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第三十一話 ロリコン認定?

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 三人はキリナマイ森林を出て、町へ戻った。
目的地は、同じギルドであったため、会話を交わしていた。

「で、結局、先輩はロリコンなんですか?」
「結局って何? いきなり過ぎない?」

 マリの中で、ずっと引っかかっていた疑問。
それを今、発散しようとしていた。
キルスが、「うーん」と黙る。

(こうやって、ずっと悩んでいるふりをしよう......)
キルスなりの作戦が開始していた。
マリと一緒に、ナツも何故か、興味津々に答えを待つ。
いつまでも答えを出さないキルスを見る、マリの目は、ジト目になっていく。

「じゃあ、質問を変えます。私は恋愛対象内ですか?」
「なんだそれ!?」

 ツッコミ入れて、話を無くそうとするが、
マリのジト目に負けて、大人しく考え込む。
ナツは、「この二人、付き合ってるわけじゃないんだー」と、心の中で呟いた。

「いや、その質問は、関係なくないか?」
首を傾げて、キルスが言った。

「何でですか?」
「たしかに、マリはロリ枠に入るかもしれないけど、俺16歳だぞ。
二歳年下は、ロリコンじゃなくね?」
そう言うと、マリは首をひねる。

「私は、普通に恋愛対象であると?」
「年齢的には、な」
曖昧な返事でキルスは返す。

(だんだん、話が変わってきそうだ)
思わせぶりなキルスの発言は、話を変える事しか考えていなかったため、
無意識に出た言葉であり、特に他意は無かった。

 自分で聞いておいて、恥ずかしくなっているマリは、
顔を赤くして、「へー......へー......」と、繰り返している。
ナツが、キルスの横に立った。

「私もですか?」
ナツの飛び入り参加。ビクッと、マリが耳を傾けた。

「年齢的には、な」
マリと同じ回答。マリが「ですよねー」と、青空を見上げた。
そんな中、とうとうギルドへ到着した。

「あっ、シュガーさん!」
冒険者たちの中に紛れ込んでいる、町の案内人シュガー。
マリが真っ先に気が付いた。

「あぁ、さっきの二人......と、この子は?」
ナツは人見知りなのか、体を半分、キルスの体で隠した。
キルスは、ナツの背中を押して、半場強引に前に出す。

「たしかに黒い剣ですけど、探している人じゃなくて」
「違ったか。すまんな」
「いえいえ」と、キルスは横に手を振る。

「今日は、もう遅いから、明日も俺に相談してくれ。情報は集めておくから」
白く光った歯を見せて、胸元でサムズアップをつくる。
キルスとマリは、お礼を言って、受付へと向かった。



 町は、あっという間に暗くなった。
だが、眠らない町であるかのように、町道は賑わっている。
夜にしか現れない魔物などがいるからだ。
町を出て行く冒険者たちの背中を見て、キルスは応援の目を向けた。

「今日、泊まる所は、決まってますか?」
「まだ、だけど......」
「なら、私が紹介しますよ!」

 嬉しそうに、ナツが言った。
彼女としては、助けてくれたお礼が足りていないと、感じているからだ。
それと一年という滞在を通して、この町を人に紹介したいといった気持ちもあった。

「なんか、お決まりのパターンですね」
「あぁ、おきマリのパターンだな」
「ん? 何か今......?」
キルスは、マリの言いかけた事を完全にスルーして、ナツに付いて行く。
そして、宿屋では、お決まりの部屋決め、が始まった。

「マリさん、二人部屋どうですか?」
上級冒険者の多いこの町では、マリやナツぐらいの少女は少ない。
ナツは、もっと仲良くなりたいと、考えていた。
周りが大人ばかりの中、14歳の少女は、友達なんて居ないまま、
一年間も過ごしていたのだ。

「はい。いつも二人部屋なんで」
そんな気持ちを汲み取ることなく、マリは当然のように言った。

「い、いつも?」
一人で、大きな二人部屋を使うという散財をするイメージが無いマリであるため、
ナツは、すぐに意味を理解した。

「いつも、お二人は同じ部屋で寝ていると?」
「まさか!」と言ったように、ナツは問う。
マリは、これまた当然のように答えた。

「はい、そうですけど......」
「なっ! 卑猥!」
大きな声であったため、ロビーからの視線が集まり始めた。
受付がナツを睨む。「あっ!」と、ナツは口を両手で抑えた。

「付き合ってもいない男女が、
同じベットで無いとはいえ、同じ部屋で寝るのは、ダメですよ」
赤面しているナツは、小声でそう言った。
それに対して、マリの返答は、こうだ。

「同じベットだったこともありますよ」
ナツは口をポカンと開けたまま固まった。
もちろん、ベットが一つしか無かったなんて事を思いつくはずもなく、
勘違いした情報として伝わっている。

「私が知らぬ間に、若者は......」
「えっと……同い年ですよ?」

 マリのツッコミによって、ナツは、とうとうオーバーヒートした。
心なしか、ボンッと聞こえて、煙が見える。
固まっているナツは、少しずつ角度を変えて......

「って、ナツさん! 大丈夫ですか!?」
倒れそうなところを何とか、マリが止めた。
マリが、キルスに助けを求めようと、顔を向けると、必死に笑いをこらえていた。
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