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45.ハルバードさんとノアさん
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晩餐会も終わり、兵士さんもそのご家族も皆自分の家に帰って行った。
「レイ様、ノアと一緒に私の私室でお茶でも飲みませんか?美味しいデザートも用意しておりますので、是非食べて頂きたいのです」
え?デザート?もちろんです。
私の人生、デザートのお誘いをお断りしたことはただの一度もございません。
着替えて30分後に集合となった。
「大聖女様、お疲れ様でした。では楽なお衣装に着替えを致しますね」
またスーパー侍女さんたちは、5人がかりで私のドレスを剥ぎ、柔らかい素材のワンピースを着せてくれた。手早いのに雑な対応は無く、私の警戒心も薄れていく。
「レイ様、お迎えに来ました」
ハルバードさんがまた迎えに来てくれた。
侍女さんに送ってもらおうとしてたのだけど…
「ああ、邪魔な虫が飛び回っているので、私は虫除けです」フフッと笑うと、私の手を取って歩き出した。
あー、虫か、虫だね。お呼びじゃない王子様が向かいから歩いてきた。
「だ、大聖女殿?これからどちらへ?もう夜も更けているが…私と少しはなし…」
「殿下、私と大聖女様は明日からの辺境の地の対策を話し合うのです。王都に住まわれている殿下には不要の問題ですね。では失礼致します」
お邪魔な虫をサッとかわし、ハルバードさんのお部屋に入るとノアさんが自分の家のようにくつろいでいた。
「ノア、くつろぎ過ぎだ。まあいつものことか」
大きな一人掛けソファーにそれぞれで座った。
「それで?ノア、お前はなんでレイ様と一緒なんだ?」
ハルバードさんが、ダラダラしながらお菓子を摘んでいるノアさんに話しかけた。
ノアさんは私がメルトル村に突然現れたところから簡単に話し始めた。
私が王家に探され始めた事で感情が乱され、その後ララさんにメルトル村が私の居場所で、その村人は私の家族なんだと、皆に受け入れてもらえていた喜びで癒しの力が目覚めた。
その事でメルトル村に王家が探しに来ることを嫌った私のために、王宮の城に付き添った。そして、その流れでここまで来たと。
そういえば私はノアさんのことは何も知らない。
「ノアさんはいつからハルバードさんとお知り合いなんですか?」
「俺が冒険者だから、この辺境の魔物討伐の仕事を依頼されたんだ。8年前か?それ以来ハルとは連絡を取り合っているんだ」
「冒険者?ノアさん魔物の討伐が出来るんですか?」
「ノア、レイ様に何も話してないのか?」
「あぁ、タイミングが無くてな」
それから、ノアさんが語ってくれたノアさん自身の話しに驚いた。
ノアさんは冒険者と言ったが、本当は隣国ザイカラル帝国の第三皇子だと言う。
第一皇子は皇太子、第二皇子は皇太子と一緒に国に携わる存在だが、第三皇子の自分は好きにして良いと言われ、自由に生きることにしたそうだ。
しかし、ただ自由というわけではなく、ノアさんは女神の恩恵の少ないザイカラル帝国で、珍しく魔力を授かった皇子様だった。
=====
今、ザイカラル帝国では魔力を持つ者はほとんどいない。過去には国民の半分は魔力を持ち魔法を使っていたが、何代か前の王族が魔力暴走を引き起こし、国の1割程が消滅してしまった。
相当数の国民が犠牲になったことで、魔法は危険であり悪だという感情を国民が抱くようになり、多くの者が魔力を持たない者同士の婚姻を望んだ。
その結果、魔力を持つ者は激減した。
その中で俺は、俺の曾祖父の血を受け継いだ、唯一魔力を持つ皇子として誕生した。
その曾祖父の持つ魔力は、魔力鑑定の力だった。
幼い頃、王城の地下の宝物庫が気になって仕方なかった俺は、父である皇帝に願いその宝物庫に入った。
心惹かれる場所に行くと、そこには何カ所も穴が開いた変わったかたちの石板と、革の袋に石板の穴と同じような大きさの六色の宝石がたくさん入っていた。
