第十二師団師団長、ミィーファ・ヴァーミリアン。所定の位置に到着致しました。……現時刻を以てして、十二師団長の戦闘行為の一切を禁じます。その後、十二師団長による超高密度防壁、障壁魔法による倭、倭周辺の安全確保を開始します……黒様のご武運をお祈り致します……」
ミィーファが黒との通話を切ってから、アッシュに目配せる。
アッシュもその目配せの意味を理解したおり、ミィーファをその場に残して何処かへと消える。
再び端末を叩いたミィーファが、各師団長へと一斉通知を送る。
通知を受けた師団長達が、それぞれ笑みを浮かべる。
倭の避難民、倭に集う負傷者、倭を守る騎士のそれぞれ集まる地点――12箇所に師団長が配置する。
その周辺に各師団の団員が守りを固め、目の前の異形の行く手を阻む。
そして、ミィーファの合図が空高く登る。
その合図を受け、十二師団長が《詠唱》《手印》《方陣》による魔法の形成に移る。
そして、空高く聳える十二の光柱がそれぞれの柱を光で繋ぐ。
光の柱同士を繋ぐ強力な魔力が、内側と外側を完全に遮断する。まるで、内部の物に触れる事を許さないかの如く。
倭を包むその巨大な結界を前に、トレファは苦虫をかみ砕いたかのような表情を浮かべる。
その訳は、至ってシンプル――突破が困難であるからだ。
《十二陣形》――と、称されるその結界は12個の起点を繋ぎ、高密度な魔力で形成された結界をその場に作る。
この1つの結界を創り上げるのに、最低でも同等な魔力を有する者が12人は必要不可欠。
取得何度は低いが、それ以外の全てが高度な技術を要する。形成、維持、復元――
どの要素も1人の力量でどうにかなる物ではない。12人全員の魔力が一定で無ければ、この魔法は途端に崩れる。
その不安定さがあるからこそ、完成してしまえば――難攻不落の城塞と化す。
「スゴイ、なんて高度な技術だよ……」
「ううん、高度な技術だけじゃない……全員の魔力が一定だわ。普通の騎士団じゃ、ここまで連携出来ないわ」
「いや、それよりも結界で守るだけじゃ。異形は増え続ける一方だろ!? 何部隊かに分けて、少しずつ――」
「――その心配はありません」
結界の形成によって、危機は脱したが一時しのぎにしかならない。
だからこそ、ここを起点に反撃に出ようとする倭の騎士達に対して、ミィーファは落ち着く様に進言する。
「この結界は、皆さんを守る為にあります」
「そんな事は承知だ。だが、このまま倭の地が蹂躙されてちゃ意味がないッ!?」
「おい、落ち着け……」
「落ち着ける訳ないだろ!! 結界に守られてるとは言え、異形の脅威は残ってる。問題の解決にはなってないだぞ!!」
「あのー……」
「だからこそ、落ち着けと言ってるんです!!」
「冷静に対処して、時間を無駄にすればするだけ……結界維持が困難になる。誰の目でも明らかだ!」
「いえ、あの……えっと……」
「魔力が失われた私達じゃ、出てもマトになるだけでしょ!!」
「じゃあ、どうすんだよ!!」
このまま反撃に出る者達、冷静に場面を見定める者達、双方の意見が割れて対立する。
そして、問題は黒焔騎士団のメンバーが異形を殲滅しなかった事にあると言うおかしな方向へと向く。
そこで、ミィーファへと詰め寄る騎士の面々に天童や南が集まる。
「おい、何か勘違いしてねーか?」
「うん、私達黒焔騎士団は……戦えないよ」
南の言葉に騎士は笑う。今さっきまで、異形を蹴散らしこの場まで辿り着いた者達が異形と戦えない訳がない。
異形だけならば、結界にここまでの硬度は必要無い。数人の師団長を残して、残りの師団長で異形と戦う。
その提案ですら、彼らは無理だと言って払い除ける。
納得の行かない騎士達が、戦わない理由は何だと声を荒げる。
そこで、天童はようやく状況が読み取れた。
「おい、共子……。コイツら、ただの訓練兵上がりの世間知らずだ」
「あぁー……あぁ、なるほど、そういう事ね。私達の戦い方を知らないんだ」
「説明したくとも、皆さんは聞く耳を持ってくれませんでしたので……」
説明不足を謝罪するミィーファに対して、天童と南はミィーファに謝罪する必要は無いと言う。
倭の騎士達は、彼らの戦い方を知らない。それ故に、戦わない彼らの行動は《侮辱》や《仲間を見捨てる》行為に似ていた。
しかし、彼ら黒焔が戦わない理由は直ぐに分かる事となる。
「久しぶりだけど、スゴいな……この距離でも、ビリビリ感じるぞ。あの、高濃度魔力領域――」
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