竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

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——しまった……………………
気が付いたら声に出ていた。
言ってからでは、もう遅い。取り返しがつかないことを言ってしまった。
ルメアは自分の言ったことを振り返る。
「っ……あ」
言い直そう。
そう考えても、言葉が見つからない。

『今のは違うんだ』?
『言い間違えた』?

そんなこと言っても、きっとすぐには信じてくれないだろう。
目の前でポカンとしている南波斗は、ルメアの心を抉っていく。

「…………そっかぁ」


「っ…………」

ビクッとルメアの肩が震える。
次に南波斗は何を言うのか、ただそれが少し怖かった。

「まぁ、いいんじゃね?」

「は?」

衝撃の言葉で、ルメアは顔をパッと上げる。
「人間が嫌いでもいいと思うぜ」
「なっ…………」


「んで、その中で俺だけを好きになってくれりゃいいから」


「……あ、あぁ…………、ありがとう……」

予想外すぎる言葉に、ルメアの肩から力が抜ける。
「なぁなぁ、ルメア」
南波斗はまた、ずいっ、とルメアに身体を近付ける。
「俺さ、ルメアと仲良くなりたいんだ」
——あぁ……そう……
別に、ルメアは南波斗とは仲良くしてもいいと思っている。
どうやら、南波斗は悪い奴ではなさそうだし。


「だからここで一緒に住もうぜ」



——…………ん? ん?

「は? 聞き間違いか……?」

「俺と、一緒に、住もう!」

いやいや、なんでそうなる。
確かにルメアは、地上で住む場所はない。
……だが、そこらの街の宿屋で泊まればよくないか?

「だめ?」
「ぅぐ…………っ」
——その顔は……
南波斗は、眉を下げてルメアの顔を覗き込む。

その表情は、自分の双子の弟がよくする顔に似ていた。

「………………分かった……」

渋々ルメアは首を縦に振った。
すると南波斗は、ぱああっ、と顔が明るくなってルメアに抱きついた。
「………………おい。離れろ」
「やった! ありがとう、ルメア!」

「俺の、人間嫌いが増すだろう?」

抱きつかれたまま、ルメアはゲッソリした顔で、南波斗の頭を叩く。
「う……。ごめん」
名残惜しそうに南波斗は、ルメアから離れた。

「……では、お世話になる」
「おう!」
「…………よろしくな、南波斗」
ルメアが南波斗の名前を呼ぶと、彼はすごく嬉しそうにした。
なぜそんなに喜んでいるのか、ルメアには分からなかった。
でも、名前を呼ぶだけでこんなに、喜んでくれるのなら、呼んでやろうとルメアは思った。


——……どうにかして、帰る方法を探さないと

まずはそれが問題だ。
どうにかして天空に帰らないと。
「あぁ、そうだ! ルメア、こっち来て」
ベッドから降りた南波斗は、玄関付近でルメアの名を呼ぶ。
「どうした?」
「ねぇ、これ見て」
ちょいちょい、と手招きをされる。
南波斗がしゃがみこんでいるから、ルメアも同じようにしてしゃがむ。

「ルメアにあげようと思ったんだ」

「……?」
彼の手には、チョーカーらしき物が握られていた。
「これを、俺に?」
「似合うと思ってね」
チョーカーは、銀色で統一されていて中心には可愛らしい星型の飾りがあった。
「今?」
「今着けて」
スっ、と静かにルメアに差し出す南波斗。

「……似合わんと思うがな……」

そう言いながらも、ルメアはチョーカーを手に取って首に着ける。
カチャッ、と音を鳴らして南波斗が購入したチョーカーはルメアの首に収まる。

ルメアの細い首に、自分が買ったチョーカーが装着されたのを見て、南波斗は笑った。
——多分、何も知らないんだろうなぁ……

男が、誰かに首まわりの物をプレゼントすることは、理由がある。



『君は、俺の物』



そういう理由があることも知らずに、ルメアはチョーカーを手で触る。
「……違和感…………」
ポツリ、とルメアはため息混じりに呟く。
南波斗は喉を鳴らして、ルメアの背中をバシバシと叩いた。
強い叩きで、ルメアの身体は前に動く。
「……痛い」
絶対にルメアがあの『竜王』だってことを忘れている。
「一応……竜王なんだが…………」
「ん? 知ってるよ?」
何言ってるの、みたいな顔でルメアを覗き込む。
ルメアはまたため息を吐いて立ち上がった。

「どこ行くんだ?」
「……行く場所はないに決まっているだろう」

——……あ…………

ルメアは思い出したように声を出して、窓を全開にする。
「ちょっ、なに!?」
慌てた様子で、南波斗がルメアの肩を掴む。
「少しだけ。何もしないさ」
宥めるように南波斗に話しかける。

ルメアがしたいことは、天空との交信サトルトだ。
四龍の誰かでも、ルメアの城——『竜王城りゅうおうじょう』にいれば、交信は可能になる。
だが、そもそも天空までルメアの意思が届くのかどうかが、怪しい。

四龍の中で、一番交信がしやすいのが『白龍』だ。

だが彼は仕事で忙しいから、竜王城にいることも少ない。
運がなければ、白龍と繋がることは出来ないだろう。
——頼む……繋がれ…………ッ

「……何してんの?」
南波斗は不思議そうに、ルメアに声をかけるが、彼から返事は返ってこない。
「……忙しそうだなぁ…………」
諦めたのか、南波斗は静かにルメアから離れていった。

——……少し、厳しいか……?

やはり距離があるから、交信不能を起こしているのだろうか。
もし出来ないなら、視界に『交信不能』としっかり出てくるはずだ。
その文字が、まだ出てこない。

——あと、少しなんだ…………っ

祈りながら、ルメアはまた強く意思を飛ばす。



だが結局、五分ほど粘ってみても『交信不能』の文字が出てきてしまった。

——やはり、ダメか……

天空と地上ではかなりの距離がある。
だから、さすがに届かなかった。

それが分かると、ルメアはガックリと肩を落とした。


「あー……っ!」


「っ!?」

ビクッと、遠くにいた南波斗が飛び跳ねる。

ルメアの悲鳴は、南波斗の家に響いた。














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