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朝の光がカーテンの隙間から差し込み、寝ている史果の顔に当たった。その光で薄っすら目を開けヘッドボードに置いたスマホのディスプレイに表示されている時計で現在の時刻を確認する。
「うぅ・・・、9時か・・・休みだし、もうちょっと寝よ」
史果は昨夜までの疲労がここでドッと押し寄せ、なかなかベッドから起き上がることができなかった。基希と絡むようになってから史果の生活は少しずつ変化していった。
元々話す機会がなかったのにまさかの“恋人宣言”をされたことで基希を狙っていた部署の女性同僚からはいじめとまではいかないが基希にバレない程度の地味な嫌がらせを受けたりされていた。噂が広まっているせいか他部署の女性社員たちからもジロジロ見られているような気になり神経が過敏になっていた。心身ともに疲れ果てていた中で史果にとって待ちに待った休日だった。
閉まっているカーテンの隙間からは陽が差し込み天気がいいことが窺えた。
(あと少し寝たら部屋の片づけして・・・お布団干して・・・洗濯して・・・読みかけの本読んで・・・)
頭の中で起きた時のことを考えながら史果はまた深い眠りにつこうとした時・・・。
ピンポーンッ、・・・ピンポンッ!ピンポンッ!ピンポンッ!
リリリリリリリ・・・
しばらくすると玄関のチャイムとスマホの着信音がけたたましく鳴り出し史果は、その音で一気に目が覚め飛び起き何事かと辺りを見渡した。
「えっ?!はっ!藤さんからだ」
まず着信元の確認をすると基希の名前がディスプレイに表示され、その間にも同時に玄関とスマホから呼び出し音が史果を襲っていた。
「も、もしもし、おはようございます」
「お前いつまで寝てんだよっ!」
「いや・・・すみません。今、ちょうど家に誰か来たみたいで、このままちょっと待ってもらえますか?」
史果はスマホを持ちながら玄関のドアを開けるとそこにはグレーのカットソーにネイビーのジャケットを羽織り足の長さが強調されるスリムパンツを穿きこなす意地悪な表情を浮かべた基希がスマホを耳にあてながら廊下で立っていた。
「・・・・・・・・・・」
「おいっ!閉めんなっ」
無言で開けたドアを閉めようとした時、基希が片足を挟みドアを閉めれなくしてしまった。その状態で力いっぱいドアを開けられズカズカと部屋の中へと入ってこられた。
「ちょっ、今日は休みですよ?!しかもなんで勝手に部屋入ってきてるんですか!!」
基希は無言のまま遠慮なく部屋まで入り、先ほどまで気持ちよく寝ていたベッドに腰を下ろした。
「折角いい天気なのにいつまで寝てんだよっ!もう9時過ぎてんぞ」
基希がカーテンを全開に開けると日差しが部屋いっぱいに降り注いできた。
「ほらっ、その寝ぐせでボサボサになった髪と頭、シャワー浴びてスッキリさせて来いよ」
急かすように追いやられ未だスッキリしない頭の中、史果は渋々簡単な着替えを持って浴室へと向かった。
シャワーを浴び終え、着替え脱衣所から出るとキッチンから空っぽの胃を刺激する美味しそうな匂いが漂い、部屋へ向かうと小さなテーブルには旅館で出るような朝食が並べられていた。
「おっ、出たな・・・って、髪乾かして来いよ。風邪引くぞ」
「あ、はい、って、あのー・・・これは一体」
「この前、酔い潰れたお前送った時、飲み物取るのに冷蔵庫開けたらロクなもん入ってねーのな。あんなんじゃ頭回んねーだろ・・・ってことで、昼飯でもと思ってたけど・・・まさか寝てるとは思ってなかったから朝飯になっちまった」
基希に再度髪を乾かすよう催促され乾かし終わる頃には茶碗にご飯が盛られていた。
「ほら、食え。俺も朝抜かしてたし序でに食うわ」
