その女、女狐につき。

高殿アカリ

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6.不穏

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「おいおい、マジかよ。黒閻はそのこと何も気にしてねぇのか? それともいつでも奪い返せるとか余裕ぶっこいてんのか?」



「それがなぁ、どうやら黒閻のお偉いさんたちは自分とこのシマが荒らされていることにちっとも気が付いていないらしいんだってよ。恋に現を抜かしているとか、いないとか」



「あー、そう言えば寵愛姫とその親友がいたっけ」



「そうそう、どうやら三人で二人を振り向かせようと躍起になっているらしい」



「ハハ、こりゃ黒閻もおしまいだな」



「まぁ、あの三人がトップになった時点でおしまいだろうとは思っていたけどな。二回も同じ間違いするかねぇ、普通」



「あぁ、そう言えばあいつらは去年も同じように恋に溺れていたっけ」



「まぁ今回は死体が出なければ良いけどねぇ」



「あーあれだろ、当時の黒閻の寵愛姫候補を白豹の幹部候補の奴が好きになって、そいつが振られて、腹いせにってやつ」



「まぁ、数か月前にその幹部候補はリーダーになり、でも結局革命起こされちまったからなぁ」



「因果応報ってか」



 がはははは、と乾いた笑い声だけを残して男たちは去っていった。



 私はにんまりと笑って里奈にもたれかかった。



「ねぇ、りぃくん。そろそろ帰ろう?」



 私の甘えたに里奈は苦笑いを漏らす。

 そんなに臭い演技かしら?



 私たちは夜の帳が下りてゆく街を背にして、里奈のバイクが停めてある場所に向かった。



 なぁんだ、ちゃんと動いてくれていたのね。

 やるじゃん白豹。



 私は楽しくなってきた。

 そろそろ退屈していたのよね。



 だからさ、こうでなくっちゃ。
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