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無能と呼ばれる女勇者だけの勇者パーティー(パーティーじゃない)
あーはいはい。このパターンね
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九階へと続く階段を登る。
ネグレリアのいる城の中は階層を上がれば上がるほど暗くなっていったが、女神の加護の一つ、五感強化のお陰で、明かりがなくても進めるので問題ない。
問題があるとすれば、一瞬だけ俺が感じた、人の気配。
しかも、ただの人間じゃない。
女神の加護持ちだ。
まあ……麗翠の女神の緑の敵探知に引っかからなかったってことは、俺達の敵ではないのかもしれない。
でも……不気味なんだよな……なんか。
「あっ、仁。もうすぐ階段終わるよ。……サーチ、オプティマルルート。……えっ?」
九階にいる敵の探知と十階への最適ルートの案内のための魔法を使った麗翠が、何か引っかかることがあったのか、驚いている。
「どうした? 敵が大量にでもいたか?」
「……その逆、一匹……いや一人しかいないの。……まさか、ネグレリア?」
「おおっと、早くも登場かよ。最上階で見ていられなくなったか? ネグレリア・ワームを通して、俺達のことは見えているはずだからな」
ネグレリア・ワームが見ている景色は、魔王軍幹部ネグレリアに鮮明な映像として伝わる。
どうやって伝わっているのかは分からないが、ネグレリアはネグレリア・ワームを通して滅ぼそうとする対象の国の弱点や誰を殺せばその国はガタガタになるのかを調べてから、入念な計画を立てて、国を滅ぼす。
だからネグレリア・ワームに遭遇して、戦ってしまった時点で、ネグレリアには手の内がバレてしまうし、ネグレリアはこちらの弱点も見つける事が出来る。
(「ネグレリアと戦うことになれば、こちらの弱点ばかりを攻めてくるので、苦戦を強いられるでしょうね……。でも、勇者様なら大丈夫ですよ!」)
……短い間だったが、リベッネと一緒に戦ったのは、無駄ではなかったみたいだな。
彼女の言葉やアドバイスがあったからこそ、全ての力をさらけ出さずに、ネグレリア・ワームを全滅させるというネグレリアの攻略法を見つけることが出来た。
感謝しないとだし、セトロベイーナ王国へと戻ったら、一度彼女の墓に行かなければだな。
……さて、ネグレリアが十階で待っていられず、わざわざ九階に降りてきてまで俺達を待っているということは、俺達を倒す算段でも弾きだせたとネグレリアが勘違いしてくれたか?
だが、残念だったな。
まだこっちは、麗翠が強化魔法で本気を出してないぜ?
しかも、ネグレリアにとって、今の俺は相性が悪い。
「よし、麗翠。俺に麗翠が持っている最大の強化魔法をかけてくれ。ネグレリアを討伐してや……」
「あ……ごめん。九階にいるのは人だった」
「えぇ……」
なんだよ。
勘違いしていたのは俺らの方かよ。
カッコつけて一人で、本気出してないぜ? とか思っていた俺がバカみたいじゃん。
……って、人……だと?
「は……? 人って?」
「人間……だね。でもなんだろう……人間なのに、物凄く禍々しい力を感じる……何これ? 一瞬ネグレリアと勘違いしちゃったのも、九階にいる人間が放っているか、持っている禍々しい力のせい……?」
「あー……そっちのパターンですか」
麗翠の言葉で、すぐに俺は察した。
はいはい、九階にいるのは魔王軍に寝返った女神の加護持ちね。
人のくせに禍々しい力を持っているとか、絶対魔王の剣持ってる人間だろ。
ネグレリアから与えられたのか?
嫌だねえ……進めば裏切り者、後ろに引返せば、俺達を尾行しているのか、監視しているのかは分からない奴と、味方ではなさそうな元クラスメイトに挟まれるのは。
「……そっちのパターン?」
「ああ、麗翠には説明してなかったか。勇者パーティー……つまり俺達と同じクラスだった奴の中に、魔王軍に寝返っている奴がいるんだよ。恐らく、九階にいるのもそうだろうな」
「え!? そ、そんな!? 何のために!?」
麗翠は当然驚く。
俺も女神の加護持ちが、魔王軍に寝返っているって初めて知った時はそれぐらい驚いたからな。
まあ、裏切った理由がしょうもなさすぎて、ブチ切れたけど。
「佐藤た……貴なんちゃらと、東の方の伊東って覚えているか?」
「え……佐藤……貴明くんと伊東悠馬くんのこと?」
「えっ……そんな名前だったの?」
麗翠にあの二人の名前を教えてもらう。
佐藤に関してはほぼほぼ合ってたけど、伊東に関しては、こんな名前だったよなあ……って思い出していた名前すら違うじゃねえか。
誰だ、伊東悠也や伊東悠太って。
まあ……裏切り者の名前なんかどうでもいいか。
「……その二人は人間を裏切って、魔王軍の仲間になってたんだよ。しかも理由が、この世界での自分達の扱いに耐え切れなかったから裏切ったんだとよ。しかも、あの二人は大関も殺したし、セトロベイーナの多くの人間を殺したんだ」
「そんな理由で……。それじゃ、九階にいる人もそんな理由で裏切ったのかな?」
「さあな……。俺もこの世界の人間に酷い扱いを受けたけど、魔王軍に寝返って、人間を裏切るなんてことはしなかった。俺には裏切る理由が分からないね。麗翠もそうだろ?」