史果は基希が座る向かい側に腰を下ろし、ふと基希の前にある見慣れない茶碗などの食器に目をやった。
「いただき「あ、あの、この食器わざわざ持ってきたんですか?」
「そりゃそうだろ、もし佐伯が使ってたものとかあったら胸糞悪いしな。とりあえずこの食器はここに置いとくから」
基希が手を合わせていると史果に遮られ少し不機嫌そうな表情で説明した。今度は史果も一緒に手を合わせ遅い朝食を口にした。
「美味しい・・・このお味噌汁ってもしかして出汁取ったんですか?!」
「流石に時間ないと思って家から持ってきた・・・ってか、俺って凄くない?!顔も良くて金もあって料理も出来る、こんなスパダリどこ探してもいないだろ?」
鼻高々に自慢され、史果は無表情で応えることなくもくもくとご飯を口に運んでいた。
「・・・性格に難ありですが」
ボソっと呟くと頭頂部をチョップされた。
(・・・まぁ性格は置いといて、確かにパーフェクトなんだよな。あの笑顔の破壊力は確かに凄まじいと思う・・・にしても食べ方、いつ見ても綺麗だな)
幼少期からしっかり躾けられたのが分かるほど惚れ惚れするような所作で食事をする姿は基希に興味がなかった中で唯一史果が見惚れてしまったところだった。
「おいっ!何ボーっとしてんだよ、早く食って出かけるぞ」
「へっ?」
「昨日は・・・まぁ確かにやり過ぎたって反省してる、悪かった。だから今日はお詫びも兼ねてデートするから」
史果は目をパシパシと瞬きし、基希が言っている意味を全く理解できず思わず箸を手元から落としてしまった。
☆☆☆
「やっぱ実物のライオンは迫力あるけどあの顔洗うような仕草とかは猫みたいで可愛いな」
子供のように目を輝かせ、ガラス越しのライオンに基希は興奮隠さず燥ぎまくっていた。その隣で気まずそうな表情を浮かべ史果は軽く息を吐く。
食事を急かすように食べさせられ終わると今度は出かける準備をせっつかれた。史果は、基希のペースに巻き込まれ気が付くと電車で一時間程かけて動物園へと連れて来られた。
『初デートと言えば“水族館”か“動物園”だろ?距離的なこと考えて今日は動物園に行くから。なんかこうやって電車乗って出かけるなんて何年ぶりだろうなー』
“高校生の初デートか!”と突っ込みたくなるような基希の燥ぎように、振り回される史果は自身の“まったり休日”がガラガラと音を立てて崩れ去り無意識に顳顬を押さえた。
「史果、ほらっあのブラッザモンキーって部長に似てね?」
「あー確かに。あの木の上にいるのなんて妙に貫禄あって考え事してる時にそっくりかも」
二人で顔を見合わせ思わず吹き出し笑い合った。
(動物園なんて高校生以来だし、折角だから楽しも)
それからは園内マップを見ながら移動し様々な動物たちを二人で見て回った。休日で天気も良かったため周りは小さな子供連れの家族やカップルで溢れ、それに気づいた史果は照れくさくなり基希の歩くスピードから少し遅めに歩き距離を取った。
「もう疲れたのか?運動不足なんじゃねーの?」
基希は一瞬立ち止まり史果に呆れ顔を向け、そのまま史果の指の間と自分の指の間を絡ませるように手を繋ぎまた歩き出した。
「ちょっとこの繋ぎ方は・・・」
「周りもカップルでイチャついてるんだし、別に恥ずかしくないだろ」
繋いだ手や指先から基希の体温が伝わり、何故か心拍数が上昇し頬が紅潮していく。チラッと基希を見上げると基希もまた先ほどよりも頬に赤みがかってはいたが、史果はそれには気づかなかった。
「ちょっと休憩すっか」
歩き回りちょうど疲れが出始めた矢先、園内にあるカフェが見え、二人はそこで休憩すべく店内へと入った。店内はかなり広々とした空間で席数もかなり多く設置されてはいたが、やはり休みということもあって中は入園客で溢れていた。
