竜王の俺が、クソ女神に地上に突き落とされました

栞遠

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57(夢の中)

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また、身体が動かない。
けれど、この感覚には覚えがある。

こういう時、必ずルメアの父上が出てくるのだ。

『正解だ、ルメア』


ほら、声がした。

『よく分かったな』

そりゃあ、父上の息子だから、分かるに決まっている。
上を見ると、案の定父上が腕を組んで立っていた。
『さすが、我が息子だ』
父上が俺の頭に手を置く。
嬉しくなって、ついつい俺の頬が緩む。

『もう分かっていると思うが……』

と、父上が真剣な顔になって俺を見つめた。

父上が何を言いたいのか、俺はしっかりと分かる。
多分、完成したのか、または失敗してしまったのか。


どちらかだろう。


父上は一呼吸置いて、話し出す。


『結論的に言うと、彼に術を施すのは出来た』


そうか、出来たのか!
あぁ、とても嬉しい。こんなにも嬉しい。
『だが、一つだけ問題が起きた』

ん? 問題?
けれど今は、その問題が小さいものに見える。
……いや、聞こえる、が正解か?


『彼は天空で生きられるようにはなった』


それはいい事ではないか。



『けれどそれは、なのだ』



…………禁忌?

確かに、世界には約五つの『禁忌の術』が存在している。

一つは、『不老不死マグリア』と呼ばれる、それ相応の対価を支払って、永遠の命を授かる禁忌。

二つ目は、『合成生物キメラ』を作り出すこと。

三つ目は、『人体実験ルドゥネル』。
生身の人間を使って、「悪魔」を召喚させる、という禁忌。

四つ目は、『限界突破オーバー・ミュート』。
自分の身体の限界を、禁忌を使って突破させるという技。
最終的にその禁忌の力に負けて、身体が崩壊する。

そして最後。


五つ目は、あまり知られていない、不思議に包まれた禁忌の術。


生命維持グリュゲラ・アーズ』。


そう呼ばれている、一番危険で恐ろしい技。
術者の身体を徐々にむしばんでいき、細胞の全てを死滅させる。

誰もこの禁忌を侵したことはない。


まさか——っ。


『そのまさか、だよ』

父上は困ったような顔をして、俺を見つめる。
なんで?

どうしてそこまで……してくれるの……?

『なんでって……。——私の可愛いルメアの、彼氏だからだよ』


父上は、俺を抱きしめようと両腕を伸ばす。

けれど俺には、抱きしめられている、という感覚がない。

夢だからかな?

『私はもう死んでいるから、大丈夫』

それでも俺は嫌です。
父上が禁忌を侵してまで、俺は天空には戻りたくない。

『彼氏と一緒に行くためには、こうするしかなかったんだよ?』

俺をなだめるように、父上は話す。

……もちろん、俺は嬉しい。


南波斗と離れるのも絶対嫌だし、かと言って天空に戻れないのも嫌だ。

けれど……俺たちのために、父上が傷付くのは、もっと嫌だ。


『ルメアは優しいな。……だが、もう私のことは心配するな』


厳しい言葉に、俺はビクリ、とする。
夢の中なのに……怖いと感じるのは、おかしいだろうか?



『前だけを向け。自分の道を進め』




——あぁ、昔……父上に聞いた言葉だ。


『このことは、お前が心配することじゃない』


ポンッと、また俺の頭に手を置いた父上は、乱暴に頭を撫でる。

『もう、天空に戻るといい』


もうすぐに戻れるのか?


『あぁ。お前の力は、完全に戻っているから、簡単に帰れるよ』


そう……か。
だったら、早く準備しないとダメだな。


『今度こそ、お別れだルメア。ありがとう』


すると突然、父上が感謝を俺に伝えた。

え? 何を言っているんだ、父上は……。

『お前の夢の中に来れるのは、今日が最後だ』

もう、こうやって会えないってことか?
『そうなるね』
そんな……ッ!

どうして? なんで?


『またな、ルメア』


会えない理由を言わず、父上は勝手に消えていく。

そんな、待って……。
まだ行かないでください、父上!

俺は、まだ話したいことがたくさんあるんだ!


『ありがとう。楽しかったよ、ルメア』


手を伸ばしたいけど、忌々しいことに身体は動かない。

消えてしまう、本当に会えなくなる。

嫌だ、嫌だ!

まだ行かないで!


嫌だ、父上!!!





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