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Forever, Lovers.

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約束通り、新緑の季節に俺たちは結婚式を挙げた。

柳色に揺れる小麦畑の真ん中で、俺たちは永遠の愛を誓い合った。

純白のタキシードに身を包んだクレオが驚くほど美しくて、俺の心は愛しさに鳴いた。

真っ白なブーケが青空に飛んでいき、パウルの腕の中に吸い込まれる。

「なぁんであんたなのよ!」

メリッサの言葉に俺たちは笑い合う。
爽やかな初夏の風が祝うように踊っていた。

その数日後に、俺たちはミレイとメリッサに家を明け渡していた。
新婚旅行の間、家を管理してもらう為だ。

「好きに使ってくれていいから」
「ありがとう」

ミレイが微笑む。

「ドライフラワーなんてあるの? クレオさんってば、おっしゃれねぇ」

部屋の奥から感心したメリッサの声が聞こえた。
今は亡き妹によく似たミレイと微笑み合う。

「じゃあ、行ってくる」
「うん。楽しんできてね、新婚旅行」

メリッサとミレイに見送られながら、俺はクレオの待つバイクへと駆け寄った。

「メリッサがドライフラワーを褒めていたぞ」
「ふぅん。美的感覚だけは理解し合えそうです」

クレオの耳がほのかに色づく。
素直じゃないんだよなぁ。
俺の可愛い奥さんは。

「早く運転してください」

急かすクレオに軽い口づけを落とし、俺は久しぶりに相棒のハンドルを握った。
ぶるんとエンジンを蒸して、アクセルを踏み込む。

クレオが幼い頃、城の図書館で見たという真っ白な家々の並ぶ小さな島を目指して、小麦畑を越えていく。

「サントリーニ島までどのくらいかかるだろうなぁ!」

「分かりません。数ヶ月はかかるでしょう。今でも動く船があればいいのですが」

「まぁゆっくり行こう。俺たちは死ぬまで一緒にいられるんだからな」

「……っ、明日死ななきゃいいですね」

「そんなつれないこと言うなよぉ」

正面を向いていた俺は、クレオが涙目になっていたことに気付いていなかった。

背中越しに回されたクレオの腕にぎゅっと力が入る。
俺は微笑んで、目の前に飛び出てきたアンデッドを吹き飛ばした。
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