竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

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14(黄龍編)

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オレたちの主——竜王〈ルメア〉様は、とても偉大な方だ。

いつもオレたち、四龍を導いてくれる。

オレはルメア様が大好きだ。



「ルメア様……?」


過去に一度だけ、ルメア様の部屋に入れてもらったことがある。
どうして部屋に入れてもらえたのかは、今でも分からない。

ルメア様の部屋は、とても綺麗で清潔感が溢れ出ていた。

「お茶を淹れよう」

優しく笑って、オレを迎え入れてくれるルメア様。
やはり、優しい人だ。

「ありがとうございます、ルメア様」

ルメア様が淹れてくれた紅茶は、今までで一番美味しいと感じた。
ルメア様には弟がいるが、どうやら彼とは一緒の部屋ではないそうだ。
「同じ部屋には住んでないんですね」
「ん? ああ、弟か?」
「はい」
「そうだな。俺が部屋を荒らすから、嫌なんだそうだ」
ルメア様は眉間を押さえてオレに呟く。
「だから、部屋は分けられているんだ」
「そうだったんスね……」

ゴクッと紅茶を喉に通す。

「……〈ヤミ〉はどうだ?」

「っえ……?」

突然、ルメア様から話を振られてオレは驚いてルメア様を見つめてしまう。

「部屋のことだよ」

「あっ……。オレの部屋は汚いです。整理整頓が苦手で……」

こんな話、普段は恥ずかしくて自分からは話さないのに。
ルメア様の声は、癒される。
「そうか」

「ルメア様のお部屋は、とても綺麗ですね……!」
羨ましい、と言おうとしたらルメア様に遮られた。



「俺と、お揃いだな」




その、言い方はズルい。

オレは顔を隠すように、紅茶を飲み干す。

「ん? 飲み切ったか。ほら、コップ貸してごらん」
ルメア様は、オレの様子にすぐ気付いて紅茶を淹れてくれた。
「あ、すいません……」
「構わないよ。普段からも話しかけてくれて構わないよ、ヤミ」


オレの名前がこんなにもキラキラ光って聞こえるのは、初めてだ。

ルメア様の声は透き通っていて、いつまででも聞いていられる。


「はい」
「またいつでも部屋においで、ヤミ」

招待されたオレは内心、心が舞い踊るのを抑えながらお礼を言った。


✩.*˚✩.*˚✩.*˚

オレは、ルメア様の部屋を出てから、自分の部屋に戻って苦手だった整理整頓をやってみようと思った。
きっと、あそこまで綺麗にはならない。

でも、やってみる価値はある。



片付けにはかなり時間がかかったが、前よりかは綺麗になった。

「これも……、ルメア様のおかげかな?」

綺麗になった自分の部屋を見て、オレは自分でも驚く。
「ははっ…………」




色んな所で、オレはルメア様にお世話になっている。
最近、それをよく思い知らされる。

仕事でも、私生活でも助けられている。


だから、どんどんルメア様への信頼度が増えていくし、大好きになってくる。

ルメア様の弟殿——ケルラ殿とも、仲良くなることが出来た。
これも全部、ルメア様のおかげ。



そんな感じで、楽しく竜王城で暮らしていたのに。



「は……?」


ある日突然、ルメア様は竜王城に戻ってこなくなった。
女神に呼び出された後から、戻ってこない。

そのことは、オレの心に、深く突き刺さった。
どうしてかは分からない。

「どうして……っ!?」

「落ち着いて、グレル。みんな混乱しているから」
いつもとは違う竜王城だから、四龍もケルラ殿も、神官たちも混乱していた。

パニックを起こしているオレの肩に手を置いたのは、四龍が一人。


白龍だった。


「私も困っているんだ。誰かがパニックを起こせば、それは他人に遺伝する」


さすがの冷静さで、辺りを落ち着かせる。
「とりあえず、色々な可能性を考えて行動しよう」
「でも、どこに行ったか分からないんだぜ?」
白龍——シロの言い分に重ねるように、黒龍が話す。

「四龍で手分けをしよう」
「……そうだな」
黒龍——クロは、納得したのか大人しく引き下がった。
こういう所は、天然というか……。

「おれはまだ仕事が残っているから、まずはそれを終わらせる」

次に口を開いたのは、緑龍だった。


緑龍——オルは四龍のまとめ役だ。

「分かった。早く終わるように、私も共に行こう」
「ありがとう、シロ」

どうやらシロとオルが協力して、仕事を早く終わらせるらしい。


「じゃあ、俺は地上に向かうぜ。そこは俺の仕事場でもあるからな」

クロが手を挙げて、自分の向かう場所を言う。

「あー……オレはどこでもいいや……」

行きたい場所なんて、今は分からない。
女神城に行こうにもなぜか足が竦んで、動けなくなる。

「分かった。じゃあ、グレルはここで待機しててくれ」
「了解」

「では、各々何か情報を掴んだら連絡をするように」
オルの声で、全員がシャキ、とする。



「——解散!」



彼の掛け声で、四龍たちはバラバラになった。

















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