「あっちのテラスの方、何席か空いてるしどっか先座って待ってて。俺、なんかテキトーに飲み物買ってくるわ」
史果は基希が指差す方を確認すると言われた席へ向かい基希が戻ってくるのを待った。陽も高くなり動くと汗ばむ陽気だが、ジッとしていると時折柔らかな風が心地よく史果の肌を擽った。
「ねー、あそこの人めちゃくちゃイケメンじゃない?」
「どれどれ?あっ、マジかっこいい♡ドリンクカップ二つ持ってるから一人なわけないかー。彼女と来てんだのかなー?やっぱめちゃくちゃ美人なんだろうなー」
「あんなイケメンと付き合う彼女なんだからモデル並みの女なんだよ。美男美女かー、いいなーあんな彼氏」
近くで二人組の女性たちの声が史果の耳にも入り視線を移すと基希が史果の姿を探すように辺りを見渡しながらテラスの方へと歩いてきた。
(いやいや、私なんかと一緒なのバレたら藤さんが変な目で見られちゃう)
史果は咄嗟に席を立ちテラスから抜けれる遊歩道へと早足で向かいしばらく歩いた後、基希へ電話をかけた。電話が繋がるや否や「お前、どこいんだよ?!テラス探し回ってんのにいねーし・・・それとも、なんかあったのか?」心配そうに話す基希に謝りながら現在いる場所を伝えると「アプリで探す」とだけ言い、通話は切られ暫くすると言葉通りカップを持った基希が近づいてきた。
「すみません、知り合いに似た人がいたような気がして、思わず逃げちゃいまして・・・」
まさか“藤さんが私の所為で変な目で見られるのが嫌で・・・”とも言えず咄嗟に嘘を付きその場で作り笑顔を浮かべながら誤魔化した。
「・・・俺といるの見られるのそんなに嫌か?」
基希の言葉に顔を見上げると何となく悲し気な表情を浮かべる姿に史果は首を横に振った。
「いいって、無理しなくても・・・お前、俺みたいなタイプ嫌いだもんな」
自嘲しながら話す基希のジャケットの裾を掴み、更に首を大きく振った。
「確かに前は苦手でしたけど、今は・・・違うと思います」
史果は上目遣いで見上げると基希の表情が普段と違う顔付きに見え、心臓がギュッと掴まれる感覚に襲われた。基希の顔がゆっくりと近づくのを受け入れようとした時、近くから人の声が聞こえ我に返った史果は、基希から咄嗟に離れた。
「あっ、そういえばドリンクありがとうございました、いくらでした?あとで払いますねー。あー喉カラカラで、カップ貰いますね」
何もなかったかのように史果は振る舞い、乾いた口内に冷たいジュースが染み渡る様に潤っていった。
(どうしちゃったのよ、私っ!!)
自身の気持ちの少しの変化に戸惑いながら史果は自分を押し殺すかのように基希に笑顔を振りまいた。
「うぅ・・・、9時か・・・休みだし、もうちょっと寝よ」
史果は昨夜までの疲労がここでドッと押し寄せ、なかなかベッドから起き上がることができなかった。基希と絡むようになってから史果の生活は少しずつ変化していった。
元々話す機会がなかったのにまさかの“恋人宣言”をされたことで基希を狙っていた部署の女性同僚からはいじめとまではいかないが基希にバレない程度の地味な嫌がらせを受けたりされていた。噂が広まっているせいか他部署の女性社員たちからもジロジロ見られているような気になり神経が過敏になっていた。心身ともに疲れ果てていた中で史果にとって待ちに待った休日だった。
閉まっているカーテンの隙間からは陽が差し込み天気がいいことが窺えた。
(あと少し寝たら部屋の片づけして・・・お布団干して・・・洗濯して・・・読みかけの本読んで・・・)
頭の中で起きた時のことを考えながら史果はまた深い眠りにつこうとした時・・・。
ピンポーンッ、・・・ピンポンッ!ピンポンッ!ピンポンッ!