その革袋の中に手紙のようなものも入っていた。
『この石板と宝石の魔力を感知した者へ
正しく配置されることは魔王を葬りこの地を正常化に導く 忘れ去られたこの願いを叶える者はこの世界の救世主として現れるだろう その者を敬い尊き者として我が国の女神とするのだ アレクサンダー·ザイカラル』
曾祖父さんが書いたものだった。
よくわからなかったが、その石板と宝石の魔力に惹かれた。
この事を皇帝に伝えると、気になるのなら調べてみろと言われ、皇子教育の間にあらゆる文献を読み漁ったが欲しい情報は得られなかった。
その石板と宝石のことを調べるため旅に出た。
旅の費用を稼ぐために冒険者としてギルドに登録し、その依頼でハルバードに出会った。
剣の腕前は皇子教育の途中で騎士を目指しても良いかと思うくらい強かった。持っている魔力を剣に乗せることも出来たから。
そして導かれるがまま、隣国ユストル王国のメルトル村に辿り着いた。
老人ばかりの忘れられた村。
何故かここにいなくてはならない気がした。村人には喜ばれたので、管理者として住まうことにした。
そこで気が付いたことがあった。
今まで第三皇子ということで、あらゆる貴族の令嬢が自分にまとわりついてきたが、一度として令嬢に心揺さぶられることは無かった。
気になるのはいつも屈強な騎士たち。
騎士たちのたくましい胸板や腕を見ると胸が高鳴る。
何故だろう。
それはメルトル村に来てからわかった。
カイル食堂のカイルさんに初めて会った時、どうしようもなく胸が苦しくなり、この人が好きだと思った。
そうか、俺は男が好きなんだ。
すでにララさんという奥さんもいるし、自分の気持ちを伝える気は毛頭ない。このままカイルさんのそばで、カイルさんの作る食事を頂き、この村の役に立つ存在になろう。
そんな日々を過ごしていた時、レイがこの村にやって来た。
初めて目が合った時、膨大な魔力量に言葉を失った。
鑑定魔法を使える俺は、いくら魔力を持つものが多いこのユストル王国の人でも、この魔力は有り得ない、恐らくつい先日召喚された聖女に違いないと思った。
何かとてつもない事情が有るのだろう。聖女が王都からこのような辺鄙な場所に一人で来るなんて。
この国の王家は、我が帝国から見れば頼りなさを感じることが多々あった。その辺の問題が今レイがこの村にいる結果か。
もちろんその問題に首を突っ込むつもりは無い。レイが手を貸して欲しいと言えば別だ。
本来が穏やかな気質なのだろう、村人とも打ち解け、役に立とうと必死に頑張っている。いつか、レイから事情を話してくれる時まで待つつもりだ。
村にいる間も、信じられないような魔力構築の魔法を息をするように扱っている。
どれだけ優れた魔法使いでも、レイのこの難解な魔法を術式にして表すのは不可能だ。鑑定魔法に特化した俺ですら追い付けないのだから。
そして、メルトル村でのレイの生活が落ち着いて来た頃、王家がレイを探しているという話しを聞いたレイは魔力を暴走させた。
結果癒しの力を発動させたのだ。
「ノアさんが皇子様だったなんて、平民と聞いたから驚きました。だから、私の魔法に色々と詳しかったんですね。国へ、お家へ帰らなくても大丈夫なんですか?散々付き添ってもらった私が聞ける立場じゃないですけど」
「いいんだ。両親も兄弟も俺の好きにしろと言ってくれている。
ただ、曾祖父さんの残した謎については皆も気になってるみたいで、それは調べて欲しいとは言われてるんだ。
だからこれからも今まで通りメルトル村で色々調べてみるよ。俺はメルトル村が好きだしね」
ノアさんは、カイルさんを恋愛対象として好きだと言った。それもメルトル村が好きな理由なのだろう。
「そうですよレイ様、ノアは色んな意味でメルトル村が好きだし、俺の恋のライバルにはならないから安心してレイ様の護衛を任せられるし最高の男です」
そう言うとハルバードさんがフフッと微笑んで私を見た。
恋のライバル?そっかこの二人が同じ人を好きになることは無いもんね。それと私の付き添いとは関係無いような…?
