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第一章 旅立ち
第六話 騎乗型+剣士=ライダー
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アイリスの街の西。
そこは荒れ果てて、赤茶けており、草の根一本すら生えることを許さない不毛の大地となっている。
そんな大地を真っ二つに横切る存在がいる。
荒野には凶暴な魔物が数多く存在する。それらと比べると荒野を横切る存在はあまりにも弱小だ。
では何故かの弱小たちはそんな危険な場所を横切るのだろう。
答えは至極単純、季節ごとに変わる大好きなエサを求めてだ。
おいしい物を食べたい、その時にしか食べれない限定の物ならなおのことだろう、その欲求は留まることを知らず、こうして命懸けの大移動を繰り返している。
もちろん、ただ無謀にも季節ごとの移動を繰り返しているわけではなかった。
彼らにはそれを可能とする巧みな逃げ足があった。
それを徹底的に磨いて毎日走って走って走って、そうやって鍛えられた脚は美味い物を食う度にまた速くなる。
しかし、そうなって来るともちろん、全てが全て付いてこれるわけではない。付いてこれない個体がいるのもまた事実なのだ。
ある意味でいなくなってはいけない食物連鎖の最下層に位置するからこそ荒野の数少ない恵みとなっている。
そうして荒れ果てた荒野の凶暴な魔物の胃袋に消えていく。
そうして強くなっていくのがクリンクアという渡り鳥型魔物の生態だ。
今ぼくの目の前では荒野を横切る黄色い雪崩があたりところかまわず蹂躙していく様が繰り広げられている。
「凄すぎない・・・?」
「ん。幻想的かも?」
あ、雪崩を横っ腹から食い破ってる奴がいる。多分あれが荒野の凶暴な魔物類だろう。滅多にないごちそうに群がっている様がみえる。
「それじゃ、行きますか!」
「ん!作戦決行。」
今回の作戦は群れからはぐれた一匹を狙って、瀕死状態、もしくは話をできる段階までもっていき、会話による魔物の眷属化だ。
眷属化に成功すると、ステータスカードに表示されるので後は、マジックアイテム[魔物のネックレス]を首にかけるだけの単純且つ、高難度のミッションだ。
何より会話できる状態までもっていくのが難しい、魔物は人と滅多に会話をしたがらないから。
実際、あらゆる言葉を喋れるスキル持ちのぼくも、意味のある言葉を魔物に話かけられたことがないのでしゃべったことがない。ぼくの能力は自分に話かけられ、それでいて意味のある言葉をしゃべってくれないと会話できない。
この能力持ち自体が超希少なうえ、サークルモンスターを持っている人はほとんどいないため、まず魔物を仲間にしてる人は人生に一回見てただけでも運の良い方らしい。
ただ、持っているからと誰でもどんな魔物でもできるわけでもなく、それなりの知能と相手のメリットを提示できないと眷属化はできない。
今回メリットを提示できそうな数少ない 相手(魔物)なのでこれを逃すわけにもいかない。
周囲をくまなく探す。
クリンクアの群れの横っ腹を食い破っている魔物はゴリラの様な太い腕を背中から四本も生やした、大きなライオンだった。
クリンクアをその太い腕でわしづかみにして更にその大きな口でも直接貪っている。
とても強そう、ていうか討伐依頼あったような気がする。
もしそうならこいつとは戦わないようにしなければ・・・。
そんななか、一匹の群れの個体の中でも特に小さな個体が叫びながら、ライオン風モンスターに飛び掛かって攻撃している。
ライオン風モンスターの腕には、握りしめられぐったりとしたクリンクアの成体がいた。
ああ、親が捕まったんだ。それを必死に助けようとしているんだ。
多分もう捕まった親は内臓や骨を握り潰されて既に死んでいるだろう。
子供もそれをわかっていてなお、繰り返し突撃しているんだ、親を食われない為に。
理屈は、それ程関係ないんだろう。ただ自分がそうしたいから。死んだものを助けるなんて、死者を守る為に生きている者が死ぬことほど意味のないことはない。
ただ、ぼくはそこに得も知れぬものを感じている。
いや、わかっているんだ。あの子はぼくらが助けないとまず間違いなく死ぬだろう。
ライオン風モンスターは食事に夢中で今は気づいていないが、いずれ手に持つ食料がなくなれば新しい食料を求めるだろう。そうなれば真っ先にその子が選ばれるだろうことも。
ぼくはフィアを見る。
どんな顔をしていたかはわからない。
ただ フィアは そんなぼくを見つめ返して優しく微笑み返して・・・。
「ん。私は貴方にどこまでも付いていく。まだ死ねないけど、貴方が死ぬのも困るから。
だからサイのしたいようにすればいいよ?」
そんなことを、花の様な笑顔で言われた。
ぼくはその一言に後押しされて、命をかけた闘いに身を乗り出す。
神山 彩恣
肉体ー筋力 92
ー耐久性 60
精神力 40
ー攻撃魔法 なし
ー補助魔法 なし
ー精神魔法 なし
名声 7
モラル値 +28
称号 《兎狩りの狂人》
職業〔 片手剣士 〕
フィア
肉体ー筋力 17
ー耐久性 40
精神力 100
ー攻撃魔法 「アイスランス」
ー補助魔法 「フロストバリア」
ー精神魔法 なし
名声 13
モラル値 +27
称号 《選定者の共》
職業〔魔術師〕
さあ、戦闘開始だ!!
