その女、女狐につき。

高殿アカリ

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序章

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「ねぇ」

 明るいブラウンの髪が春の風に揺れる。



 くりりとした瞳を楽しげに細めて、彼女は目の前にいる退屈そうな少女に声をかけた。



 声をかけられた方の少女は、どこか冷めたような目をしている。



「……何か、用ですか」



 高すぎず、低すぎもしない声が少女二人だけの空間に響く。



 これが、すべての始まりだった。

 すべてを覆す、物語の。
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