転生悪役令嬢と不良くん。［第一部＊完］

第一章 再会は突然に

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無事に十歳の日を迎えた。



これまでのパトリシア・ロイド年鑑において、特筆すべき事はあまりない。

だが、強いて言うなれば時折ノエル殿下主催の狩猟に駆り出される事が増えたことだろうか。



ノエルが主催するということは、もちろん側近のレジナルドも参加するわけで。

さらには私が誘われるということでサイモンも何故か一緒に参加することになり。



つまり、顔面偏差値が青天井の三人に囲まれながら、狩猟に赴くのである。

過去イベでも起こっているんだろうか。



しかし、私はあくまでも悪役令嬢だ。

美味しい立場であるということは、それだけ後に不利益を被るリスクが高いことの裏返しでもあった。



実際、イケメンたちのご尊顔を拝める代償に、この前茶会で私が影で「寵姫」だと呼ばれていることを知り、戦慄した。



パトリシアってそんな裏設定あったの？

だとしたら『こいまほ』オタクとして失格なんだけど。



というダブルパンチで、かなり凹んだ。

数ヶ月、本気で自室に引きこもっていた。



原因不明の体調不良では、流石に狩猟に駆り出されることも少なくなったわけだが。

「寵姫」というダサいあだ名が令嬢たちの記憶から薄れてくれたのかは甚だ未知数であった。

狩猟にも行けないということは、お茶会にも顔を出せないということでもあったのだから。



パトリシア・ロイドに病弱設定が追加されれば御の字。



だが、いつまでも引きこもりハッピーライフを送るわけにもいかない理由があった。

残念なことにね。



何故ならパトリシアが十歳の年には、大きな事件が起きるのだから。



『こいまほ』唯一の流血事件だ。

過去にも未来にもこの日だけは、私は『こいまほ』の世界を変えねばならない。



このことはもう随分と前から決めていた。



それは、最後のメイン攻略対象者であるマシュー・パウリーの物語だ。

のちに最年少天才魔法使いとなる彼が招く悲劇的な過去の話だ。