竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

文字の大きさ
5 / 90

04

しおりを挟む

——……………………暖かい……?


なんだろう、これ。
感じたことない暖かみだ……。
ふわふわして、気持ちがいい。心が休まる。

……夢…………?

そうだったら、いつぶりに見るんだろうか。
夢なんて、何十年、何百年も見ていなかったのに。

これ、は…………父上……か?

俺と同じ髪色の、優しい老紳士は、きっと父上だ。

父上が生きていた頃の、夢か?

……あぁ…………あの人が亡くなって、もう百年は経つのか……。

頭を、撫でてくれる父上の顔は、とても優しい……。
こんな顔、もう二度と見れないと思っていたのに。


『……——ルメア。よぉく聞いて』


父上の声が、頭に響く。
あぁ。俺の好きな、声だ……。

『お前は私の跡を継いで、十四代目竜王となるんだ』

この頃は、全く興味がなかった。
父上がやっていた『竜王』としての仕事も、その役職自体も。


『……竜王になることは、決まっているんだ。だから、ルメア…………——』

それは、聞いたことがある。
女神〈クリスタ・ガリュー〉の天空術てんくうじゅつで造られた魔法石フィーネシスで未来を見ることが出来る、と。

きっとそれで、父上は俺の未来を見たんだろう。

『約束を、してくれるか……?』

なんの『約束』だろう。

……あれ、そもそも、こんな会話したことあったっけ。
俺の記憶には、こんな映像はない。



『…………——————』


待って、何も聞こえないよ。
父上。

ねぇ待って。

俺を置いていかないで下さい、父上。

教えて、俺の未来は、何だったのですか?


手を伸ばしても、父上の姿は薄くなっていく。
——届かない。

置いていかれるのは、もう……。


——嫌なんだっ!!


✩.*˚✩.*˚✩.*˚


「——ッ!!!!」

ガバッと勢いよく身体を起こした、金色の髪に赤い瞳を持つ青年は、自分の置かれた状況を詮索しようとした。
——なん……っ、だ、ここ…………
見知らぬ場所だ。
どこなんだ、ここは。

細身の青年——十四代目竜王の〈ルメア〉は、ぐるりと部屋を見渡した。
——部屋、だよな……?

なぜ自分がこんな所にいるのかが全く分からない。
あの後、自分がどうなったのか、思い出せない。
ルメアは顎に手を置いて、頭を回転させた。

「…………死んで、ないよな……」
ペタペタと自分の身体を触るが、外見はどうもない。
多分、内蔵も無事だろう。
「生きている……よな」
——森に落ちた後、俺は気を……失って……

息が出来なくて、苦しかった。
だから、ルメアは意識を手放してしまった。

——その後だ

問題は、ルメアが意識を手放してしまった、その後だ。

「記憶……」

ルメアにただ記憶がないだけなのかも、知れない。
「は、はは…………。わけわかんねぇ……」
くしゃっ、とルメアは自分の前髪を握る。
はぁ、とため息をついたルメアは、自分の膝を抱えて、膝の間に顔を埋めた。

「……帰りてぇ…………」


早く、天空に戻りたい。

そう思った瞬間、ガチャッ、と扉が開く音がルメアの耳に届いた。


「あれ。目が覚めたんだな」


……声が似ていた。

ルメアが信じていた、一番大切な人の声にそっくりだった。
「……っ、」
「身体は平気か? 驚いたよ。森の真ん中で倒れてたから」
クスクス笑いながら、薄紫色の髪をした青年はルメアに近付いてくる。

「食べれる?」

ルメアの目の前に差し出された物は、小さな食パンと温かいスープだった。

「少しでも食べねぇと、元気出ないぞ?」


「…………頂こう……」

人間の食べる物は、食べたくなかった。
でもここで食べないと、この青年に申し訳ないと思い、ルメアは渋々受け取った。
「……美味いだろ?」
一口、ルメアが食パンを食べると、青年はニコニコしながら問いかけてきた。

これは、『美味い』と、言うのだろうか。


——味が分からない

やはり、人間の食べる食材は口に合わない。
ルメアは、顔に出さないように堪える。


「……まぁまぁ……だな」


そして、『不味い』とも言えないから、ルメアの口からは微妙な言葉が紡がれた。

その言葉を聞いた青年は、一瞬ポカンとしていた。
だが、すぐにケラケラと笑いだした。
「あっははっ! 口に合わなかったか? 悪かったな」
あまり気にしていないのか、青年は笑い続ける。
「そこまで、笑うことなのか?」
ルメアはスープを口に運びながら、首を傾げた。

「っ、くっ……ふふっ、ふっはは…………っ、いや、ごめん」
お腹を抱えてまで笑うことなのだろうか、とルメアは心の中でつぶやく。
どこで、笑いのツボが刺激されたのかが全く分からない。

——変な味がする……

スープをゴクリと飲み込んで、またルメアは首を傾げる。

「そういえば……」
ひとしきり笑った青年は、思い出したように手を合わせた。
「自己紹介してなかったな」

またニッコリ笑って、ルメアが座っているベッドに青年も座る。

——せまい…………
きっとこのベッドは、青年の物だろうが男二人が入ると、せまい。


「俺は、狗霧李いぬぎり南波斗って言うんだ。よろしく」


——そうか、コイツは人間だ……

忘れていた。確かにそうだ。
自分の名前と大きく違う名前は、ルメアを少し動揺させた。


「俺はルメア・ルイ・レヴェナントだ」


一応名前を伝えたが、何言ってんだ、こいつ、みたいな顔をしていた。
「人間じゃ、ないのか?」

——聞くことがそれか……
呆れてしまう。
ルメアはため息をついて、説明をすることにした。


——厄介事に巻き込まれても面倒だ……







しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...