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しおりを挟むシャーッと室内のカーテンが勢いよく開けられ、シュウは瞼を閉じた。
「朝ですよ、いい加減に起きてください」
「……ぁーーーーん? ……すぅ」
「って! 何を寝ているのですか!」
霧雨の声にシュウは眉間にしわを寄せた。
「あー? うっせぇ。やめろ。てゆーか、霧雨が俺の布団を奪うんだよ。そんな権利はねぇ、誰にもな」
「……あ、あ、貴方はほんっとうにっ‼︎ じゃあ、いいんですね? 私と朝倉さんの二人だけで出掛けても。あれだけ欲しいと言っていたマキシマム・ザ・ヒーローの食器も、寝間着も、スリッパも、何も買えなくなりますが、それで良いということですね」
憧れの人の名前を出され、シュウは言葉を詰まらせた。卑怯だ、と心の中で霧雨を一先ずなじっておく。
「……っ、んなことは言ってねぇ、ょ……」
「え? 何も聞こえませんねぇ。どうやらシュウは本当に寝ているようです。残念です。今日行く予定だったショッピングモールではヒーローショーがあるというのに。あぁ、誠に残念ですねぇ。あの! マキシマム・ザ・ヒーローが、わざわざこの街にやって来てくれるというの、に⁉︎」
だが、不機嫌なのも一瞬で今度は霧雨の言葉を聞くや否や、シュウはベッドから飛び起きた。包まっていた毛布も既に床に落ちたあとである。
「おまっ! それをはやく言えよ。ったくよぉ。霧雨は相変わらず使えない男だ」
「なっ! それは、貴方が……‼︎」
再び言い争いになりかけたその時、階下から千鶴の声が聞こえてきた。
「シュウー? 霧雨ー? 準備出来たのかしら~?」
千鶴が優しい声色であるときほど、内に秘めている怒りの炎が燃え盛っていることをシュウも霧雨もよくよく理解していた。そのため、彼らは顔を見合わせた。
――――どうやら、やばそうだ、の意思疎通を図ったのだ。
「「‼︎」」
「ほら、早く行きますよ。朝倉さんが時間に厳しいのは貴方が一番知っているでしょう?」
「ったく、待てよ。服だけ着替えるから、先に降りてくれ」
シュウの口から飛び出してきた「着替え」という単語に霧雨の足が止まる。そして、未知の生物でも見つけたかのような表情で聞き返した。
「え? 貴方が、服を? 選ぶんですか? いつもの隊服はどうしたのです。失くしたのですか?」
「んなわけねぇだろ! ったく、霧雨こそ何を言ってんだか。これからマキシマムさんに逢いに行くんだぞ? こんな着の身着のままで対面出来るわけなかろう! あーあー、これだからデリカシーのない奴は」
「貴方にだけは言われたくありませんけど?」
そして、またまた口数が多くなりそうな二人の様子を敏感に感じ取った千鶴が階下から声をあげる。
「あーもー! 二人とも仲良しなのは分かったから! いい加減降りてこないと明日からの筋トレメニュー増やすよ?? いいのね????」
「げ!」
「っ!」
ドタバタと慌てた足音を頭上に聞きながら、玄関先で二人を待つ千鶴はふっと笑みを浮かべたのだった。どうやら彼らは九死に一生を得たようである。
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