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第2章 女の園に毒花が咲いた。
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それは次の日の朝早くに起きた出来事だった。
どたどたと幾つもの足音が近付いてきたかと思うと、李麗の宮に数人の女たちが乗り込んできたのだった。
宮に入るや否や、女たちは妙齢の女を中心に扇のような陣形を取った。
その陣形は均等かつ左右対称で、完璧なものだった。
まるで今から戦いが始まる、とでも宣言するかのように。
真ん中の女の口が開かれた。
1人だけ年齢が上であることと、陣形の中央に座していることから、彼女がこの女たちのリーダーのようであった。
「李麗、娼婦を買ったとは一体どういうことなのです?」
その顔は嫌悪の表情に塗れ、お世辞にも美しいとは言えなかった。
「……母上……」
困ったように肩を竦めた李麗の言葉で、彼女が李家の正妻であることを知った。
ということは、後ろに控えている者たちは彼女の侍女かしら?
それにしては随分と小綺麗な身なりをしているけれど……。
私がそのような推測をしている合間にも、血の繋がっていない親子の会話は続いていた。
「私に誤魔化しは通用しないわよ。どうして娼婦なんてものを……」
「なんてもの、とは随分な言いようですね」
「あら、悪いかしら? 職業や身分が人を価値づける大きな要因であることは、李家に拾われた貴方が一番よく知っているのではなくて?」
「あぁ、それもそうですね。何しろ、私には娼婦を慕う父上の血が流れていますからね」
「なっ!!」
屈辱に震える正妻と、勝ち誇ったように笑う李麗の2人を私はただ黙って見ていた。
ちゃちな皮肉の応酬に全く興味を持てなかったからだ。
どこか余所でやって欲しいわ。
心の中でそうぼやいたツケが回ってきたのか。
ただ黙って見ていただけの私に突然、正妻の矛先が向いたのだ。
彼女はむっつりと黙り込む私を見て、口元に扇を当てた。
「ま、なんて憎たらしい子なの。娼婦など、愛想しか取り柄のないくせに、この子は可愛げの一つもないじゃない」
そんなことを言われたところで、私の心は大して傷付きはしない。
貴族様の令嬢であれば話は別なのかもしれないが、娼婦という世界に生きる者にこの手の嫌味は通じないのだ。
どたどたと幾つもの足音が近付いてきたかと思うと、李麗の宮に数人の女たちが乗り込んできたのだった。
宮に入るや否や、女たちは妙齢の女を中心に扇のような陣形を取った。
その陣形は均等かつ左右対称で、完璧なものだった。
まるで今から戦いが始まる、とでも宣言するかのように。
真ん中の女の口が開かれた。
1人だけ年齢が上であることと、陣形の中央に座していることから、彼女がこの女たちのリーダーのようであった。
「李麗、娼婦を買ったとは一体どういうことなのです?」
その顔は嫌悪の表情に塗れ、お世辞にも美しいとは言えなかった。
「……母上……」
困ったように肩を竦めた李麗の言葉で、彼女が李家の正妻であることを知った。
ということは、後ろに控えている者たちは彼女の侍女かしら?
それにしては随分と小綺麗な身なりをしているけれど……。
私がそのような推測をしている合間にも、血の繋がっていない親子の会話は続いていた。
「私に誤魔化しは通用しないわよ。どうして娼婦なんてものを……」
「なんてもの、とは随分な言いようですね」
「あら、悪いかしら? 職業や身分が人を価値づける大きな要因であることは、李家に拾われた貴方が一番よく知っているのではなくて?」
「あぁ、それもそうですね。何しろ、私には娼婦を慕う父上の血が流れていますからね」
「なっ!!」
屈辱に震える正妻と、勝ち誇ったように笑う李麗の2人を私はただ黙って見ていた。
ちゃちな皮肉の応酬に全く興味を持てなかったからだ。
どこか余所でやって欲しいわ。
心の中でそうぼやいたツケが回ってきたのか。
ただ黙って見ていただけの私に突然、正妻の矛先が向いたのだ。
彼女はむっつりと黙り込む私を見て、口元に扇を当てた。
「ま、なんて憎たらしい子なの。娼婦など、愛想しか取り柄のないくせに、この子は可愛げの一つもないじゃない」
そんなことを言われたところで、私の心は大して傷付きはしない。
貴族様の令嬢であれば話は別なのかもしれないが、娼婦という世界に生きる者にこの手の嫌味は通じないのだ。
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