***
ぼくは駆け出す。今回相手は大きい。ぼくはあの腕で殴られれば一たまりもない。
なら殴りにくい位置に行けばいい、
そしてそれは相手の懐だ。ほとんど密着しながら攻撃していくことで、ぼくとの体格差による攻撃力差を埋めていく。
ただそんなに簡単にことは運ばないだろう。そこはフィアに頼ることにする。
超近距離と遠距離で今回は攻める。
作戦通り、ぼくはライオン風モンスターの背後に回る。背中を取れているのはコイツが食事に夢中だからだ。
レベルアップした筋力の数値に物を言わせ、ぼくは跳躍。
ライオン風モンスターの背中に深くザックりと剣が突き刺さる。
「ガァアァァァァァアアアア!」
ライオン風モンスターの雄叫びが上がる。
その咆哮によって、クリンクアの子はスクミあがってしまった。
慌ててぼくは剣を引き抜き、地面に飛び立つ。
さっきまでぼくがいた背中の位置に太い腕がまわされる。
危ない、あそこにいたら握り潰されていた。
着地した。すぐに前に駆け出そうとするが、さっきの雄叫びのせいだろう!足がすくみ上がってしまったぼくはバランスを崩し、転倒してしまった。
やばい!やばいやばいやばい!
すぐに起き上がろうとするが前には、頭に血を上らせて充血した目でこちらを嘲笑うかのように見下ろし、腕を振り上げるライオン風モンスターの姿が・・・。
ああ、もうダメか・・・。
腕が振り下ろされる。その膂力と鋭い爪をもってぼくは引き裂かれると思い目を閉じた。
が、それは来なかった。
ライオン風モンスターは再び苦痛の声を上げて暴れまわっている。
見ると、腕の一本の手首から先がなかった。
「今のうちに立て直して!」
そうか、アイスランスで援護してくれたんだ。
ぼくは慌てて立ち上がりフィアにサムズアップを送っておく。
ナイス援護。すげー焦った。
「来るよ!」
どうやら痛みから立ち直ったらしいライオン風モンスターはカンカンに怒っていた。
今まで絶対的強者の地位にいたために痛みに慣れていないのだろう。
今が勝機とみてまた距離を詰めようとする。
ライオンが太い腕を二本使ってぼくを引き裂こうとする。
それを軽く上へ跳ぶことで回避、その太い腕へ降り立つ。
と同時に腕を伝って顔目掛けて剣を振る。が、鬣を切り裂くに終わる。
上部の腕で迎撃され、地面に向かって飛び込み受け身することで緊急回避。
そしてフィアの援護で撹乱、ぼくが接近戦でじわじわと追い詰める。
しかしぼくには決定打があるが使えない。
絶対当てれるチャンス以外では使えないぼくの攻撃では圧倒的火力不足だ。
そう考え、走りまわって敵の目をぼくに逸らしながら行動する。
そしていつのまにかライオンの背後に回ったフィアが魔法を使う。
「アイスランス!」
今度はしっかりと見えた。フィアの杖から先にドリル型の氷の塊が形成され、魔法を使うと同時にライオン目掛けて飛んでいく。
命中したのは残った上部の腕の付け根だ。
ライオンの腕がチギレそして背中に氷の塊が突き刺さる。
これで上部の腕は全て破壊した。
後は下部二本と強靭な牙と顎による噛み付きだけを警戒すればいい。
そこでライオンはどちらが危険かを悟ったらしい。
クルッと急に方向転換してフィア目掛けて走り出した!