リリリリリリリ・・・
しばらくすると玄関のチャイムとスマホの着信音がけたたましく鳴り出し史果は、その音で一気に目が覚め飛び起き何事かと辺りを見渡した。
「えっ?!はっ!藤さんからだ」
まず着信元の確認をすると基希の名前がディスプレイに表示され、その間にも同時に玄関とスマホから呼び出し音が史果を襲っていた。
「も、もしもし、おはようございます」
「お前いつまで寝てんだよっ!」
「いや・・・すみません。今、ちょうど家に誰か来たみたいで、このままちょっと待ってもらえますか?」
史果はスマホを持ちながら玄関のドアを開けるとそこにはグレーのカットソーにネイビーのジャケットを羽織り足の長さが強調されるスリムパンツを穿きこなす意地悪な表情を浮かべた基希がスマホを耳にあてながら廊下で立っていた。
「・・・・・・・・・・」
「おいっ!閉めんなっ」
無言で開けたドアを閉めようとした時、基希が片足を挟みドアを閉めれなくしてしまった。その状態で力いっぱいドアを開けられズカズカと部屋の中へと入ってこられた。
「ちょっ、今日は休みですよ?!しかもなんで勝手に部屋入ってきてるんですか!!」
基希は無言のまま遠慮なく部屋まで入り、先ほどまで気持ちよく寝ていたベッドに腰を下ろした。
「折角いい天気なのにいつまで寝てんだよっ!もう9時過ぎてんぞ」
基希がカーテンを全開に開けると日差しが部屋いっぱいに降り注いできた。
「ほらっ、その寝ぐせでボサボサになった髪と頭、シャワー浴びてスッキリさせて来いよ」
急かすように追いやられ未だスッキリしない頭の中、史果は渋々簡単な着替えを持って浴室へと向かった。
シャワーを浴び終え、着替え脱衣所から出るとキッチンから空っぽの胃を刺激する美味しそうな匂いが漂い、部屋へ向かうと小さなテーブルには旅館で出るような朝食が並べられていた。
「おっ、出たな・・・って、髪乾かして来いよ。風邪引くぞ」
「あ、はい、って、あのー・・・これは一体」
「この前、酔い潰れたお前送った時、飲み物取るのに冷蔵庫開けたらロクなもん入ってねーのな。あんなんじゃ頭回んねーだろ・・・ってことで、昼飯でもと思ってたけど・・・まさか寝てるとは思ってなかったから朝飯になっちまった」
基希に再度髪を乾かすよう催促され乾かし終わる頃には茶碗にご飯が盛られていた。
「ほら、食え。俺も朝抜かしてたし序でに食うわ」
史果は基希が座る向かい側に腰を下ろし、ふと基希の前にある見慣れない茶碗などの食器に目をやった。
「いただき「あ、あの、この食器わざわざ持ってきたんですか?」
「そりゃそうだろ、もし佐伯が使ってたものとかあったら胸糞悪いしな。とりあえずこの食器はここに置いとくから」
基希が手を合わせていると史果に遮られ少し不機嫌そうな表情で説明した。今度は史果も一緒に手を合わせ遅い朝食を口にした。
「美味しい・・・このお味噌汁ってもしかして出汁取ったんですか?!」
「流石に時間ないと思って家から持ってきた・・・ってか、俺って凄くない?!顔も良くて金もあって料理も出来る、こんなスパダリどこ探してもいないだろ?」
鼻高々に自慢され、史果は無表情で応えることなくもくもくとご飯を口に運んでいた。
「・・・性格に難ありですが」
ボソっと呟くと頭頂部をチョップされた。
(・・・まぁ性格は置いといて、確かにパーフェクトなんだよな。あの笑顔の破壊力は確かに凄まじいと思う・・・にしても食べ方、いつ見ても綺麗だな)
幼少期からしっかり躾けられたのが分かるほど惚れ惚れするような所作で食事をする姿は基希に興味がなかった中で唯一史果が見惚れてしまったところだった。
「おいっ!何ボーっとしてんだよ、早く食って出かけるぞ」
「へっ?」
「昨日は・・・まぁ確かにやり過ぎたって反省してる、悪かった。だから今日はお詫びも兼ねてデートするから」
史果は目をパシパシと瞬きし、基希が言っている意味を全く理解できず思わず箸を手元から落としてしまった。
☆☆☆
「やっぱ実物のライオンは迫力あるけどあの顔洗うような仕草とかは猫みたいで可愛いな」
子供のように目を輝かせ、ガラス越しのライオンに基希は興奮隠さず燥ぎまくっていた。その隣で気まずそうな表情を浮かべ史果は軽く息を吐く。
食事を急かすように食べさせられ終わると今度は出かける準備をせっつかれた。史果は、基希のペースに巻き込まれ気が付くと電車で一時間程かけて動物園へと連れて来られた。
