その女、女狐につき。2

高殿アカリ

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1.始まりの合図

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「一花は? 黒閻がどうして加賀美満吉の事件に関して何の動きも見せなかったのか、分かったの?」



 里奈の問いかけに一花の表情は少し曇った。



「えぇ。……加賀美満吉が通り魔に刺されて死んだとき、彼は既に黒閻のメンバーではなかったみたいなの。動きたくても動けなかった。フウガはそんな風に言っていたわ。とても悔しそうにね」



 私が一花を好きなところはこういうところ。

 彼女は報告だけをきちんとしてくれるの。



 そのフウガの言葉を信じるか信じないか、その判断はあくまでも私に委ねる。

 そういう姿勢が大好きよ。



 私の問題は私の問題。

 彼女の問題は彼女の問題。



 私たちは互いに互いを利用しているだけ。

 そこにほんのり香る友情や信頼はあるにせよ、それらを混同させて問題をなし崩しにしたり傷を舐め合ったりはしない。



 だってそれは弱者のやることだから。

 そして、私たちは弱者になりたい訳ではないもの。



 だからこそ私たちは互いに互いを支え合える。

 例えこの先誰かに何があったとしても、私たちは客観的に相手を見ることが出来るから。



 そしてそういう関係でないと救えないことがあることも知っている。

 多分、本能的にね。



 ちょっぴりそのことが寂しい気もするけど。

 まぁ、それを私が望んでいるのだから仕方がないわよね。



 だから私は自分の判断を下す為の行動に出る。

 ゆっくりと一花の言葉を咀嚼するの。

 さっきのプチトマトみたいに。



「どうして彼は黒閻を辞めたの? ……それとも、辞めさせられた?」
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