可惜夜(あたらよ)の魔法使い

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第2章・勇者

第12話・超結界

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 ガープたちが学校に着いた頃、サグ・ヴェーヌ連邦の中枢部・魔力管理局は慌てふためいていた。通常自然界で検知できる魔力の数テラ倍もの「なにか」が領土内にあるからだ。

 魔力探査に長けた魔法使いおよび、連邦十二傑騎士団まで駆り出され、その正体を確かめるように、王たる魔導士ルイ・ドゥマゲッティに指示された。

 数時間もの探査の結果、その魔力の源となる場所の特定することは叶わなかった。魔力が追えない、口々に魔法使いは言った。

 報告を受けた魔導士ルイは、その存在に心当たりがあった。伝説の魔法使いオワツ。二百年前に姿を消した、勇者と魔王と精霊使い、そしてオワツ。サグ・ヴェーヌ連邦とリム王国との国境沿い、かねてより壽念が集中すると言われているエリア。
 ルイが前回の騎士団派兵にかの地を選んだのは、単に領土奪回と言う目的ではない。むしろそれは建前。異常値とも言える壽念と神々の残思が支配している、ルイの思惑を確認するためだった。

 ハーフエルフ、今では差別的表現とも言われるが、ルイの出自は人間とエルフである。寿命が長くなり純血エルフでは千年強と言われている。ハーフエルフとなると、その半分五百年ほどだ。ルイの年齢は三百歳を越え、容姿・名前・経歴すべてを偽りながら、人間界に溶け込んでいる。ルイ・ドゥマゲッティとしてはまだ五十年ほどであった。

 ルイがエルフの母から聞いた、死なない魔法使い。その魔法使いに仕えたのが、祖母である。名は、セイレンと言った。祖母セイレンは数々の武功をあげ、エルフの世界でも魔王討伐八体の偉業を成し遂げたと誉れ高い。
 母によると、セイレンは死後転生したはずだというが、その姿・形、噂でさえも耳にしない。それがようやくわかったのが、巨大な魔力の消失があった二百年前、そして今回の魔力発露。魔力の質量が似ている、ルイの思惑が正しければ、祖母セイレンが仕えた伝説の魔法使い「オワツ」が転生または再生したのか。
 ルイは居ても立っても居られず、自ら魔力追跡を試みた。時間ならいくらでもある。オワツが何者かと戦い、敗れ、今に至る。その相手は、ルイ自身が敵対する「アレ」ならば、都合がいい。

 オワツをサグ・ヴェーヌ連邦に取り込み、ともに戦線を組む。ルイの野心とは、エルフを滅ぼした女神への復讐心で成り立っている。

 かの地に、立つ一人の魔法使いがいた。魔力制御が上手くできない。リム王国側にまで越境しては戻り、なにかの軌跡を辿るようにその魔法使いは動く。丸二日、その魔法使いは休むことなく、小さな詠唱を繰り返す。


「超結界」

 抑えられたとはいえ、強力な魔力に導かれルイがぽつりと呟いた。結界の作り方には性格が現れる。それは、字の美しさにも似ている。流麗な字、豪快な字、柔らかい字、優しい字、怒りの字。この結界の性格は、緻密。いや、執念。ルイは静かな呪いを感じていた。その視線の先には、深紫色のローブに身を包む魔法使いがいた。

「オワツ」
 ルイのつぶやきを聞き逃さなかった、その魔法使いは、おどけた表情で
「なんか懐かしい感覚がするね」と言った。
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