その女、女狐につき。

高殿アカリ

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6.不穏

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 下っ端くんたちは私だけでなく、先代たちにも相談していたってことね。



 うん、正直予想外だった。



 でも確かに、私に相談するよりは話が早いし、合理的だものね。



 むしろ、その可能性に思い当たることが出来なかったことが悔しいわ。



 ちょっと考えれば分かることだったはずなのにね。



 私の思考が読み取れたのだろう、ユマさんは楽しそうに喉を震わして笑うと、



「あんた、愛美って言ったっけね。随分な小賢しい女の子なんだね」



 そう言った。

 それはもう、愉快そうに。



 彼女のその反応に、私は好感を持った。



 性悪なことが別に悪いことじゃないんだよ、と言われているみたいで。



 そんな人もいるさ、と妙に達観した姿勢が新鮮だった。



 ユマさんはきっとどこまでも男前な人なんだろう。



 だから、私は精一杯の悪役の顔をして、彼女に笑いかけた。



 これが私なりの誠実さだと、彼女なら気付いてくれるだろうから。



 そんな私の様子にユマさんは、呆れたように目をぐるりと回すと、



「ま、何でも良いけど。もうあたしには関係ない話だし。フウガたちが騙されようがどうなろうがね」



 ほうらね、この中で一番の男前だわ。



 ただ、とユマさんは続けた。



「あいつには手ぇ出したら承知しないからな」



 きゃっ、怖ぁい。

 私は両手をひらひらさせて降参のポーズを取った。



 あいつってセイさんのことでしょ。

 確かに好みだけどね。



 靡かない感じとか、一筋縄ではいかない感じとか。

 骨があるじゃない?



 ただ、ねぇ?

 良い男だけど、ユマさんにべた惚れなのはさっき傍から見てて分かったし。



 誰かにべた惚れな男にそこまで興味ないのよねぇ。
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