マズイ!フィアじゃあの攻撃は避けられない!
ぼくは全力でライオン目掛けて走り出す。
フィアは魔法を使う準備をしている。多分フロストバリアで一回だけでも攻撃を凌ぎぼくの助けが来る時間を稼ぐつもりだろう。
間に合え!もっと速く!もっと!
ライオンが腕を振り下ろす。フィアは一度目のバリアを使う。
すぐさま二度目が来る。今度こそ防ぎきれない!ぼくは叫ぶ!
「フィア!」
ライオンの腕が彼女を襲う。あれを喰らえば彼女なんて一たまりもないだろう。
今まさに太い腕が、鋭い爪が彼女を切り裂こうとした。
瞬間・・・。
黄色い影が飛び出す。フィアをさらって間一髪で回避した。クリンクアの子は今まさに自分の親の敵討ちをしているぼくたちに加勢したのだ。勇気を振り絞って。
助かった!そう安慮してしていたのも束の間。
ライオンは今度はぼくの方を振り返って、大きく息を吸い込む。
次の瞬間、口いっぱいに溜め込んだ火炎がぼく目掛けて吐き出される。
嘘!火炎の息とか使えるのか!?
炎がぼく視界いっぱいに広がって迫ってくる。
やばい!避けれな・・・。
「フロストバリア!」
そう思った時、フィアのまたもやファインプレーによって事なきを得る。
ぼくの周りを冷たい風が覆う。
まるでぼくを避けているかのように炎は左右に割れていく。
ライオンは油断していたのだろう。なんせ相手は人間で、しかもいくつもの自分の絶対的強者の地位を守ってきた自慢のブレスを、普通は耐えきれるわけがないのだから。
それに加えブレスを吐くのは、それなりに疲労する。
普通ではない相手、等と血が昇って疲れた頭では考えが過ぎる余地もないだろう。
その一瞬の隙が命取りになった。
サイは前に進む。いや、全力で駆ける。
その一瞬の勝利を掴み取る為に。
構える。剣を逆手に持ち替えて、腰の後ろに回して力を込める。
三秒ほどたっただろうか。
徐々に炎が晴れていく。ライオンの愉悦に浸りきった表情が見えてきた。
ぼくは全力で叫びながら一気に剣を真一文字に振りきった。
「《〈戦技〉》スラッシュ!」
片手剣第二戦技はライオン風モンスターの体を切り裂いた。
勝った。勝ってしまった・・・。
レベルアップの音がする。
そりゃあこんなに強い敵を倒したんだ。レベルアップもするだろう、してもらわなきゃ困る。
「ん。お疲れ様」
いつのまにか、駆け寄ってきたフィアに肩を叩かれねぎらわれた。
ぼくは感極まってそのままフィアに抱き着く。
「ひゃ!」
フィアは驚いた声をあげる。
それでもぼくは離さない。彼女の援護がなければぼくは死んでいた。だから、お礼を言わなければならないし、何よりぼくがそうしたかった。
ギュッとお互い無言で抱き合う。
さっきまでの戦闘の喧騒が嘘のように今は静かだ。
柔らかな双丘がぼくの胸で押しつぶされ、形をかえる。
頬が熱くてとろけそうだ。
互いに息が粗くなる。
フィアもそっと首に手を回してきた。
ぼくたちは見つめ合う。互いに気持ちを確かめ合うように、じっくりと。
そっと顔が近くなる。
そのまま互いの唇同士が重なり・・・。
合うことはなく、ぼくは横っ腹をおもいっきり突かれた。
その姿を確認する。さっきのクリンクアの子供だ。
苦悶の声をあげるぼく。
そうだった、目的をすっかり忘れてた。
ぼくはこの子にいわなきゃいけないことがあるんだった。
「ねぇ、ぼくと一緒に旅をしないか?」
こうしてぼくはクリンクアを眷属にすることに成功する。
名前はクリアにした。
そして新しい称号と職業を獲得した。
ただ、一つとっても気になるとこがある。
言えないから心の中で叫んでおこう。
もうちょっと空気読めよぉ~~
そこは荒れ果てて、赤茶けており、草の根一本すら生えることを許さない不毛の大地となっている。
そんな大地を真っ二つに横切る存在がいる。
荒野には凶暴な魔物が数多く存在する。それらと比べると荒野を横切る存在はあまりにも弱小だ。
では何故かの弱小たちはそんな危険な場所を横切るのだろう。
答えは至極単純、季節ごとに変わる大好きなエサを求めてだ。
おいしい物を食べたい、その時にしか食べれない限定の物ならなおのことだろう、その欲求は留まることを知らず、こうして命懸けの大移動を繰り返している。
もちろん、ただ無謀にも季節ごとの移動を繰り返しているわけではなかった。
彼らにはそれを可能とする巧みな逃げ足があった。