「ハル、レイが悩むようなことを言うなよ?焦って良いことは無いぞ」
「あぁそうだな、厄介な魔物のように慎重に距離を詰めて仕留めるよ。どうやらあまり経験も無いようだからな」
ハルバードさんは優しい顔をしているが、いつの間にか魔物の話しになっていた。
「レイ様、ノアと一緒に私の私室でお茶でも飲みませんか?美味しいデザートも用意しておりますので、是非食べて頂きたいのです」
え?デザート?もちろんです。
私の人生、デザートのお誘いをお断りしたことはただの一度もございません。
着替えて30分後に集合となった。
「大聖女様、お疲れ様でした。では楽なお衣装に着替えを致しますね」
またスーパー侍女さんたちは、5人がかりで私のドレスを剥ぎ、柔らかい素材のワンピースを着せてくれた。手早いのに雑な対応は無く、私の警戒心も薄れていく。
「レイ様、お迎えに来ました」
ハルバードさんがまた迎えに来てくれた。
侍女さんに送ってもらおうとしてたのだけど…
「ああ、邪魔な虫が飛び回っているので、私は虫除けです」フフッと笑うと、私の手を取って歩き出した。
あー、虫か、虫だね。お呼びじゃない王子様が向かいから歩いてきた。
「だ、大聖女殿?これからどちらへ?もう夜も更けているが…私と少しはなし…」
「殿下、私と大聖女様は明日からの辺境の地の対策を話し合うのです。王都に住まわれている殿下には不要の問題ですね。では失礼致します」
お邪魔な虫をサッとかわし、ハルバードさんのお部屋に入るとノアさんが自分の家のようにくつろいでいた。
「ノア、くつろぎ過ぎだ。まあいつものことか」
大きな一人掛けソファーにそれぞれで座った。
「それで?ノア、お前はなんでレイ様と一緒なんだ?」
ハルバードさんが、ダラダラしながらお菓子を摘んでいるノアさんに話しかけた。
ノアさんは私がメルトル村に突然現れたところから簡単に話し始めた。
私が王家に探され始めた事で感情が乱され、その後ララさんにメルトル村が私の居場所で、その村人は私の家族なんだと、皆に受け入れてもらえていた喜びで癒しの力が目覚めた。
その事でメルトル村に王家が探しに来ることを嫌った私のために、王宮の城に付き添った。そして、その流れでここまで来たと。
そういえば私はノアさんのことは何も知らない。
「ノアさんはいつからハルバードさんとお知り合いなんですか?」
「俺が冒険者だから、この辺境の魔物討伐の仕事を依頼されたんだ。8年前か?それ以来ハルとは連絡を取り合っているんだ」
「冒険者?ノアさん魔物の討伐が出来るんですか?」
「ノア、レイ様に何も話してないのか?」
「あぁ、タイミングが無くてな」
それから、ノアさんが語ってくれたノアさん自身の話しに驚いた。
ノアさんは冒険者と言ったが、本当は隣国ザイカラル帝国の第三皇子だと言う。
第一皇子は皇太子、第二皇子は皇太子と一緒に国に携わる存在だが、第三皇子の自分は好きにして良いと言われ、自由に生きることにしたそうだ。
しかし、ただ自由というわけではなく、ノアさんは女神の恩恵の少ないザイカラル帝国で、珍しく魔力を授かった皇子様だった。
=====
今、ザイカラル帝国では魔力を持つ者はほとんどいない。過去には国民の半分は魔力を持ち魔法を使っていたが、何代か前の王族が魔力暴走を引き起こし、国の1割程が消滅してしまった。
相当数の国民が犠牲になったことで、魔法は危険であり悪だという感情を国民が抱くようになり、多くの者が魔力を持たない者同士の婚姻を望んだ。
その結果、魔力を持つ者は激減した。
その中で俺は、俺の曾祖父の血を受け継いだ、唯一魔力を持つ皇子として誕生した。
その曾祖父の持つ魔力は、魔力鑑定の力だった。
幼い頃、王城の地下の宝物庫が気になって仕方なかった俺は、父である皇帝に願いその宝物庫に入った。
心惹かれる場所に行くと、そこには何カ所も穴が開いた変わったかたちの石板と、革の袋に石板の穴と同じような大きさの六色の宝石がたくさん入っていた。
その革袋の中に手紙のようなものも入っていた。
『この石板と宝石の魔力を感知した者へ
正しく配置されることは魔王を葬りこの地を正常化に導く 忘れ去られたこの願いを叶える者はこの世界の救世主として現れるだろう その者を敬い尊き者として我が国の女神とするのだ アレクサンダー·ザイカラル』
