stray Crow

閑話―境木家の肝試しー

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「ダメじゃん」


　日曜日、ファミレスの賑わいに包まれる店内。侑の向かいの席に座る青年はそう吐き捨てた。侑は黙って手元のグラスの水を揺らす。
　青年は長身で、何なら座席からはみ出しそうな位に脚が長い。長めの前髪の下には切れ長の目、整った鼻と薄い唇。一言で彼を表してしまえば超イケメンである。
　そんな彼の名前は壬生睦月《みぶ むつき》、24歳。侑の中学生時代からの親友で、とある由縁から『境木家の事情を全て知る者』である。

「ちさちゃんと社くんに肝心な事は何一つ言ってないよね境木ちゃん。なにビビってんの」

　『境木ちゃん』は壬生だけが使う侑の愛称である。責める壬生に、しかし未だ侑は口を開かない。にわかに漂う剣呑な空気を破ったのは、壬生の隣に座る小柄な少女だった。

「まあまあ、そない睦月もツンケンせんと～。偉いやん侑は！ちゃんと村にも弟ら連れてって」

　底抜けに明るい関西弁の彼女は色黒のツインテール、八重歯が可愛いスラリとした美少女である。侑も端正な顔立ちをしているため、周りの客の視線を一挙に集めていた。
　彼女の名は柊百舌《ひいらぎ もず》。歳は18。彼女もまた侑たちの事情を知っている者である。