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第一話 超能力
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「超能力とか使ってみたいよな」
部長がいつもの様に急にそんな事を言い放つ。
僕は忙しなく動かしていた指を携帯ゲーム機から離して、彼女に視線を移した。
「何ですか部長、急に」
僕は部長が持っているSFものの漫画を一瞥して、彼女に分からない程度の溜め息を溢こぼす。
「全く、直ぐ影響されるんですから」
「何だよ。何か文句あるか」
じと、とした目を向けてくる部長は威厳ある態度をしているつもりなのだろう。腕を組んで偉そうに足を組む。
ふむ……ニーソと太腿のムニっとした感じが僕の心を擽る。
が、余りジロジロ見ると勘付かれる恐れがあるので、誤魔化すように、ある提案をすることにした。
「いいですか部長。僕が今から超能力を使って見せましょう」
「マジか⁉︎ お前、超能力者だったのか!」
「ええ、まあ」
相変わらずノリの良い人だ。
けど、本気で信じているみたいな曇りない目を向けて来るのは、一体何故だろう。子供なのかな?
「それじゃあ……」
ポケットに入れていた財布から百円玉を取り出して、それをテーブルの上に置く。
部長は何が始まるのかと、ワクワクした子犬みたいに僕を注視していた。
「はい、それではこの百円玉を右手に持ちます」
「ふむふむ」
「そして、左手には何もない状態で、両手とも閉じますね。はい。百円玉は今、右手に有ります」
「当たり前だな」
「けど、僕が軽く手を振ると……」
ゆらゆら両手を揺らして見せる。
部長は変わらず僕の挙動を見ているが、じっと目を離さないあたり、言われた事を守る犬の様で可愛らしい。
下手な手品なら直ぐに見抜いてやるぞと、そんな気概が彼女の目から感じられる。
「はい。百円玉は今左手に飛びました」
「嘘だ。あり得ない!」
あ、いけね。うっかり本当に移動させてしまった。
もどしもどし……よし、戻った。
「そうですね。それなら本当に移っていたら、超能力って信じます?」
「いいだろう。それは不可能だからな。私は信じるぞ」
この人、簡単に詐欺とか引っかかりそうだな。こんなマジックあり触れてるのに。
「それじゃ、開きます」
僕はゆっくりと、上向きにし両拳を開いていく。
すると、そこからーー変わらず左手に入っていた百円玉が姿を見せた。
「って、何も変わってないじゃないか!」
私の期待を返せと言わんばかりに、立ち上がって憤りを露わにする部長。
僕は再び溜め息を吐き、子供を諭すように話す。
「いいですか部長。僕が何故こんな事をしたのか、これにはちゃんとした理由があります。分かりますか?」
「理由? 何だそれは」
まるで、サンタクロースの存在を信じる子供の夢を壊す様な気持ちで、部長に目を合わせてこう告げた。
「つまり僕はこう言いたかった――超能力なんてある訳ないでしょう、と」
「お前、私をおちょくってんのか⁉︎」
そして、彼女の肘打ちが僕の鳩尾に吸い込まれ、僕の視界はブラックアウトしたのだった。
部長がいつもの様に急にそんな事を言い放つ。
僕は忙しなく動かしていた指を携帯ゲーム機から離して、彼女に視線を移した。
「何ですか部長、急に」
僕は部長が持っているSFものの漫画を一瞥して、彼女に分からない程度の溜め息を溢こぼす。
「全く、直ぐ影響されるんですから」
「何だよ。何か文句あるか」
じと、とした目を向けてくる部長は威厳ある態度をしているつもりなのだろう。腕を組んで偉そうに足を組む。
ふむ……ニーソと太腿のムニっとした感じが僕の心を擽る。
が、余りジロジロ見ると勘付かれる恐れがあるので、誤魔化すように、ある提案をすることにした。
「いいですか部長。僕が今から超能力を使って見せましょう」
「マジか⁉︎ お前、超能力者だったのか!」
「ええ、まあ」
相変わらずノリの良い人だ。
けど、本気で信じているみたいな曇りない目を向けて来るのは、一体何故だろう。子供なのかな?
「それじゃあ……」
ポケットに入れていた財布から百円玉を取り出して、それをテーブルの上に置く。
部長は何が始まるのかと、ワクワクした子犬みたいに僕を注視していた。
「はい、それではこの百円玉を右手に持ちます」
「ふむふむ」
「そして、左手には何もない状態で、両手とも閉じますね。はい。百円玉は今、右手に有ります」
「当たり前だな」
「けど、僕が軽く手を振ると……」
ゆらゆら両手を揺らして見せる。
部長は変わらず僕の挙動を見ているが、じっと目を離さないあたり、言われた事を守る犬の様で可愛らしい。
下手な手品なら直ぐに見抜いてやるぞと、そんな気概が彼女の目から感じられる。
「はい。百円玉は今左手に飛びました」
「嘘だ。あり得ない!」
あ、いけね。うっかり本当に移動させてしまった。
もどしもどし……よし、戻った。
「そうですね。それなら本当に移っていたら、超能力って信じます?」
「いいだろう。それは不可能だからな。私は信じるぞ」
この人、簡単に詐欺とか引っかかりそうだな。こんなマジックあり触れてるのに。
「それじゃ、開きます」
僕はゆっくりと、上向きにし両拳を開いていく。
すると、そこからーー変わらず左手に入っていた百円玉が姿を見せた。
「って、何も変わってないじゃないか!」
私の期待を返せと言わんばかりに、立ち上がって憤りを露わにする部長。
僕は再び溜め息を吐き、子供を諭すように話す。
「いいですか部長。僕が何故こんな事をしたのか、これにはちゃんとした理由があります。分かりますか?」
「理由? 何だそれは」
まるで、サンタクロースの存在を信じる子供の夢を壊す様な気持ちで、部長に目を合わせてこう告げた。
「つまり僕はこう言いたかった――超能力なんてある訳ないでしょう、と」
「お前、私をおちょくってんのか⁉︎」
そして、彼女の肘打ちが僕の鳩尾に吸い込まれ、僕の視界はブラックアウトしたのだった。
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