曾祖父さんが書いたものだった。
よくわからなかったが、その石板と宝石の魔力に惹かれた。
この事を皇帝に伝えると、気になるのなら調べてみろと言われ、皇子教育の間にあらゆる文献を読み漁ったが欲しい情報は得られなかった。
その石板と宝石のことを調べるため旅に出た。
旅の費用を稼ぐために冒険者としてギルドに登録し、その依頼でハルバードに出会った。
剣の腕前は皇子教育の途中で騎士を目指しても良いかと思うくらい強かった。持っている魔力を剣に乗せることも出来たから。
そして導かれるがまま、隣国ユストル王国のメルトル村に辿り着いた。
老人ばかりの忘れられた村。
何故かここにいなくてはならない気がした。村人には喜ばれたので、管理者として住まうことにした。
そこで気が付いたことがあった。
今まで第三皇子ということで、あらゆる貴族の令嬢が自分にまとわりついてきたが、一度として令嬢に心揺さぶられることは無かった。
気になるのはいつも屈強な騎士たち。
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何故だろう。
それはメルトル村に来てからわかった。
カイル食堂のカイルさんに初めて会った時、どうしようもなく胸が苦しくなり、この人が好きだと思った。
そうか、俺は男が好きなんだ。
すでにララさんという奥さんもいるし、自分の気持ちを伝える気は毛頭ない。このままカイルさんのそばで、カイルさんの作る食事を頂き、この村の役に立つ存在になろう。
そんな日々を過ごしていた時、レイがこの村にやって来た。
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鑑定魔法を使える俺は、いくら魔力を持つものが多いこのユストル王国の人でも、この魔力は有り得ない、恐らくつい先日召喚された聖女に違いないと思った。
何かとてつもない事情が有るのだろう。聖女が王都からこのような辺鄙な場所に一人で来るなんて。
この国の王家は、我が帝国から見れば頼りなさを感じることが多々あった。その辺の問題が今レイがこの村にいる結果か。
もちろんその問題に首を突っ込むつもりは無い。レイが手を貸して欲しいと言えば別だ。
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村にいる間も、信じられないような魔力構築の魔法を息をするように扱っている。
どれだけ優れた魔法使いでも、レイのこの難解な魔法を術式にして表すのは不可能だ。鑑定魔法に特化した俺ですら追い付けないのだから。
そして、メルトル村でのレイの生活が落ち着いて来た頃、王家がレイを探しているという話しを聞いたレイは魔力を暴走させた。
結果癒しの力を発動させたのだ。
「ノアさんが皇子様だったなんて、平民と聞いたから驚きました。だから、私の魔法に色々と詳しかったんですね。国へ、お家へ帰らなくても大丈夫なんですか?散々付き添ってもらった私が聞ける立場じゃないですけど」
「いいんだ。両親も兄弟も俺の好きにしろと言ってくれている。
ただ、曾祖父さんの残した謎については皆も気になってるみたいで、それは調べて欲しいとは言われてるんだ。
だからこれからも今まで通りメルトル村で色々調べてみるよ。俺はメルトル村が好きだしね」
ノアさんは、カイルさんを恋愛対象として好きだと言った。それもメルトル村が好きな理由なのだろう。
「そうですよレイ様、ノアは色んな意味でメルトル村が好きだし、俺の恋のライバルにはならないから安心してレイ様の護衛を任せられるし最高の男です」
そう言うとハルバードさんがフフッと微笑んで私を見た。
恋のライバル?そっかこの二人が同じ人を好きになることは無いもんね。それと私の付き添いとは関係無いような…?
「ハル、レイが悩むようなことを言うなよ?焦って良いことは無いぞ」
「あぁそうだな、厄介な魔物のように慎重に距離を詰めて仕留めるよ。どうやらあまり経験も無いようだからな」
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