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涼香の住むマンションを出ると少し前を歩く基希を追いかけ、彼のスーツの裾を掴んだ。
「んっ?」
「先ほどは、色々とありがとうございました・・・でも、何で先生のこと黙ってたんですか?」
「だって史果のこと吃驚させたかったしー♪」
嬉しそうに話す基希に軽く溜息をつき、先ほどの涼香のことを思い出す。
「・・・私この企画の関係で何度か先生にお会いしてるんですが・・・何と言うか、先生っていつも煌びやかな雰囲気というか、身なりはもちろんですが容姿も素敵で・・・今回はいきなりだったんで仕方ないとは思いますが、あのような格好もするんだなと・・・」
「がっかりした?」
「いえ、その逆です。いつもきっちりされてる先生でもあのような姿もするんだって、親近感が湧いたというか・・・」
心が和むような表情を浮かべる史果に基希は空を見上げた。
「・・・人間誰しも表面だけが全てじゃないからな。実際、佐伯だってそうだろ?あんな善人面してたって裏ではエゲツないことしてたんだから」
「そう・・・ですね」
あれから佐伯からの連絡は途絶え彼がどうなったのか史果には知る由もなかった。いつの間にか電話帳から佐伯の名が削除され基希の仕業だというのは直ぐに理解したが、そのことには触れずにいた。
「基希さんも誰にも見せていない自分がいるんですか?」
史果は基希を見上げると一瞬自身の胸が高鳴ったような感覚に襲われた。それは今まで見たこともない基希の無理に笑った笑顔が悲しく仄暗さを纏ったような・・・様々な感情が交じり合った笑みに感じ取れた。
「それは・・・どうかな?史果は裏表なさそうだな」
「な、何ですかそれっ!まるで何も考えてないみたいに」
史果がムスッと機嫌悪く声を上げると普段の基希の表情に戻り、笑いながら史果が掴んでいた手を外させた。
「とりあえず無事、事なきを得て良かったな。俺、今から取引先に顔出して今日はそのまま帰るからお前は先に会社戻って報告しな・・・雨も降りそうだし気をつけて、んじゃお疲れ」
基希は史果の髪をくしゃくしゃとし笑いながら人混みへと消えて行った。頬を膨らませながら手櫛で髪を直しながら先ほど見せた表情、涼香と最後に交わしていた時の基希の表情が何故だか心に引っかかっていた。
☆☆☆
オフィスに戻り早速、先ほどの内容を報告した。今日中に仕上る予定だった資料も無事送信し、気が付くと時計の針は定時を軽く過ぎていた。明日は休日ということもあってか他の社員たちは早々と帰社し、残ってるのは僅かな人数となっていた。
史果はホワイトボードの基希の欄にある“直帰”の文字が目に入りいない基希のデスクに一瞥し、また自身のパソコンに視線を戻した。別の新たな案件の資料へ手を付けなくてはいけないのになかなか進まずモニターに映る資料の画面をぼーっと眺めていた。
(藤さんの裏の顔・・・ありすぎる。そもそも何であんな高そうなタワマンに住んでるのかとか、前に教えてくれなかったけどなんで佐伯さんの不正行為がわかったのかとか、あと私のこと・・・とか)
佐伯の時も今回も此方が頼んだわけでもないのに助けてくれた。セクハラするし馬鹿にもするし腹黒だし・・・という考えは念頭にはあるが、それでも何かと史果が窮地に陥らず今もこうしていられるのはやはり基希のおかげというのは逸らすことのない事実であった。
(考えれば考えるほど迷宮に嵌っていくなーこれ)
昨夜からの疲れがここにきてどっと押し寄せ、史果は深い溜息を洩らしデスクに突っ伏した。瞼を下ろすと目の奥からじんわりと熱くなる感覚に襲われ、そのままいつの間にか意識が遠のいていった。
「んっ?」
「先ほどは、色々とありがとうございました・・・でも、何で先生のこと黙ってたんですか?」
「だって史果のこと吃驚させたかったしー♪」
嬉しそうに話す基希に軽く溜息をつき、先ほどの涼香のことを思い出す。
「・・・私この企画の関係で何度か先生にお会いしてるんですが・・・何と言うか、先生っていつも煌びやかな雰囲気というか、身なりはもちろんですが容姿も素敵で・・・今回はいきなりだったんで仕方ないとは思いますが、あのような格好もするんだなと・・・」
「がっかりした?」
「いえ、その逆です。いつもきっちりされてる先生でもあのような姿もするんだって、親近感が湧いたというか・・・」
心が和むような表情を浮かべる史果に基希は空を見上げた。
「・・・人間誰しも表面だけが全てじゃないからな。実際、佐伯だってそうだろ?あんな善人面してたって裏ではエゲツないことしてたんだから」
「そう・・・ですね」
あれから佐伯からの連絡は途絶え彼がどうなったのか史果には知る由もなかった。いつの間にか電話帳から佐伯の名が削除され基希の仕業だというのは直ぐに理解したが、そのことには触れずにいた。
「基希さんも誰にも見せていない自分がいるんですか?」
史果は基希を見上げると一瞬自身の胸が高鳴ったような感覚に襲われた。それは今まで見たこともない基希の無理に笑った笑顔が悲しく仄暗さを纏ったような・・・様々な感情が交じり合った笑みに感じ取れた。
「それは・・・どうかな?史果は裏表なさそうだな」
「な、何ですかそれっ!まるで何も考えてないみたいに」
史果がムスッと機嫌悪く声を上げると普段の基希の表情に戻り、笑いながら史果が掴んでいた手を外させた。
「とりあえず無事、事なきを得て良かったな。俺、今から取引先に顔出して今日はそのまま帰るからお前は先に会社戻って報告しな・・・雨も降りそうだし気をつけて、んじゃお疲れ」
基希は史果の髪をくしゃくしゃとし笑いながら人混みへと消えて行った。頬を膨らませながら手櫛で髪を直しながら先ほど見せた表情、涼香と最後に交わしていた時の基希の表情が何故だか心に引っかかっていた。
☆☆☆
オフィスに戻り早速、先ほどの内容を報告した。今日中に仕上る予定だった資料も無事送信し、気が付くと時計の針は定時を軽く過ぎていた。明日は休日ということもあってか他の社員たちは早々と帰社し、残ってるのは僅かな人数となっていた。
史果はホワイトボードの基希の欄にある“直帰”の文字が目に入りいない基希のデスクに一瞥し、また自身のパソコンに視線を戻した。別の新たな案件の資料へ手を付けなくてはいけないのになかなか進まずモニターに映る資料の画面をぼーっと眺めていた。
(藤さんの裏の顔・・・ありすぎる。そもそも何であんな高そうなタワマンに住んでるのかとか、前に教えてくれなかったけどなんで佐伯さんの不正行為がわかったのかとか、あと私のこと・・・とか)
佐伯の時も今回も此方が頼んだわけでもないのに助けてくれた。セクハラするし馬鹿にもするし腹黒だし・・・という考えは念頭にはあるが、それでも何かと史果が窮地に陥らず今もこうしていられるのはやはり基希のおかげというのは逸らすことのない事実であった。
(考えれば考えるほど迷宮に嵌っていくなーこれ)
昨夜からの疲れがここにきてどっと押し寄せ、史果は深い溜息を洩らしデスクに突っ伏した。瞼を下ろすと目の奥からじんわりと熱くなる感覚に襲われ、そのままいつの間にか意識が遠のいていった。
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