その女、女狐につき。

高殿アカリ

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2.生徒会へようこそ

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「生徒会長、お言葉ですが先ほどから生徒会室内の様子を見るに特に人員不足ということもないようですし、私自身まだまだ学校に慣れておりません。それに、成績だけ良くとも私自身に生徒会役員となれる力はないように思います」



 えぇ、もちろん、全力回避です。どんな爆弾でもかかってきなさい。



 全て華麗に避けて差し上げますわ。おーっほっほっほっほ。



 市川が王子様なら、その国の聞き分けない古株貴族のように、私は心の中で扇子を口にあてていた。



 しかし反対に一花は生徒会役員に魅力を感じているようだった。



「そうですか、残念です。……天野さんはどうですか?」



 それに目を付けた市川は、私から狙いを外し、一花の様子を伺う。



「ちょっと、考えさせてください」



 これぞ本物の小動物。一花はか弱い少女そのままに、市川に猶予を求めた。



 流石、天然物は格が違うわ。恐ろしい子ね。



 市川もそんな一花には強く出られないようで、



「わかりました。では一週間ほどして、まだ興味があるようでしたら生徒会室に来てください。僕たちはいつでも歓迎しますので。もちろん、原田さんも」



 にこ、からのキラキラ攻撃。



 王子様スマイルを最後に、私たちは生徒会室を出た。



 取って付けたかのような私への気遣いは、必要なかったわね。



 廊下を歩きながら、最後のセリフを思い返している私に、一花が話しかけてきた。



「私が生徒会役員っておかしいかなぁ」



「そんなことないと思うよ。……それに、楽しそうだと思ったんでしょ?」



 私の言葉に一花は微笑んで、



「うん、そうなんだよね。最近、監視もきつくて良い息抜きにでもなるかなぁみたいな」



「でも、ちゃんと黒閻には伝えておくんでしょう?」



「……そのつもりなんだけど、ね」



「まぁねー」



 一花が生徒会役員になりたいって言ったときの彼らの反応を想像して、私たちは二人で溜息を吐いた。



 何にせよ、一花が生徒会役員になりたいと思ってくれたのは行幸だ。



 もし一花が生徒会役員になったら、必然的に倉庫には私しかいない時間が増える。



 彼らに取り入ることもできるってことよ。



 あくどい笑みを浮かべる愛美に、一花は気付かない。
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