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第6章
6-1
しおりを挟む喪失とは、何の前触れもなく、唐突にそして思いもよらぬときにやってくるものらしい。
雪は幸福の真っ只中から突然、地獄に突き落とされた。
光を失った瞳は暗闇に呑まれ、彼は途方もない黒の世界を彷徨わなくてはならない。
たったの、ひとりきりで。
雪が大吾の異変に気が付いたのは、奇しくも彼が謀反を起こすその日だった。
もしもその日より前に、つまりは誠との約束の日よりも前に、雪が何かを感じ取っていたのなら。
二人の未来はまた違っていたのかもしれない。
だがそれは、神のみぞ知るところであろう。
その日、雪はどうしようもない虚無感に駆られていた。
大吾を失う気がしてならなかったのだ。
もう何日も前から大吾に対して酷い扱いをしていた罪悪感が、一気に彼を襲っていた。
こんなことばかりをしていては、僕たちに未来は訪れないだろう。
享楽と執着は悦びこそ与えてくれるが、決して何一つ生み出しはしないのだ。
それは、大吾と雪の関係にも言えることだった。
彼らは肉欲の悦びを覚えたが、二人の間にそれ以上の繋がりはもたらされなかった。
否、歪んだ愛の形しかもたらされはしなかった。
雪は大吾の背中を掻き抱きながら、彼の表情を見て驚く。
その表情は、今まで見たどんな顔よりも真に悲しげだったのだ。
そのことを知った瞬間、雪の背中を得体の知れない何かが走り抜ける。
悪寒に震えながら、雪は大吾の瞳を見つめた。
雪は何が大吾をそんなに悲しませているのかを知りたくなった。
大吾は一度ゆっくりと瞬きをした後、慟哭に染まった静かな眼差しで雪を待った。
彼が理解するそのときを。
雪はその力強くも底の知れない大吾の瞳に息を呑んだ。
彼の瞳には光が宿っていたのだ。
かつて自分が彼から奪ったはずの光が。
雪は焦った。
思わず指に力が入り、大吾の皮膚にまた傷が一つ。
苦痛に大吾の顔が歪むも、雪はもう大吾を見てはいなかった。
「……どうして……大吾はずっと僕だけしか……いや、谷崎もだが、あれは……」
ぶつぶつと言いながら、雪は大吾が自我を取り戻すに至るような原因を探り始めるも、一向に突き止められない。
大吾はそんな困惑している雪をそっと押しのけた。
悲しみだけに塗られていた彼の瞳が憐憫の光を灯す。
それに気圧されたのか、軽くつつかれた雪はそれだけでもペタンと床に座り込んでしまった。
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