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Port Town
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しおりを挟む「そんなのはありえない」
俺がクレオの意見を否定したことが余程予想外だったのだろう。
彼は目を見開いて、柄にもなく声を荒げた。
クレオの必死な様子に俺は胸が痛む。
本当に俺との生活を、何の変哲もないただの日常を大切に想ってくれていることが分かるから。
「どうしてそう言い切れるのですか! ミレイという女がそんなに大事なのですか‼ ……私との、生活よりも……?」
最後の弱々しい言葉尻に俺は絆されかけた。
そっとクレオの手に手を重ね、俺は言い淀む。
「……彼女は、……っ」
俺の躊躇いに気がついたのだろう。
クレオは他者の思惑を感じ取ってしまう奴だから。
それでも、ミレイがあの子に似ていることをクレオにだけは知られてはならないのだ。
これは俺の我儘だ。
そんなことは分かっている。
クレオを悲しませてしまうことも。
それでも、絶対に知られてはならない。
……だって知ってしまったら、お前は自分を責めるだろう?
自分があの子を殺したと、思ってしまうだろう?
そうなれば俺のことを止めなくなるだろう。
そして、止めない代わりに俺の元から去ってしまうだろう。
クレオに自責の念で傷付いて欲しくないのと同じくらい、彼が自分の隣からいなくなってしまうことが怖いんだ。
だから、ミレイを助けることは俺だけの問題としていたいし、実際に俺のエゴでしかない。
そんな気持ちでクレオを見つめていたからだろう。
いつの間にか俺の瞳には切なさと熱情が潜んでしまっていたらしい。
それを見たクレオが一体何を勘違いしたのか。
彼は俺の手の中から自分の手を引き抜くと、酷く冷たい声で言った。
「もう、いいです」
クレオはそのまま俺の方を振り返ることなく、二階にある自室に向かった。
普段は同じ寝台で寝ているため、ほとんど使われていないはずのクレオの自室に。
ばたん! と扉の大きく閉まる音が俺の耳にも届いた。
どうしようもなくクレオを悲しませてしまう自分の不甲斐なさに俺は舌打ちをする。
「お土産ちゃんと持って帰るからな‼」
せめてもの大声で俺は言った。
それは俺たちの合言葉だった。
行ってきますの言葉でもあり、無事に帰ってくるという約束でもあった。
それがクレオにどう届いているかは分からなかった。
こうして、俺はメリッサのもとへと向かった。
帰ったらきちんと説明しなくては、と考えながら。
扉の向こうでクレオが泣きそうな顔をして座り込んでいることには気づかなかった。
気づいていたら出かけなかった。
全力で抱き締めていたはずだった。
……そうすればあんなことにもならなかった。
俺はクレオを守れていたはずだった。
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