婚約破棄から始まるバラ色の異世界生活を謳歌します。

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第59話 【閑話】マリアンヌの悪だくみ①

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 聖教国からギレン神官長のため込んでいた財産を持ちこみ、帝国領へと逃げ込む事に成功したマリアンヌとその父マラーリア子爵は、その巨額な資金を使い、帝国において貴族位を購入する事に成功していた。

「パパ、でも帝国もケチだよね。購入できる爵位は最低の男爵位だけだなんて。男爵程度じゃ、皇帝の息子に近寄る事なんて中々チャンスが無いじゃ無いのさ」
「マリアンヌ、今はまだそう派手に動くべきじゃない。私達には聖教国と、王国の情報と言う大きな切り札があるんだ。必ずこの情報は高く売る事が出来る。チャンスを待つんだ」

「一体いつまで待てばいいのよ? 私の美しさには、旬って言うのがあるんだよ? この大陸の国家間では、貴族令嬢なんて18過ぎたらババアなんだからね? さっさと皇族に嫁がないと、下級貴族の娘じゃ、精々側室としての未来しか無いじゃ無いのよ」
「お前なら例え側室として嫁いでも、正室やお世継ぎを皆殺しにしてでも、自分の子供に後を継がせるだろ?」

「まぁそれは当然の事だけどね。中途半端に側室で嫁いで自由に遊べない暮らしをするくらいなら、子供だけ認知させて好き勝手に出来る方がよっぽどましだわ」


 ◇◆◇◆ 


 それから半年の歳月をかけてマリアンヌが近づいたのは、皇帝の弟が当主を務める公爵家の三男で、国軍の将軍職を務める、ダニエル伯爵であった。

 このダニエルという男は、武に優れた将軍という訳では無いが、暗殺や調略によって、国外との争いを優位に進めるという点では非常に優れた才能を持って居て、マリアンヌが近づくには、格好の相手だった。

「ダニエル様、私が持つ王国の情報を活用すれば、王国も聖教国も、ビスティアだって、併合する事は可能ですわ。そうなった暁には、ダニエル様は帝国の英雄として、皇帝と変わらぬお力を手に入れる事になりますわ」
「ふむ、悪い話では無さそうだな。しかしリスクもでかい。失敗した場合の保険が欲しいな。それと俺がお前を信用するための証になる様な物も必要だ」

「ダニエル様が私を信用するための証ですか? それならば、ダニエル様のお子を私の身体に宿らせて下さいませ。その子に私の未来を託したいと言う願いであれば、信じて頂けるのでわ?」

 それから、ダニエルとマリアンヌは子供が宿る事を確認できるまで、獣の様にまぐわい続ける日々を送った。

 毎日のようにマリアンヌと交わり、あり得ないような自己都合の理論を囁かれ続けたダニエル将軍は、マリアンヌの懐妊が判明する頃には、すっかりと周辺国を蹂躙し帝国による大陸の覇権を確立する考えに固まっていた。


 ◇◆◇◆ 


「マリアンヌ、具体的に何から手を付けろと言うのだ」
「ダニエル様? 今は戦争など兵力で語る時代は終了しました。私はこの目に焼き付けてきました。たった10隻の飛空船に聖教国が負ける瞬間を」

「しかし、飛空船などギルノア王国にしかないでは無いか? それもスパリゾート領以外では、ギルノアの王族に貸与してある船しか存在せぬ筈だ」
「私の昔の男に、ギルノアの第1王子が居ましたわ。馬鹿な男だから私が復縁を持ち掛ければ、喜んで鼻の下を伸ばして出て来る筈よ?」

「ほー、それがうまくいけば運用の仕方次第で、十分に可能性はあるな。マリアンヌはギルノア王国に行って王子と連絡を取る事は可能なのか?」
「わ、私がギルノア王国に行くのは…… ちょっと都合が悪いわ…… フリオニール王子を帝国に招待する事は出来ないかしら?」

「なんだ、戻れないような理由があるのか? お前も色々悪事に加担している様だな?」
「そんな大したことは無いわよ。この国にフリオニールを呼び出せば、私が何とかするから頼むわ」

「解った。何かの式典を催して、第1王子を呼び出せるように、取り計おう」


 ◇◆◇◆ 


「陛下、ゾイド帝国から帝国皇帝の嫡男の婚礼の招待状が届いておりますが、どういたしましょうか?」
「どういたしましょうかとは、どう言う事だ?」

「招待を受けているのが、フリオニール様です。外交の問題を任せるには少し問題があると思いますが……」
「うむ、ミカやフルフトであれば問題は無いであろうが、フリオニールでは問題を起こす可能性が払拭できぬな。フリオニールは体調不良だとでも伝えて、今回はミカが出席するように返答をして置いてくれ」

「御意に」


 ◇◆◇◆ 


 ミカは思った。
 帝国への招待…… 不自然だわ。
 国交がほぼ断絶した国であるし、奴隷制度を積極的に推し進める帝国と、我がギルノア王国が歩み寄る可能性は低い筈。
 兄様を指名してきたことも、何らかの策謀があると考えて間違いなさそうね。

「陛下、今回の参列は、ブリュンヒルドによる近衛師団での警護の下で参列したいと考えます。ブリック元帥の随伴を頼んでもよろしいでしょうか?」
「ふむ、ミカの飛空船で行く事は危険だと考えるか?」

「はい、随員が5名に限定されてしまいますので、式典に参列中の警護を考えると、飛空船に何らかの攻撃を受けた場合に、対処が出来なくなります」
「解った。ブリックと近衛師団の出動を許可しよう」

 婚礼の式典に参加しながら、近づいて来る者達を、冷静に見極めたミカだったが。
 帝国の将軍であるダニエル伯爵が、ブリュンヒルドに関して特別強い関心を示し、内部の閲覧を求めて来た。

「最新の飛空戦艦ブリュンヒルド、素晴らしいですね。是非後学の為に、案内していただけないでしょうか?」

 ブリック元帥に確認を取り、閲覧はダニエル将軍1名だけで、ブリック元帥による案内である事を条件に認めた。
 
 そして、今回の訪問による帝国側の違和感は、ダニエルである事を確認し、帰国後に王国の諜報部から、ダニエル将軍を取り巻く環境の調査をする様に、指示を出させる。

「やはりか、フリオニールを行かせていたら、危険な状況が作られたかも知れぬな」
 宰相パトリオットが指示を出して、潜伏させた王宮直属の諜報機関は、パトリオットの側に、マリアンヌの存在を確認した。

「陛下、フリオニール殿下に帝国の手が伸びぬように、厳重な警戒が必要です」


 ◇◆◇◆ 


「くっそぉぉおおお、あのクソ女、ミカのせいでこっちの予定が狂っちゃったじゃない。ダニエル、ミカの開発している領地が、帝国と国境を面した地域の王国南部にあるわ。そこに調略を仕掛けてミカの飛空船を奪い取ってしまってよ」
「そんな簡単にいくか?」

「飛空船にはパイロットが必要な筈よ。パイロットを手なずければきっと上手くいくわ。女を抱かせて、金をばらまいて懐柔するのよ。待って…… パイロット本人よりも家族の方がいいわ。パイロットの家族全員を手懐けて、断れない状況に陥れる方がいいわ。兄弟や両親を全て調べだして、借金まみれにさせて」
「悪知恵だけは、良く働くな」

「嫌いじゃ無いでしょ? そう言うの」
「ああ」

 ミカの元に魔の手が迫る……
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