「そうだね……私の場合はそんな気も起きなかっただけなんだけど……」
俺も麗翠もこの先にいるであろう裏切り者に、苦笑いを浮かべるしか無かった。
ネグレリアのいる城の中は階層を上がれば上がるほど暗くなっていったが、女神の加護の一つ、五感強化のお陰で、明かりがなくても進めるので問題ない。
問題があるとすれば、一瞬だけ俺が感じた、人の気配。
しかも、ただの人間じゃない。
女神の加護持ちだ。
まあ……麗翠の女神の緑の敵探知に引っかからなかったってことは、俺達の敵ではないのかもしれない。
でも……不気味なんだよな……なんか。
「あっ、仁。もうすぐ階段終わるよ。……サーチ、オプティマルルート。……えっ?」
九階にいる敵の探知と十階への最適ルートの案内のための魔法を使った麗翠が、何か引っかかることがあったのか、驚いている。
「どうした? 敵が大量にでもいたか?」
「……その逆、一匹……いや一人しかいないの。……まさか、ネグレリア?」
「おおっと、早くも登場かよ。最上階で見ていられなくなったか? ネグレリア・ワームを通して、俺達のことは見えているはずだからな」
ネグレリア・ワームが見ている景色は、魔王軍幹部ネグレリアに鮮明な映像として伝わる。
どうやって伝わっているのかは分からないが、ネグレリアはネグレリア・ワームを通して滅ぼそうとする対象の国の弱点や誰を殺せばその国はガタガタになるのかを調べてから、入念な計画を立てて、国を滅ぼす。
だからネグレリア・ワームに遭遇して、戦ってしまった時点で、ネグレリアには手の内がバレてしまうし、ネグレリアはこちらの弱点も見つける事が出来る。
(「ネグレリアと戦うことになれば、こちらの弱点ばかりを攻めてくるので、苦戦を強いられるでしょうね……。でも、勇者様なら大丈夫ですよ!」)
……短い間だったが、リベッネと一緒に戦ったのは、無駄ではなかったみたいだな。
彼女の言葉やアドバイスがあったからこそ、全ての力をさらけ出さずに、ネグレリア・ワームを全滅させるというネグレリアの攻略法を見つけることが出来た。
感謝しないとだし、セトロベイーナ王国へと戻ったら、一度彼女の墓に行かなければだな。
……さて、ネグレリアが十階で待っていられず、わざわざ九階に降りてきてまで俺達を待っているということは、俺達を倒す算段でも弾きだせたとネグレリアが勘違いしてくれたか?
だが、残念だったな。
まだこっちは、麗翠が強化魔法で本気を出してないぜ?
しかも、ネグレリアにとって、今の俺は相性が悪い。
「よし、麗翠。俺に麗翠が持っている最大の強化魔法をかけてくれ。ネグレリアを討伐してや……」
「あ……ごめん。九階にいるのは人だった」
「えぇ……」
なんだよ。
勘違いしていたのは俺らの方かよ。
カッコつけて一人で、本気出してないぜ? とか思っていた俺がバカみたいじゃん。
……って、人……だと?
「は……? 人って?」
「人間……だね。でもなんだろう……人間なのに、物凄く禍々しい力を感じる……何これ? 一瞬ネグレリアと勘違いしちゃったのも、九階にいる人間が放っているか、持っている禍々しい力のせい……?」
「あー……そっちのパターンですか」
麗翠の言葉で、すぐに俺は察した。
はいはい、九階にいるのは魔王軍に寝返った女神の加護持ちね。
人のくせに禍々しい力を持っているとか、絶対魔王の剣持ってる人間だろ。
ネグレリアから与えられたのか?
嫌だねえ……進めば裏切り者、後ろに引返せば、俺達を尾行しているのか、監視しているのかは分からない奴と、味方ではなさそうな元クラスメイトに挟まれるのは。
「……そっちのパターン?」
「ああ、麗翠には説明してなかったか。勇者パーティー……つまり俺達と同じクラスだった奴の中に、魔王軍に寝返っている奴がいるんだよ。恐らく、九階にいるのもそうだろうな」
「え!? そ、そんな!? 何のために!?」
麗翠は当然驚く。
俺も女神の加護持ちが、魔王軍に寝返っているって初めて知った時はそれぐらい驚いたからな。
まあ、裏切った理由がしょうもなさすぎて、ブチ切れたけど。
「佐藤た……貴なんちゃらと、東の方の伊東って覚えているか?」
「え……佐藤……貴明くんと伊東悠馬くんのこと?」
「えっ……そんな名前だったの?」
麗翠にあの二人の名前を教えてもらう。
佐藤に関してはほぼほぼ合ってたけど、伊東に関しては、こんな名前だったよなあ……って思い出していた名前すら違うじゃねえか。
誰だ、伊東悠也や伊東悠太って。
まあ……裏切り者の名前なんかどうでもいいか。
「……その二人は人間を裏切って、魔王軍の仲間になってたんだよ。しかも理由が、この世界での自分達の扱いに耐え切れなかったから裏切ったんだとよ。しかも、あの二人は大関も殺したし、セトロベイーナの多くの人間を殺したんだ」
「そんな理由で……。それじゃ、九階にいる人もそんな理由で裏切ったのかな?」
「さあな……。俺もこの世界の人間に酷い扱いを受けたけど、魔王軍に寝返って、人間を裏切るなんてことはしなかった。俺には裏切る理由が分からないね。麗翠もそうだろ?」
「そうだね……私の場合はそんな気も起きなかっただけなんだけど……」
俺も麗翠もこの先にいるであろう裏切り者に、苦笑いを浮かべるしか無かった。
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