美味いだろ?~クランをクビにされた料理人の俺が実は最強~

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第79話 Sランク冒険者【賢者】シュタットガルドの最期①

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(シュタットガルド)

「皇宮内部の様子を知る事は出来ぬのか?」
「宰相からの連絡では脱出した4名以外は皆殺しであろうと言う事ですが、既に三日が経過して門が開かない事からその情報通りかと…… 死体が放置されているのなら、臭いや病気の根源となる可能性もあるので対処は急ぎます」

「それで、皇帝の動きは解るのか?」
「宰相から日に一度は連絡が来ております。現在は公爵領に兵を集めながら、どの勢力が仕掛けて来たのかを諜報部隊を使い調査中との事です」

「遅いな。それでは次の被害地が出そうじゃ」
「翁、それがどこか、見当が付いているのですか? それより、相手に心当りがあるのでしょうか?」

「考えられる可能性は3つじゃ。黒曜石ゴーレムが使われておるのじゃから、古代遺跡から持ち出したと考えるべきであろう。通商国なのか、カール村、西の古代遺跡なのか、それ以外かじゃが、それ以外は可能性が低いじゃろう」
「ではやはり…… 通商国ですか?」

「あの国が軍事行動を起こすのなら、国軍は持っておらぬから兵力は全て傭兵じゃ、傭兵ギルドの動きが活発になろう」
「それは、確認できておりませぬ」

「と、すればじゃ。カール村、西じゃな。『ドラゴンブレス』のギースの可能性が高い」
「ギースは王国貴族のはず。王国の仕業ですか?」

「わしらは『ドラゴンブレス』の料理人であったカインと聖魔法使いのフィルと、ここ暫く行動を共にしておった」
「その二名に怪しい動きは?」

「無い。じゃが、ギースが古代遺跡でマグマの池に落ちたと聞いたそうじゃ」
「それではギースの線も無いのでは?」

「いや、思い当たる節はある。奴はSランクダンジョンの攻略で、聖剣と聖鎧を手に入れておったのじゃから、何らかの効果により助かっており、古代遺跡でゴーレムを操る手段を手に入れたのかも知れぬ」
「なんと、翁。それは証拠をつかむ事は出来るでしょうか?」

「古代遺跡に行けばおのずと答えは見えてこよう」
「翁に緊急指名依頼を出します。依頼内容は古代遺跡の調査。依頼料は着手で金貨100枚、対象の特定で100枚、更に脅威の排除で500枚をギルドが払いましょう」

「帝国がでは無く、ギルドがかの?」
「ギルドが望むのは皇族や軍の安全では無く民の暮らしの安寧です。もし、皇帝が軍を連れて帝都に攻め込んだ時、ゴーレムが王宮から出て来ない保証は何処にもありません…… もし帝都内に、帝国宮廷魔導士団や近衛部隊すら葬り去ったゴーレムが溢れた時に帝都が受ける被害を考えれば安い物です」

「解った。ボルビック。その心意気や良しじゃ。この【賢者】シュタットガルドが緊急指名依頼を確かに受けた。厩舎のスレイプニルを借りるぞ。早速乗り込んで原因を究明しよう。もし何か達成困難な事態が起これば、メーガンか、わしの娘に連絡を入れてくれ」
「翁に娘さんが?」

「西の窟人族ドワーフの国ドワイランドの首都ドワリルムで、魔導具の勉強をしておる。ガンダルフ魔導具店という店じゃ」
「解りました。翁。お怪我が無いように」

「まだまだくたばる気は無い。わしの目標はメーガンの姉御にシュタットガルフ翁と呼ばさせる事じゃからな。未だに坊やじゃぞ……」
「まぁメーガン様は…… しょうが無いかと」

 
 ◇◆◇◆ 


 シュタットガルドは、スレイプニルに騎乗して、一晩で帝国領土を駆け抜け、カール村を経由して古代遺跡へと辿り着いた。

(これくらいの事で、ジュウベエやカイン達を呼んだとあっては、わしがレオネアからボケ老人扱いされるからのう)

 遺跡に到着すると、入り口周辺を調べてみたが別段変わった様子は見当たらない。

(内部に潜入するしか無さそうじゃな)

 まぁ今回は一人じゃから、遠慮なしで魔法は放てる。
 問題は無かろう。

 扉を開けて内部に入る。
 真っ暗な空間が広がる。

 『ルミナス』照明魔法を唱えると、その空間は明るく映し出される。

(この階層にゴーレムが湧くとカインは言っておったが見当たらぬの)

 三歩程進んだ時だった。
 いきなり、足元の床が無くなり真下に落下する。
 
(幻視の床じゃと?)

 重力魔法のフロートを素早く発動して、下まで落ちる前に空中に静止した。

 この魔法は、飛び上がった状態で空中に固定されるだけで、空を自由に飛べると言う物では無い。

(賢者と呼ばれるわしでさえ、空を自由に飛べるような魔法は身に付かなかったからの。Ωオメガの魔導具を全て読み解けば、そのような道具もあるじゃろうが。帰ったら早く読み進めねばの。魔法陣の技術を身につけ、ガンダルフの奴に教えてやれば、量産化に成功させるであろう。この世界の未来に向けた大きな足跡となる)

 空中で静止しながら、そんな事を思っていると、いきなり眩い光に下から照らし出された。

「誰かと思えばSランクの爺じゃ無いか。俺の神殿に何の用だ」
「ほー。やはり生きておったか。ギース」

「俺はこの世界の神となる男だ。死ぬわけがないさ」
「一つ聞く。皇宮はお主の仕業か?」

「教える必要は無いな。俺の許可なくこの神殿に入って来た以上は、生きて出る事も無かろうが」
「お前如きに、この【賢者】シュタットガルトを止められるとでも思うておるのか? 身の程を知れ」

「聞いて無かったのか? 言ったよな。俺は神になる男だと。神とは万能な存在なのだ。ひざまずけ」

 ギースが手にしたクリスタルに何かを呟く。
 すると、いきなり壁が変形しシュタトガルドの手足を拘束した。

「なっ…… 想像魔法じゃと? わしですら、手の届かん神域の魔法を使えるというのか」
「Sランク冒険者程の力を持っているなら、この遺跡に吸い込ませればさぞ高い魔力を与えてくれるだろう。そのままマグマの池に浸かって貰おう」

 手足を拘束されたまま下に降ろされると、100名程の人間が現れた。
 周囲を見ると、ゴーレムの生産工場の様になっている。

 この民達は…… ギースが連れて来た農民たちか?
「既に農民などと言う下等な人間では無い。彼らは神たる俺の従順なる下僕。この世界にギース・フォン・ドラゴブレスの名を広めるための存在だ」
「ふざけた事を…… 『マッドクリエイト』」

 シュタットガルドが唱えると、手足を拘束した壁の土はバラバラと崩れ落ち、拘束を解く。

「小僧。神を名乗るなど烏滸おこがましい事と解らせてくれよう」

身体強化フィジカルストレングス

 続けて唱えた魔法により、シュタットガルドの身体は二回りほども巨大化し、筋骨隆々の戦士の様な体型になった。

「爺。無理するんじゃねぇ。そのままおとなしく遺跡に飲み込まれろ」

 ギースとシュタットガルドの戦いが幕を開けた。
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