それを徹底的に磨いて毎日走って走って走って、そうやって鍛えられた脚は美味い物を食う度にまた速くなる。
しかし、そうなって来るともちろん、全てが全て付いてこれるわけではない。付いてこれない個体がいるのもまた事実なのだ。
ある意味でいなくなってはいけない食物連鎖の最下層に位置するからこそ荒野の数少ない恵みとなっている。
そうして荒れ果てた荒野の凶暴な魔物の胃袋に消えていく。
そうして強くなっていくのがクリンクアという渡り鳥型魔物の生態だ。
今ぼくの目の前では荒野を横切る黄色い雪崩があたりところかまわず蹂躙していく様が繰り広げられている。
「凄すぎない・・・?」
「ん。幻想的かも?」
あ、雪崩を横っ腹から食い破ってる奴がいる。多分あれが荒野の凶暴な魔物類だろう。滅多にないごちそうに群がっている様がみえる。
「それじゃ、行きますか!」
「ん!作戦決行。」
今回の作戦は群れからはぐれた一匹を狙って、瀕死状態、もしくは話をできる段階までもっていき、会話による魔物の眷属化だ。
眷属化に成功すると、ステータスカードに表示されるので後は、マジックアイテム[魔物のネックレス]を首にかけるだけの単純且つ、高難度のミッションだ。
何より会話できる状態までもっていくのが難しい、魔物は人と滅多に会話をしたがらないから。
実際、あらゆる言葉を喋れるスキル持ちのぼくも、意味のある言葉を魔物に話かけられたことがないのでしゃべったことがない。ぼくの能力は自分に話かけられ、それでいて意味のある言葉をしゃべってくれないと会話できない。
この能力持ち自体が超希少なうえ、サークルモンスターを持っている人はほとんどいないため、まず魔物を仲間にしてる人は人生に一回見てただけでも運の良い方らしい。
ただ、持っているからと誰でもどんな魔物でもできるわけでもなく、それなりの知能と相手のメリットを提示できないと眷属化はできない。
今回メリットを提示できそうな数少ない 相手(魔物)なのでこれを逃すわけにもいかない。
周囲をくまなく探す。
クリンクアの群れの横っ腹を食い破っている魔物はゴリラの様な太い腕を背中から四本も生やした、大きなライオンだった。
クリンクアをその太い腕でわしづかみにして更にその大きな口でも直接貪っている。
とても強そう、ていうか討伐依頼あったような気がする。
もしそうならこいつとは戦わないようにしなければ・・・。
そんななか、一匹の群れの個体の中でも特に小さな個体が叫びながら、ライオン風モンスターに飛び掛かって攻撃している。
ライオン風モンスターの腕には、握りしめられぐったりとしたクリンクアの成体がいた。
ああ、親が捕まったんだ。それを必死に助けようとしているんだ。
多分もう捕まった親は内臓や骨を握り潰されて既に死んでいるだろう。
子供もそれをわかっていてなお、繰り返し突撃しているんだ、親を食われない為に。
理屈は、それ程関係ないんだろう。ただ自分がそうしたいから。死んだものを助けるなんて、死者を守る為に生きている者が死ぬことほど意味のないことはない。
ただ、ぼくはそこに得も知れぬものを感じている。
いや、わかっているんだ。あの子はぼくらが助けないとまず間違いなく死ぬだろう。
ライオン風モンスターは食事に夢中で今は気づいていないが、いずれ手に持つ食料がなくなれば新しい食料を求めるだろう。そうなれば真っ先にその子が選ばれるだろうことも。
ぼくはフィアを見る。
どんな顔をしていたかはわからない。
ただ フィアは そんなぼくを見つめ返して優しく微笑み返して・・・。
「ん。私は貴方にどこまでも付いていく。まだ死ねないけど、貴方が死ぬのも困るから。
だからサイのしたいようにすればいいよ?」
そんなことを、花の様な笑顔で言われた。
ぼくはその一言に後押しされて、命をかけた闘いに身を乗り出す。
神山 彩恣
肉体ー筋力 92
ー耐久性 60
精神力 40
ー攻撃魔法 なし
ー補助魔法 なし
ー精神魔法 なし
名声 7
モラル値 +28
称号 《兎狩りの狂人》
職業〔 片手剣士 〕
フィア
肉体ー筋力 17
ー耐久性 40
精神力 100
ー攻撃魔法 「アイスランス」
ー補助魔法 「フロストバリア」
ー精神魔法 なし
名声 13
モラル値 +27
称号 《選定者の共》
職業〔魔術師〕
さあ、戦闘開始だ!!
