その女、女狐につき。

高殿アカリ

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2.生徒会へようこそ

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「駄目だ」



 フウガは許さない。

 寵愛姫が自分以外の世界を知ることを。



 どこまでも依存してほしいと思っている。

 そして、それを強制する力も持っている。



 けれど、一花は普通の女の子とは違うのよ。



 私は渇いた楽しさをそこに見出す。

 猟奇的なまでに、狂ったみたいな、享楽。



 さぁ、一花。

 彼らを、私を、楽しませて頂戴な。



「嫌よ! 私はフウガくん達の言いなりになんてならない‼」



 一花はそう叫ぶと、倉庫の外に飛び出していった。



 昼は曇り空だったが、今は土砂降りの雨が降っていた。



 ざぁざぁと降り注ぐ雨の中、一花の背中が小さくなってゆく。



 誰も、追いかけなかった。



 フウガは「勝手にしろ」と言い、二階に戻っていく。



 そしてフウガが追いかけない手前、ケイもタイシも追いかけることは出来ないのだ。



 悔やむような顔をして、二人もまたフウガの後に続いていく。



 ここでは、フウガの言うことが絶対。

 そういう世界なのだ。



 でも、私だけはこの世界で、倉庫の中という小さな世界で、唯一自由な存在なのだ。



 だから……。



 背を向けた三人を見つめた後、私もまた雨の中を飛び出した。



 寵愛姫なんでしょうよ。

 しっかり守んなさいよね。



 結局、彼らは女の子のことなんてどうでもいいんだわ。



 寵愛姫が聞いて呆れる。



 もう、勝手にしてもらおう。

 私は全力で一花の生徒会入りをフォローさせてもらいます。



 私が何をしたところで、彼らにはちっとも響かないのでしょうけれど。



 同じ女の子として一花に同情したのが一割。

 一花に恩を売っておくのも悪くないかなという気持ちが三割。

 彼らに取り入る為にも一花を蔑ろに出来ないのが六割。



 ほらね、私は打算的なのよ。



 だからちっとも、心配なんかしてないわ。
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