その女、女狐につき。

高殿アカリ

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6.不穏

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 確かに私は性悪かもしれないけれど、略奪愛信者ってわけじゃないしね。



 そんな不毛なことをする暇も気力もないのよねぇ。



 略奪愛って疲れるだけじゃん?



 好きじゃない男にするほど私は落ちぶれてはいないし。

 反対にそこまで好きになる男もまたいないっていうか。



 ただの無駄な労力だとしか思えないのよねぇ。

 ご苦労なこった。



 とか思いながら、ユマさんのことを見上げると……。

 彼女はとても満足そうな顔をして私を見ていた。



 どうやら私の考えは伝わっていたようで。



 何にせよ、彼女は私の敵にはならないみたい。



 私の好みはねぇ。

 セイさんから彼女へのべた惚れを取った感じだから。



 私に簡単に靡かなくて。



 皆を統率するようなカリスマ性を持っていて。



 一筋縄ではいかなくて。



 そしてイケメンで。



 ……あれ、何だか市川ってドンピシャじゃない?



 どうしてか、私は最近仕事以外で関わることのない我が生徒会長様を思い出した。



 いやいやいや、何故!?



 まぁ、確かに要素だけを見ていったら、私の好みど真ん中だけどさ。



 うぅーん。



 いや、ないな。

 うん、ないわ。



 私は慌てて市川の残像を頭から振り払った。

 その様子を楽しそうに見ていたユマさんに若干の殺意を抱きながら。




 しかし、このときの私は何にも知らなかったのだ。



 二階で繰り広げられていた会話によって、明日から生徒会に入り浸る日が来るなんて。
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