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ぼくは駆け出す。今回相手は大きい。ぼくはあの腕で殴られれば一たまりもない。
なら殴りにくい位置に行けばいい、
そしてそれは相手の懐だ。ほとんど密着しながら攻撃していくことで、ぼくとの体格差による攻撃力差を埋めていく。
ただそんなに簡単にことは運ばないだろう。そこはフィアに頼ることにする。
超近距離と遠距離で今回は攻める。
作戦通り、ぼくはライオン風モンスターの背後に回る。背中を取れているのはコイツが食事に夢中だからだ。
レベルアップした筋力の数値に物を言わせ、ぼくは跳躍。
ライオン風モンスターの背中に深くザックりと剣が突き刺さる。
「ガァアァァァァァアアアア!」
ライオン風モンスターの雄叫びが上がる。
その咆哮によって、クリンクアの子はスクミあがってしまった。
慌ててぼくは剣を引き抜き、地面に飛び立つ。
さっきまでぼくがいた背中の位置に太い腕がまわされる。
危ない、あそこにいたら握り潰されていた。
着地した。すぐに前に駆け出そうとするが、さっきの雄叫びのせいだろう!足がすくみ上がってしまったぼくはバランスを崩し、転倒してしまった。
やばい!やばいやばいやばい!
すぐに起き上がろうとするが前には、頭に血を上らせて充血した目でこちらを嘲笑うかのように見下ろし、腕を振り上げるライオン風モンスターの姿が・・・。
ああ、もうダメか・・・。
腕が振り下ろされる。その膂力と鋭い爪をもってぼくは引き裂かれると思い目を閉じた。
が、それは来なかった。
ライオン風モンスターは再び苦痛の声を上げて暴れまわっている。
見ると、腕の一本の手首から先がなかった。
「今のうちに立て直して!」
そうか、アイスランスで援護してくれたんだ。
ぼくは慌てて立ち上がりフィアにサムズアップを送っておく。
ナイス援護。すげー焦った。
「来るよ!」
どうやら痛みから立ち直ったらしいライオン風モンスターはカンカンに怒っていた。
今まで絶対的強者の地位にいたために痛みに慣れていないのだろう。
今が勝機とみてまた距離を詰めようとする。
ライオンが太い腕を二本使ってぼくを引き裂こうとする。
それを軽く上へ跳ぶことで回避、その太い腕へ降り立つ。
と同時に腕を伝って顔目掛けて剣を振る。が、鬣を切り裂くに終わる。
上部の腕で迎撃され、地面に向かって飛び込み受け身することで緊急回避。
そしてフィアの援護で撹乱、ぼくが接近戦でじわじわと追い詰める。
しかしぼくには決定打があるが使えない。
絶対当てれるチャンス以外では使えないぼくの攻撃では圧倒的火力不足だ。
そう考え、走りまわって敵の目をぼくに逸らしながら行動する。
そしていつのまにかライオンの背後に回ったフィアが魔法を使う。
「アイスランス!」
今度はしっかりと見えた。フィアの杖から先にドリル型の氷の塊が形成され、魔法を使うと同時にライオン目掛けて飛んでいく。
命中したのは残った上部の腕の付け根だ。
ライオンの腕がチギレそして背中に氷の塊が突き刺さる。
これで上部の腕は全て破壊した。
後は下部二本と強靭な牙と顎による噛み付きだけを警戒すればいい。
そこでライオンはどちらが危険かを悟ったらしい。
クルッと急に方向転換してフィア目掛けて走り出した!
