交わることのない二人

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番外編1

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 『やから、いっつも敬語で喋って来る子のタメ語ほど、可愛いもんはないですって!』



 事務所で突如始まった己の癖を暴露すると言う行為に、晴臣は耳を傾けながらも『ようわからんわ』と首を傾げていた。

 老若男女問わず受けのいい、端正な顔立ちに、すらっと伸びた背にガタイのいい体。


 極めつけには、天性の人たらしな性格から、晴臣はこれまでの人生で、自分から言い寄らずとも、自然と周りに人が集まり、常に彼女らしい相手がいたのだ。

 だが、晴臣は人たらしでありながら、人に興味がなかった。


 なので今まで多くの女性と付き合った事はあっても、本気になった事はなく、数々の女性を泣かして来た、何ともクズ野郎だった。

 そんな晴臣に、恋を知ってもらおうと言う目的で、始まった若月組の皆さんの恋愛トークはいつしか、己の癖を暴露する場となり、高良の熱弁に他の組員たちは『分かる』『ええ趣味しとる』と腕を組み頷いている。


 そんな中、晴臣だけには刺さっておらず『どう喋ろうが一緒やろ』と言うのだった。



 『まじで言うてるんですか!?』

 『こんなんがモテるとかほんま、訳分からんわ』



 組員らのブーイングに『え~……そんなに?』と眉を顰める晴臣。



 『酔った子が、タメ語で甘えて来たらやばいでしょ!?』

 『晴臣ぃ~って甘えられんねんで?』

 『別に、何とも』



 そう言う晴臣に、組の皆さんは『こいつ、まじか』と『糖分の取りすぎて頭イカれてんのちゃうか』と批判する。



 『この良さが理解できひんとか晴臣お前、損してんで!』



 そうは言われるも、別にどうでもいいので、損はせんやろと思っていた晴臣。

 それからしばらく経ち、晴臣にもとうとう春がやって来、菖蒲と言う10歳年下の恋人ができたのだったが……。



 「晴臣さ~ん」



 菖蒲お気に入りの焼肉屋さんへと、やって来ていた晴臣。

 菖蒲はお酒が入り何処か上機嫌だ。

 ちなみに、車を運転するので晴臣はお酒を飲んでいない。


 名前を呼ぶ菖蒲に晴臣は「どうしたん?」と聞くと、菖蒲は「呼んだだけ~」と笑みを浮かべる。

 そんな菖蒲に一瞬固まるも、晴臣は「菖蒲くん、お酒飲みすぎちゃう。水貰おうか」と言う。


 すると菖蒲はまた「ねぇねぇ、晴臣さん」と名前を呼ぶ。

 晴臣は「どうしたん? 菖蒲くん」ともう一度聞くと、菖蒲は目をとろんとさせ、甘えたように言うのだった。



 「僕、晴臣さんのことめっちゃ好き。世界で一番好き」



 そう上機嫌に笑う菖蒲を見た瞬間、晴臣の動きは止まる。

 そんな晴臣の頭の中では、ありとあらゆる宇宙の摂理について語られる。


 何も言わずにいきなり動きが止まった晴臣に驚く菖蒲は「晴臣さん? 大丈夫?」と心配そうに言うも、晴臣は「大丈夫大丈夫。ちょっと宇宙の摂理について考えてただけやから……」と言う。

 そんな晴臣を不思議そうに見つめ首を傾げる菖蒲。


 あんだけ、あいつらの言う事否定したけど……最っ高やわタメ語……。



 晴臣の新たな扉が開いた瞬間だった。
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