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しおりを挟む南波斗の家に住まわせてもらってから、もうすでに二ヶ月は経った。
その間、ルメアは何度も何度も天空との交信を試みたが、やはり『交信不能』の文字が出てくる。
ルメアの竜王としての能力も、弱まってきているのが分かる。
全く持って、最悪の自体だ。
「ルメアー。ちょっと、こっち来て」
頭を抱えて唸っていると、少し離れた場所にいた南波斗に呼ばれた。
「なんだ?」
この二ヶ月間で、ずいぶん南波斗とは仲良くなった。
ルメアは、南波斗にだけ心を開いているようだった。
時々、南波斗に連れられて街へ行くが、終始ルメアは口を開かない。
地上で唯一、心が休まるのは、多分南波斗と一緒にいる時だけだろう、と思っている。
「南波斗?」
「いいから、早く!」
南波斗に急かされて、ルメアは駆け足で近付く。
用事はなんだろう、と頭の中で考えていると、ルメアは何かにつまづいてしまった。
——は……?
予想していなかったことで、ルメアは行動ができない。
そのまま身体が前のめりになっていく。
——こういうの、どっかで起きなかったか?
自分でも驚くほど冷静だった。
「っ、ルメア!」
叫ぶような声がルメアの両耳を穿つ。
ドサッとした音がして、ルメアは目を瞑った。
——……痛く、ない?
ゆっくりと目を開けると、ルメアは南波斗の腕の中にいた。
「!?」
「っあー、焦ったぁ……」
ルメアの身体を強く抱きしめた状態で、南波斗は大きく息を吐いた。
状況を理解していないルメアは、頭上にクエスチョンマークが出続けていた。
「大丈夫か?」
優しく声をかけられて、ルメアの身体はビクッと跳ねる。
「っ……あ、あぁ。平気だ……」
「よかった。ルメアが無事でよかった」
南波斗のゴツゴツした大きな手が、ルメアの頭に載る。
——?
よく分からない顔で、南波斗を見るが、彼は笑っているだけで感情が読めない。
「よしよし」
「……」
——馬鹿にしているのか、コイツ……
南波斗の手は、ルメアのふわふわの頭を優しく撫で始めた。
——久しぶりに撫でられた
だが、なんだかむず痒い気持ちになってくる。
ルメアは身動ぎをして、南波斗の手から逃れようとする。
「逃げんなって」
グイッと腰を抱き寄せられて、また南波斗と密着する。
「いい加減に…………」
「もうちょっと」
全然ルメアの話を聞いてくれない。
「……俺をガキ扱いしないでくれるか?」
「そんなつもりねぇけど?」
——じゃあなんなんだ……
南波斗の感情が分からない。
ルメアはまたため息を吐いて、南波斗に身体を預けた。
きっと抵抗しても、逃げられない。
竜王としての力も弱ってきているし、きっと南波斗と真剣勝負をしたらルメアは負ける。
「ルメアは……細いなぁ……」
「……殺すぞ……」
「冗談だって」
まだ頭を撫で続けている南波斗が、ケラケラ笑いながら話を振る。
地上でのルメアの姿は、外見は人間と同じ。
天空でルメアの地上での姿を、『幼少期』と言う。
幼少期の身体は、『成長期』——大人の姿になる——の頃より愕然と弱い。
だから肉付きもなくなる。
「……掴みやすいな……」
ボソッと何かを呟いた南波斗だが、ルメアには聞き取れなかった。
「何か、言ったか?」
ルメアが声をかけると、南波斗は弾かれたように顔を上げた。
「なんでも……ない」
言葉を詰まらせる南波斗に、ルメアは違和感を覚えるが、そのまま通り過ぎた。
「……離せ」
「えー? もうちょっとだけ」
さっきからそう言って、全然離してくれないだろう。
そうやって言ってやりたいが、ギリギリの所で言葉を飲み込んだ。
「…………何が、望みだ?」
突然言い放った言葉は、南波斗の手を止める。
「ん?」
首を傾げて、南波斗はルメアの顔を見つめる。
「……俺に何を望んでいるんだ、お前は」
きっとルメアに何かして欲しいから、こうして恩を売っているのだろう。
そう考えたら、勝手にあの言葉がルメアの口から紡がれた。
「望み……かぁ」
南波斗はルメアの肩に顎を置いて、モゴモゴと喋る。
「なんでもいいぞ」
「……なんでも?」
ピクリ、とルメアの言葉に素早く反応する南波斗。
——なぜその言葉に、過敏に反応するんだ?
「あぁ」
ルメアは目を閉じて、南波斗の言葉を待つ。
どんな言葉が返ってくるだろう。
さすがのルメアも、予想が出来ない。
「じゃあ………………」
低い声で、南波斗はルメアの耳に顔を寄せる。
薄紫色の髪の毛が、ルメアの頬に当たって、くすぐったい。
「っ…………」
南波斗の大きな手が、ルメアの頬を撫でる。
またもビクッとルメアの身体は反応する。
「——抱かせて」
——は?
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