マズイ!フィアじゃあの攻撃は避けられない!
ぼくは全力でライオン目掛けて走り出す。
フィアは魔法を使う準備をしている。多分フロストバリアで一回だけでも攻撃を凌ぎぼくの助けが来る時間を稼ぐつもりだろう。
間に合え!もっと速く!もっと!
ライオンが腕を振り下ろす。フィアは一度目のバリアを使う。
すぐさま二度目が来る。今度こそ防ぎきれない!ぼくは叫ぶ!
「フィア!」
ライオンの腕が彼女を襲う。あれを喰らえば彼女なんて一たまりもないだろう。
今まさに太い腕が、鋭い爪が彼女を切り裂こうとした。
瞬間・・・。
黄色い影が飛び出す。フィアをさらって間一髪で回避した。クリンクアの子は今まさに自分の親の敵討ちをしているぼくたちに加勢したのだ。勇気を振り絞って。
助かった!そう安慮してしていたのも束の間。
ライオンは今度はぼくの方を振り返って、大きく息を吸い込む。
次の瞬間、口いっぱいに溜め込んだ火炎がぼく目掛けて吐き出される。
嘘!火炎の息とか使えるのか!?
炎がぼく視界いっぱいに広がって迫ってくる。
やばい!避けれな・・・。
「フロストバリア!」
そう思った時、フィアのまたもやファインプレーによって事なきを得る。
ぼくの周りを冷たい風が覆う。
まるでぼくを避けているかのように炎は左右に割れていく。
ライオンは油断していたのだろう。なんせ相手は人間で、しかもいくつもの自分の絶対的強者の地位を守ってきた自慢のブレスを、普通は耐えきれるわけがないのだから。
それに加えブレスを吐くのは、それなりに疲労する。
普通ではない相手、等と血が昇って疲れた頭では考えが過ぎる余地もないだろう。
その一瞬の隙が命取りになった。
サイは前に進む。いや、全力で駆ける。
その一瞬の勝利を掴み取る為に。
構える。剣を逆手に持ち替えて、腰の後ろに回して力を込める。
三秒ほどたっただろうか。
徐々に炎が晴れていく。ライオンの愉悦に浸りきった表情が見えてきた。
ぼくは全力で叫びながら一気に剣を真一文字に振りきった。
「《〈戦技〉》スラッシュ!」
片手剣第二戦技はライオン風モンスターの体を切り裂いた。
勝った。勝ってしまった・・・。
レベルアップの音がする。
そりゃあこんなに強い敵を倒したんだ。レベルアップもするだろう、してもらわなきゃ困る。
「ん。お疲れ様」
いつのまにか、駆け寄ってきたフィアに肩を叩かれねぎらわれた。
ぼくは感極まってそのままフィアに抱き着く。
「ひゃ!」
フィアは驚いた声をあげる。
それでもぼくは離さない。彼女の援護がなければぼくは死んでいた。だから、お礼を言わなければならないし、何よりぼくがそうしたかった。
ギュッとお互い無言で抱き合う。
さっきまでの戦闘の喧騒が嘘のように今は静かだ。
柔らかな双丘がぼくの胸で押しつぶされ、形をかえる。
頬が熱くてとろけそうだ。
互いに息が粗くなる。
フィアもそっと首に手を回してきた。
ぼくたちは見つめ合う。互いに気持ちを確かめ合うように、じっくりと。
そっと顔が近くなる。
そのまま互いの唇同士が重なり・・・。
合うことはなく、ぼくは横っ腹をおもいっきり突かれた。
その姿を確認する。さっきのクリンクアの子供だ。
苦悶の声をあげるぼく。
そうだった、目的をすっかり忘れてた。
ぼくはこの子にいわなきゃいけないことがあるんだった。
「ねぇ、ぼくと一緒に旅をしないか?」
こうしてぼくはクリンクアを眷属にすることに成功する。
名前はクリアにした。
そして新しい称号と職業を獲得した。
ただ、一つとっても気になるとこがある。
言えないから心の中で叫んでおこう。
もうちょっと空気読めよぉ~~
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