美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

TB

文字の大きさ
9 / 104

第9話 奴隷商の街②

しおりを挟む
「って事だが、おい豚男。お前はこの街の代官なのか?」
「冒険者風情の癖に失礼な男だな」

「お前本当に人の話聞かないやつだな。そこの衛兵さんの話じゃ俺の方が偉いらしいけどいいのか? その態度で」
「あ、いや。この場は一端引き取りましょう」

「そうか。そう言えばこの昆虫標本と、穴で騒いでる奴らはどうする? このまま埋めて構わないなら埋めるが、助けたいなら勝手に助けろ。ただしその場合は穴埋めは、お前らがやれよ?」
「は、はい。きちんと埋めておきます」

「後で確認しに来てちゃんと埋めて無かったら、全員探し出して手足を斬り飛ばして豚の餌にするぞ?」
「解りました……」

 俺は昆虫標本のフォークを抜き取って、生活魔法の浄化を掛けて腰のベルトに戻すと、当初の予定通りにチュールを連れて、冒険者ギルドへ向かった。

「カイン。Sランク凄い」
「凄くない。普段はカードの見た目通りDランクって事で通すから、チュールもそれでよろしく」

「うん」

 冒険者ギルドへ到着すると、チュールの冒険者証を頼んだ。

「新規の登録ですね。魔力の検査を行います。後、登録料が銀貨一枚掛かりますけどよろしいですか?」
「ああ、構わん」

 俺は銀貨を受付嬢に渡して、チュールが鑑定の水晶に手を置く。
 
「えーと、チュールさんの適性職業は【メイド】ですね。魔法適性は無しです。魔力はDです」
「魔法適正無しだと何も使えない?」

「ん? いやそんな事ないぞ。俺も無しだし。生活魔法なら普通に使える」
「そうなんだ良かった」

「むしろ適性があれば、その属性の色々な魔法は覚えるが、生活魔法は使えないから応用に欠ける」
「でも…… 普通の生活魔法は、カインみたいな使い方しないし、出来ない」

「俺も最近までは、そこまで大した事は出来なかったんだが、Sランクダンジョンで、喋るトカゲ倒した後から、いきなり思いついた事が何でも出来るようになったって感じだ」
「そうなんだ」

「受付嬢さん。この街で一番美味い料理を食わしてくれる宿屋を紹介して貰えるか?」
「かしこまりました。中央広場に面して建っている、『オーク亭』がお薦めです」

「そこって、オーク料理がメイン?」
「その通りです。良く解りましたね?」

「いや。気づかない方がおかしいだろ……」
「泊りで一泊二食付き一人銀貨一枚です」

「そうか、ありがとう」

 俺はチュールと共に、『オーク亭』に向かった。

「一泊で飯付きで頼む」

 宿のフロントでそう告げた。

「あの…… お客様申し訳ございません。お部屋はあるんですが、今日はうちの料理人たちが、全員酷い怪我をしてしまって、お料理が用意できないんです」
「なんだって? そいつは残念だな。ちなみに自炊は出来るのか?」

「はい。自炊用の厨房はご用意してあります」
「それなら構わない。料理人が怪我をしたって事は、材料は仕入れてたりしたのか?」

「はい」
「じゃぁその材料を見せてくれ、気に入ったのが有ったら、売って貰いたい」

「それは助かります」

 調理場に入って行き、並んでいる食材を見ると中々良い素材が並んでいた。
 
「ふむ。このオークのロース肉を一塊と、玉ねぎ、キャベツ、ピーマン。それと、お、こいつは白トリュフか。これも貰おう。ご飯は炊いてあるのか?」
「それは用意してございます。味噌汁もございますよ」

「いいな。では、ご飯とみそ汁も調理が終わったら、いただこう」

 そして俺は、手早く下準備を済ませて、オーク肉の生姜焼きを作った。
 今日の決め手は、さっと炒めて赤ワインでフランベした白トリュフだ。
 香りが立ち上がり、調理場から宿の玄関の方にまで美味しそうな匂いが漂う。

 すると、他の宿泊客が何人か集まって来た。

「あれ。支配人。今日は食事の用意は出来ないって言ってたのに、なんだかめちゃくちゃいい匂いがしてるじゃないか?」
「お客様申し訳ございません。この料理は他のお客様が、自炊用の調理場で作られた物です」

「そうなのか、こんな匂いを嗅がせられると我慢が出来ないな」

「お、嬉しい事を言ってくれるね。特別サービスだ。俺があんたらの飯も一緒に作ってやるよ。材料費だけは貰うぞ?」
「本当かい? 嬉しいねぇ」

 そして、この宿に泊まっていた10人程の客に、特製の『オークの生姜焼き白トリュフ添え』を作った。
 他の客からも絶賛して貰えて、俺も嬉しかったぜ。

 勿論チュールも無言で生姜焼きを食べながら、幸せそうな顔をしていた。

「どうだ。美味いだろ?」
「うん。幸せ」

「あのお……」
 食堂での賑わいが一段落着いた頃に、支配人が声を掛けて来た。

「どうした?」
「私にも、味見をさせて頂けませんでしょうか? お客様の評判が余りにも素晴らしかったので、出来ればこの宿の名物料理に加えさせていただきたいので」

「おう。構わんぞ。美味い料理はどんどん広めるべきだからな」

 そう言って、支配人にもご馳走してやった。

「素晴らしい。この料理のレシピを是非教えてください。勿論無料でとは言いません。この宿の宿泊料と、材料費は全てサービスさせて頂きます」
「そうか。悪いな。ありがたく、サービスして貰うよ。だがな。この料理の肝は火加減とタイミングなんだ。お前で理解が出来るか?」

「少々お待ちください。怪我をしておりますが、うちのシェフを呼んで参ります」
「そうか。じゃぁ待ってる」

 そうして呼んで来たシェフは、さっきの広場で俺に落とし穴に落とされた、ゴロツキのメンバーだった。

「あ、お前!」
「なんだ。穴から無事に出れたのか? て言うかお前ら料理人だったんだな。なんであんな、ゴロツキみたいな真似をしたんだ?」

「いえ…… すいません。代官様が不届き者が居るから捕縛を手伝えと仰ったので、駆け付けました。逆らえば後々面倒ですから」
「ほう、お前らはうちのチュールを攫おうとしたわけじゃ無いんだな?」

「はい、ただ不届き者を捕まえる為だけに呼ばれました」
「そうか、それなら勘弁してやるさ。他にもこの店の料理人がいたのか?」

「三人程……」
「ちょっと連れてこい。俺が治してやる」

 そう言われて、三人の料理人を連れて来ると、みんなどこかしらの骨が折れていた。

「そこに並べ」

 四人を一列に並ばせると、一人ずつの患部に手を当てながら、生活魔法の【ファーストエイド】を掛けた。

 すると、一瞬で骨折は完治した。

「そんな…… 骨折が一瞬で治療など聖魔法でも上位の使い手じゃないと出来ない筈」
「それは、あくまでも生活魔法のファーストエイドだからな? 手足が不自由な状態じゃ、俺の料理の微妙なタイミングを覚えるのに不便だからサービスだ」

「「「ありがとうございます!」」」

 こうして、料理人たちを治療してやり『オークの生姜焼き白トリュフ添え』のレシピも伝えた。

「後は、何度も繰り返して作って、自分の完璧なタイミングを身体で覚えろ」
「「「はい。師匠」」」

この街の宿に新たな名物料理が誕生した。

「師匠。お名前は?」

「俺は、料理人カインだ」

しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

襲ってきた王太子と、私を売った婚約者を殴ったら、不敬罪で国外追放されました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...