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第95話 魔国へ⑩

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 私は晩餐会が終わると、オダ将軍の私室へと呼ばれた。
 結構お酒も飲んじゃったけど、キュアの魔法でアルコールはすっきりとさせたよ?

 オダ将軍にもかけて上げたら「キュアをこういう使い方も出来るのだな」と少しびっくりしていた。

「私の知識の中では、アルコールも毒物の一種なのでは無いかと思って、試してみたらうまくいきましたから」
「中々の知識と、発想だな。しかし何故アスカ女王はこの国の言葉を理解しておるのだ。それに魔法陣に関しても完全に神言を理解しておるようだな」

「それはですね。私は前世の記憶を持ったまま、この世界に生まれてからです。そしてその前世は、将軍たちが稀人と呼ばれている方達と同じ世界です」
「な、なんと。それではアスカ女王が協力してくれるのであれば、この国は、この世界は救われるのか?」

「えーと…… そこが解らないんですけど、何から守ろうとしてるんですか? 話の内容によっては協力はしない事も無いですけど、私はこの国の行う召喚の儀式と言う行為に対して、強い憤りを感じています。年端もゆかない子供達を無理やり攫い、この国に縛り付ける行為を、許せません」
「アスカは、稀人達と境遇の話はしなかったのか?」

「境遇ですか?」
「そうじゃ。アスカの国にもこの国にもあるであろう。親に捨てられたり死に別れた者たちが暮らす施設の事じゃ」

「孤児院は確かにあります」
「稀人として召喚する者の条件は、家族と共に暮らせていない者を、召喚するようになっておる。3000年ほど前に召喚陣を書かれた魔王ノブナガ様がそう言う風に召喚陣をお描きになられたからだ」

「ノブナガ様ってオダ=ノブナガ様って事ですか?」
「そうだ、脈々と受け継がれるオダの血統の初代様だ」

「あの? ノブナガさんはもしかして、転生者だったんではないでしょうか?」
「良く知っておるな。ノブナガ様自身は本能寺と呼ばれる場所で炎に包まれてその生涯を終えられたらしいが、気づいた時にはこのヤーバンの地に赤子として生まれておいで、だったそうだ」

「魔法はその当時から一般的だったのでしょうか?」
「魔法自体は存在しておったが、魔法陣は存在していなかったそうだ。そしてその当時では、教会の洗礼によって魔力が現れる者は10人に一人程だったらしいぞ」

「あ、それは今のガイアス大陸と同じ状況ですね。私は魔臓の存在に気付いたので、誰でも魔力を持っていると気づきましたが」
「ほー増々、初代様と同じ発想なのだな。偶然魔力に気付いた初代様も調子に乗って魔力を空にして、倒れる事が何度かあったらしくて、魔力が空になると倒れるのであれば、全ての人々は魔力を持っていると、行き着いたらしい」

「あー、全く私と一緒ですー」
「そうであるか…… アスカ女王、どうかこのオダ=カナと共にこの世界を守ってくれぬか」

「えーと? 何から守るんですか? 後もう一つ…… 何で漢字は失われてしまったのですか?」
「この、ヤーバン大陸には本来はガイアス大陸と同じ言語しか無かったのだ。それを初代様が、魔法陣を書き記すためには日本語が必要であると説かれ、広められたのが最初なのだ。その当時地方領主の生まれであったオダの家が、ノブナガ様の魔法陣魔法によって瞬く間にこの大陸を制圧して、言語を日本語に定められたのだ」

「世界中に残っている錬金窯や結界魔法陣、後は聖遺物と呼ばれるものはすべてノブナガさんが作られたのですか?」
「初代様とその側近たちだな。現代にも脈々と受け継がれる譜代十三家と呼ばれる家の当主がノブナガ様に教えを請いながら、残していったものだ」

「あの? 失われた理由がまだ聞けてないんですけど」
「おー済まぬな。初代はこの地に現存する魔法陣や、錬金窯などの魔法陣を描かれると、この世界を見て回りたいと言われて、十三家の者たちと共に飛竜に乗って旅立たれてな、その時まだ初代は今の私と同じ20歳であったのだ。十三家の者たちも、同じ年齢であったと記録に残されておる」

「では……跡取りもしっかりいないうちに旅立たれて、そのまま戻って来られなかったのですか?」
「そうだな、それぞれ結婚もしておったし、子供も居たのだがまだ幼く、神言を学ぶ程には成熟しておらんかったのだ」

「それで、漢字は廃れてしまったと言う事ですか?」
「かな文字に関しては、比較的使い易く文化として残ったのだ」

「えっと…… 少し不思議な点があります」
「なんだ?」

「ノブナガさんとその仲間が今ある魔法陣を、書かれたとしたなら、おかしな問題があるんです。使われてる文字は今稀人達が召喚されている21世紀の物が多いので、私の記憶にあるノブナガさんでは、文化が違うと思うのです」
「それすらも解るのか? 凄いな」

「と言う事は、話に続きがあるんですね?」
「そうだ。このヤーバン大陸が国を閉ざしたのは500年ほど前じゃ」

「あ、そう言えばそうらしいですね」
「その当時に現れたのが、今残されている改良型魔法陣を描かれた、アマクサ様なのだ。ただ……この方は、ボッチ体質と言うか、その当時の将軍家に許可を得て、一人で黙々と魔法陣の改良に取り組み、そしてその技術や見識を誰にも伝えることなく、初代様と同じように他の大陸に出向き、魔法陣の改良をされて行ったのだが、途中でぱったりと消息が掴めなくなったのだ」

「亡くなったとか、そう言う事では無いんですよね?」
「そうだな。彼の口癖は……  no elof no lifeだったと伝わっているが、それがどんな意味かも伝わって無いんだ」

「あの…… elf じゃなくて、elofなんですか?」
「ああ、日記が残っておるから間違いない」

「なんだか、アマクサ様と言う方は相当深い闇を持たれてた気がしますね……」
「その日記は、残っているのでしょうか?」

「魔術学園の禁書庫に収められている」
「何故? 禁書庫なんですか」

「読もうとするとランダムでトラップが発動して危険なのだ。表紙にびっしりと書かれた神言に、秘密がある様だが、『このていどのわながかいじょできぬものがなかをよんでもじかんのむだだ』と書いてあるのだ」

「でも、中を見た方もいらっしゃるんですよね?」
「ああ。運が良ければ中を開いても軽微な罠だけのこともあるようだ」

「ページによって発動する罠が決まってるとかかな?」
「それは、即死クラスの罠もあるので、検証は出来ておらぬが、軽微な罠の時は大体ひらがなが多用してあるページらしいので、その可能性はあるかも知れぬ」

「明日、その日記を読ませて頂くわけにはいきませんか?」
「それは、許可を出そう」

「鎖国を踏み切られた直接の原因は?」
「アマクサ様が言い残された言葉に、『この日記を読み解く事無く他国と交流すれば、この国は必ず滅びを迎える』と言われたそうなので、その当時の将軍家は一切の交流を断つ選択をしたそうだ」

「それでは、私達が来たこと事は、相当警戒されていますか?」
「警戒していないと言えば嘘になるが、アスカ女王の態度を見る限り、問題は無さそうだと、判断したのでな」

 一度に色々と情報を貰い過ぎて、私なりに少し整理したいと思ったので、この日はそこまでで、自分に与えられた部屋へと戻った。

 ちょっとフリオニール様達には悪いけど、寝ている間が一番心配だから、あてがわれた部屋へ戻ると、鍵をかけて転移でスパリゾートの自室に、シルバと二人で戻って寝たよ。

 まだ全面的には信用できないからね!
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