『初デートと言えば“水族館”か“動物園”だろ?距離的なこと考えて今日は動物園に行くから。なんかこうやって電車乗って出かけるなんて何年ぶりだろうなー』
“高校生の初デートか!”と突っ込みたくなるような基希の燥ぎように、振り回される史果は自身の“まったり休日”がガラガラと音を立てて崩れ去り無意識に顳顬を押さえた。
「史果、ほらっあのブラッザモンキーって部長に似てね?」
「あー確かに。あの木の上にいるのなんて妙に貫禄あって考え事してる時にそっくりかも」
二人で顔を見合わせ思わず吹き出し笑い合った。
(動物園なんて高校生以来だし、折角だから楽しも)
それからは園内マップを見ながら移動し様々な動物たちを二人で見て回った。休日で天気も良かったため周りは小さな子供連れの家族やカップルで溢れ、それに気づいた史果は照れくさくなり基希の歩くスピードから少し遅めに歩き距離を取った。
「もう疲れたのか?運動不足なんじゃねーの?」
基希は一瞬立ち止まり史果に呆れ顔を向け、そのまま史果の指の間と自分の指の間を絡ませるように手を繋ぎまた歩き出した。
「ちょっとこの繋ぎ方は・・・」
「周りもカップルでイチャついてるんだし、別に恥ずかしくないだろ」
繋いだ手や指先から基希の体温が伝わり、何故か心拍数が上昇し頬が紅潮していく。チラッと基希を見上げると基希もまた先ほどよりも頬に赤みがかってはいたが、史果はそれには気づかなかった。
「ちょっと休憩すっか」
歩き回りちょうど疲れが出始めた矢先、園内にあるカフェが見え、二人はそこで休憩すべく店内へと入った。店内はかなり広々とした空間で席数もかなり多く設置されてはいたが、やはり休みということもあって中は入園客で溢れていた。
「あっちのテラスの方、何席か空いてるしどっか先座って待ってて。俺、なんかテキトーに飲み物買ってくるわ」
史果は基希が指差す方を確認すると言われた席へ向かい基希が戻ってくるのを待った。陽も高くなり動くと汗ばむ陽気だが、ジッとしていると時折柔らかな風が心地よく史果の肌を擽った。
「ねー、あそこの人めちゃくちゃイケメンじゃない?」
「どれどれ?あっ、マジかっこいい♡ドリンクカップ二つ持ってるから一人なわけないかー。彼女と来てんだのかなー?やっぱめちゃくちゃ美人なんだろうなー」
「あんなイケメンと付き合う彼女なんだからモデル並みの女なんだよ。美男美女かー、いいなーあんな彼氏」
近くで二人組の女性たちの声が史果の耳にも入り視線を移すと基希が史果の姿を探すように辺りを見渡しながらテラスの方へと歩いてきた。
(いやいや、私なんかと一緒なのバレたら藤さんが変な目で見られちゃう)
史果は咄嗟に席を立ちテラスから抜けれる遊歩道へと早足で向かいしばらく歩いた後、基希へ電話をかけた。電話が繋がるや否や「お前、どこいんだよ?!テラス探し回ってんのにいねーし・・・それとも、なんかあったのか?」心配そうに話す基希に謝りながら現在いる場所を伝えると「アプリで探す」とだけ言い、通話は切られ暫くすると言葉通りカップを持った基希が近づいてきた。
「すみません、知り合いに似た人がいたような気がして、思わず逃げちゃいまして・・・」
まさか“藤さんが私の所為で変な目で見られるのが嫌で・・・”とも言えず咄嗟に嘘を付きその場で作り笑顔を浮かべながら誤魔化した。
「・・・俺といるの見られるのそんなに嫌か?」
基希の言葉に顔を見上げると何となく悲し気な表情を浮かべる姿に史果は首を横に振った。
「いいって、無理しなくても・・・お前、俺みたいなタイプ嫌いだもんな」
自嘲しながら話す基希のジャケットの裾を掴み、更に首を大きく振った。
「確かに前は苦手でしたけど、今は・・・違うと思います」
史果は上目遣いで見上げると基希の表情が普段と違う顔付きに見え、心臓がギュッと掴まれる感覚に襲われた。基希の顔がゆっくりと近づくのを受け入れようとした時、近くから人の声が聞こえ我に返った史果は、基希から咄嗟に離れた。
「あっ、そういえばドリンクありがとうございました、いくらでした?あとで払いますねー。あー喉カラカラで、カップ貰いますね」
何もなかったかのように史果は振る舞い、乾いた口内に冷たいジュースが染み渡る様に潤っていった。
(どうしちゃったのよ、私っ!!)
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