スライム倒し続けても、レベルはあまり上がらなかった件

ろどは楓に

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第三十話 シンコウキダケ

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 時が止まってしまったかのように、誰もが動かなかった。
どこからか吹いてきた風により、木が揺れる事で、
時の流れを認識できる。といった、状況であった。

「せ、先輩?」
呼びとめるような寂しい声。
魔物を倒す事は冒険者として当たり前であるのに、だ。
それでも、どこか遠くに行ってしまいそうな、そんな予感がマリの前を過った。

「ん? 何だ?」
振り返ったキルスは、特徴のない、いつもの少年。
「気のせい......?」と小さく呟き、マリはその場に立ちつくす。
目に見える風が吹き、風音を掻き立てた。

「あ、あの!」
その場に居た少女が声を上げる。二人は、そちらを見る。

「お助け、ありがとうございました」
彼女がお礼を言うと同時に、キルスとマリは、手に持っていた黒剣を目にした。
お互い目を合わせて、キルスは首を横に振ると、
マリが「ふぅー」と、胸を撫でおろした。

「けがは無いかい?」
懐近くまで来た、マリの頭にポンっと手を置いて、キルスは尋ねる。
改めて観察すると、マリより少し大きい155センチメートルくらいの身長。
長く綺麗な銀髪であり、整った容姿をしていた。

「い、いえ! 大丈夫です!」
元気を取り戻したように、彼女は答えた。マリがズケズケと前に出る。
頭の上に手を合わせて、地面と平行に、彼女の頭まで持っていった。
その手は、彼女のおでこで、止まった。数秒の沈黙が続く。

「え、えっと、おいくつですか?」
「はい。十四歳です」

 「なっ」と、マリはビクッとした。
壊れかけの機械のように、キルスの方へ振り向く。
「マリと同い年かー」何て、のんきな事を思っていたキルスは、
震えているマリの蔑んだような視線に、「悔しいのか?」と、小首を傾げた。

「ロ、ロリコン......。」
「何で!?」
唐突な、キルスのロリコン認定。

「異世界に来たら、最強、無双、ハーレム......。
助けた女性は必ず惚れる......。」
マリが小さく言いだしたのは、キルスが教えた異世界テンプレ。
ヒロインは、ロリ、普通、ドM、と言った具合であった。
自身がロリの区分だと思っていたマリからすれば、
推察して、ロリコン認定に至った。

「ロリコンなんですか?」
「だから何で!?」
助けたその少女からも、聞かれる始末。
誤解か、どうかは、キルス本人しか分からないにしても、
混乱していたマリに、彼は必死に弁明をし続けた。



「私は、プロフェント・ナッツラー。
ナッツは、いささか恥ずかしいので、ナツと呼んでください」
一息ついた頃。銀髪少女の自己紹介が始まった。

(この世界の人って、あだ名で呼ぶのが基本なのか)
マリも、実名はマリエルである事を、キルスは思い返す。

「私がマリで、こちらがキルスです」
二人分の自己紹介を、マリがした。

「はい。改めて、キルスさん、先ほどはありがとうございました」
ナツが一礼をする。頭が下がると、銀色の髪が流れた。
マリに劣らず、つやのある色彩で、木漏れ日でも、キラキラと輝く。
その光景にキルスは顔を少し赤らめて、目を奪われる。
マリが、「髪フェチ......」と小さくこぼした。

「それより、何で戦わなかったの?」
一拍置いて、キルスは、ナツの右手に握られた黒剣をツンツンと指を差す。
太陽の光によってギランと光り、ただの安い剣ではない事は一目で分かる。

「わ、わたし、怖がりなので......」
もじもじ、と申し訳なさそうにナツは言う。
「じゃあ、何故に冒険者?」と、強く言えるわけもなく、キルスは作り笑いをした。

「まぁ、森の外まで送りますよ」
それでも危なっかしい少女を一人置いていくわけにもいかないのが、彼の性格。
だが、ナツは断り、横に首を振る。

「あと、もう少しなんです!」
「もう少し?」
「はい! 付いてきてください!」

 ナツは、森の中へと歩き出す。
当てもなく歩いている様に見えるが、ところどころで、
樹木についている獣のひっかき傷を確認しては、方向を少し変えて、進んでいく。

「こ、これは......」
高さは、周りと変わらずとも、太さが比べ物にならない。
直径十メートルもある大樹であった。
そして、周りに異常発生しているキノコ。シンコウキダケだ。

「これが、お礼です。私の物では無いですけど......沢山持って行ってください!」
地面に広がった丸い傘のキノコたち。
全て、ギルドに出せば、百万ルーラを超える量だ。

 キルスは、マリに肩をトントンと叩かれる。
顔を向けると、キルスが普段使っている袋を持っていた。
キルスが、鼻で笑って受け取る。ものの数分で、袋はパンパンに膨らんだ。

 「よっこいしょ!」と、袋をキルスが持ち上げる。
体に対しての、荷物の量が明らかに、不自然。
ナツは、ポカンと、佇んでいた。そんなキルスを見て、マリは、クスッと笑う。

「見慣れた姿になりましたね」
心当たりのあるキルスは、微苦笑した。
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