その女、女狐につき。2

高殿アカリ

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3.夢乃の女狐劇場

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 コンクリートジャングルの繁華街にも夏はちゃんと来るみたい。



 あーあ、それにしても日本の夏はじめじめしてて最悪ね。



 そんな最悪な気分をさらに最悪にしているのが私の前にいる子たち。



 私がさっきから何も言わないことが気に入らないのか、凄く怖い顔で私の胸倉を掴んでくる。



「おい、話聞いてんのか!」

「ちょっと可愛いからって調子乗ってるんじゃねぇぞ!」



 正直あんまり怖くない。

 でも、まぁそろそろ彼が来る頃だと思うから、私は瞳に涙を溜めた。



 それから俯いて、ひたすら怖がっているふりをする。



 すると、ほら。

 決まってヒーローは現れるでしょ?



「白豹の領地で何勝手なことしてんだ?」



 低いドスの効いた声が聞こえてきて、私を取り囲んでいた女の子たちは舌打ちをすると、慌ててその場を立ち去った。



 ふふふ、全ては計画通り。

 あの子たちには後でちゃんと褒美をあげなくちゃね。



 だって私の為に動いてくれたんだから。



 私は彼女たちが立ち去ったのを確認した後、安心して気が抜けたふりをして、その場に座り込んだ。



 助けてくれた彼が私と目を合わそうとしゃがみこむ。

 私は小刻みに震え、ちょっぴり涙も流しながら、



「あの、ありがとうございました」



「俺は和樹。この辺をしめてる白豹ってチームのリーダーだ。……あんたは?」



 彼の自己紹介に私は危うく口角が上がりそうになった。

 もちろん、ちゃんと抑え込んだけど。



 でも、本当にびっくり。

 こんなすぐに獲物が自ら引っかかってくれるなんて。



「……あ、私は夢乃って言います……」
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