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Story 01 side.ANKO
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それから暫く経った秋の終わりの頃、十七歳になった私は婚約者と結納を交わそうとしていた。
とても良く晴れた日のことだ。
お母様から漏れたのだろう。
チャコと関わりを持ったことがお父様にバレた私は、結婚を早められることになったのだ。
カポーン、と小気味良い獅子脅しの音が縁側から聞こえる。
「本日はお日柄もよく……」
顔を下げた婚約者の後頭部に、私は写真を数枚落とした。
写真にはラブホテルへと向かうチャコと婚約者の姿が綺麗に映り、その場にいた全員の視界に入る。
「は?」
固まる婚約者に向かって私は不敵に笑った。
「は、ですって? 困惑しているのは私の方です。これは一体どういうことか説明してもらってもよろしいかしら?」
着物の袖を口元に当て、嫌らしく上がった口角を隠す。
写真を手にしたお父様が苦虫を噛み潰した顔をして、私を睨み付ける。
だけど、もう。ちっとも怖くないんだよ。
残念だけど、私は愚かな人間だから。
鉄格子から指を出せると気が付いてしまったら、あとはもう外からかけられた鍵を探せるの。
「婚約を、破棄させていただきます」
私の言葉に項垂れる婚約者と、私を落ち着かせようと声をかけてくる滑稽な大人たちと、壊れたように笑う母親。
ここはまるでパレードだ。
がやがやと騒々しくて、厄介で、誰もが自分の保身について頭を悩ませている。
さようなら、かつての世界。
何一つ未練なく、私は私を引き止めようとするもの全てに背中を向けた。
とても良く晴れた日のことだ。
お母様から漏れたのだろう。
チャコと関わりを持ったことがお父様にバレた私は、結婚を早められることになったのだ。
カポーン、と小気味良い獅子脅しの音が縁側から聞こえる。
「本日はお日柄もよく……」
顔を下げた婚約者の後頭部に、私は写真を数枚落とした。
写真にはラブホテルへと向かうチャコと婚約者の姿が綺麗に映り、その場にいた全員の視界に入る。
「は?」
固まる婚約者に向かって私は不敵に笑った。
「は、ですって? 困惑しているのは私の方です。これは一体どういうことか説明してもらってもよろしいかしら?」
着物の袖を口元に当て、嫌らしく上がった口角を隠す。
写真を手にしたお父様が苦虫を噛み潰した顔をして、私を睨み付ける。
だけど、もう。ちっとも怖くないんだよ。
残念だけど、私は愚かな人間だから。
鉄格子から指を出せると気が付いてしまったら、あとはもう外からかけられた鍵を探せるの。
「婚約を、破棄させていただきます」
私の言葉に項垂れる婚約者と、私を落ち着かせようと声をかけてくる滑稽な大人たちと、壊れたように笑う母親。
ここはまるでパレードだ。
がやがやと騒々しくて、厄介で、誰もが自分の保身について頭を悩ませている。
さようなら、かつての世界。
何一つ未練なく、私は私を引き止めようとするもの全てに背中を向けた。
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