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10 士官訓練センター
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連合宇宙軍士官予備学校。略して士官訓練センター。
宇宙船の操船や戦闘はもちろん、銃やナイフの扱いを知らない素人に、連合宇宙軍士官候補となるための基礎をたたき込む機関である。
期間は2年。一般の兵士ではなく士官候補を育てるための学校だから、入校には厳しい基準があり、さまざまな選抜試験をクリアしたものしか入れない。難関と言われる試験をクリアしたものでも、ついていけなくて自分から辞めていったり、辞めさせられたりすることも多く、二年間の訓練をやり通し、卒業できるものは半数にも満たない。
この士官訓練センターを修了すれば、晴れて連合宇宙軍の士官候補生になれる。
エリートへの第一歩である。
各地の軍事基地に派遣されて兵士たちを指揮したり、宇宙艦隊に所属して、士官としての任務につくこともある。
士官候補生であるから、もちろん先任士官たちの見習いであり、宇宙軍兵士たちを指揮することの難しさを身をもって知ることになるのであるが…。
たとえ、連合宇宙軍の士官候補にならなくとも、士官訓練センターを修了したといえば、宇宙で生き抜くための知識、体力、武器の扱い、操船技術などすべてに高い能力がある証となるから、どんな仕事に就くのにも優遇される。
そして、ほんの少数ではあるが、士官訓練センターで特に優秀だと認められた士官候補生は連合宇宙軍の中心であるセントラルの士官学校へ送られ、エリート士官への道が開けるのである。
もちろん、ハイレベルな宇宙軍士官たちをも指揮できる上官になるために、また、それぞれの道のプロフェッショナルとなるために、いっそう厳しい特別プログラムが待っているのではあるが…。
リュウと一緒に士官訓練センターに入校したのは100名余りであった。スクールを卒業した18歳のものが中心だが、他の仕事に就いていて実戦経験のあるもの、高等教育プログラムを終えたものもいる。年齢や経験に幅があるが、ここでは訓練においても、教育においてもすべて平等に扱われる。年上だからと言って特別扱いするでもなし、年下だからと言って力が劣ることも許されない。これ以上はないくらいにシビアであった。
連合宇宙軍は争いが起こればどんな辺境へでも乗り込んでいく。
海賊や犯罪者たちも追わなければならない。
宇宙軍の兵士たちは優れた戦闘能力を持ち、精神的にも肉体的にも鍛え上げられていた。その連合宇宙軍兵士たちを指揮できる士官を作り出すためのプログラムであるから、訓練は超ハードであった。兵士たちを納得させることのできる知識や技術、戦闘力などが要求されるのである。
ここベルンの士官訓練センターでも、体力や能力の劣っているものを必要としていない。たとえ力のあるものでも、覚悟をしてトレーニングに励まなければ、すぐに落ちこぼれてしまうほどである。
最初の3カ月は、体力づくりと身体防衛のための基礎訓練が中心だ。厳しい実技トレーニングの合間には、宙航術や通信術、物理、電子工学、砲撃や操船を始める前の基礎学習などの座学もたっぷり用意されているのであるが…。訓練生にとっては、毎日が走ったり泳いだり、ウエイトトレーニングをしたり、重力や浮力への抵抗を高めたりという訓練の連続に思えた。銃やナイフの扱い方、素手での闘い方などもたたき込まれる。
体力はもちろん、かなりの根性がなければ乗り切れない、訓練生にとっては血を吐くようなスタートである。さらに、どこの軍でもそうだろうが、上官への絶対服従の姿勢もここでたたき込まれることになる。スクールとはまったく異なる環境に、柔軟性のない者はすぐに弾き出されるシステムになっていた。
それに。訓練生たちを鍛える教官は、いずれも連合宇宙軍で軍務を経験した猛者ばかりであった。
「阿刀野、手を抜くな。もっとスピードを出せ。おまえはリーダーだろ! そんなことではみながノルマをクリアできないぞ」
毎日必ず行われる基礎訓練では、各教官の怒鳴り声が絶えることがない。
しかし、一カ月も過ぎる頃からは、毎日のように怒声を浴びせられるのが、リュウの役目のようになっていた。好きでリーダーになったわけでもないのに。
士官訓練センターでは、教室、施設、マシーンの関係で、新訓練生たちを便宜上4つのクラスに分けていた。
リュウは阿刀野という名のためか、それとも、別の理由があったのかはわからないが、クラスのリーダーになってしまったのである。
クラス担当はスティーブ・トンプソン教官。連合宇宙軍のトップパイロットのひとりとして、さまざまな宙域を飛び回ってきた操縦のプロフェッショナルである。いかついカラダに鋭い目を光らせて、情け容赦なく訓練生たちを鍛えていた。
クラス全員に目を光らせるより、リュウひとりを押さえつけておく方が楽なためか、スティーブの目はいつもリュウを見ているようである。リュウにしてみれば、ミスひとつ、手抜きひとつできないつらい立場であった。
今だって、数々のトレーニングをこなした後、結構な距離を走らされているのだが、決められたタイム内にゴールするためにペースを上げろと怒鳴られたのだ。ペースが早すぎるとみなに後で文句をつけられるし、ついて来られないものもでるかもしれない。
もし途中でついて来られなくなったら…、体力面で無能の烙印を押されて、士官訓練センターを辞めさせられそうなやつもいる。
「教官! 俺は自分が倒れないでいるのが精一杯。手など抜いていませんし、リーダーだからと言って、みなを引っ張るどころではありません」と上官への不服従を承知で、仲間のことを考えた言葉を返した。
スティーブはリュウを咎めるかわりに別の指示を出した。
「ルーイン、前に立て!」
声が飛び、ルーインがすいっと前に出た。
ルーインはリュウより年上である。細身の身体つきはレイに似ているが、濡れるような黒髪である。普段は肩にきれいに流されている髪が、走っている今は後ろでひとつにまとまっていて、それが走るリズムにあわせて揺れていた。細面の顔に切れ長のグレイの目が冷たい雰囲気を醸す、整った顔立ちの男だ。
だが、笑みを見せることの少ない顔には甘さがひとかけらもない。
ルーインは美貌よりも、抜群のポテンシャルの持ち主として知られており、みなに一目置かれる存在であった。
しかし、どちらかというと冷たい雰囲気があり、近寄りがたくて、誰もそばに近づこうとしない。ただ、リュウは、どこかレイに似た雰囲気の静かな男に興味を持っていた。
ところが、ルーインは、何かにつけてリュウを目の敵にしていた。
「ルーイン。あまりペースを上げるとみんながついて行けない。考えてくれ」
リュウが後ろから小さく声をかけた。
「キミは甘いな。それともさっきの言葉とは違って、他人のことを考える余裕があると言うわけか? ついて来られないやつは放っておけ。鍛え足りないのが悪い」
冷えきった言葉を吐いたかと思うと、後は知らんふりでさらにペースがあがる。
リュウはムッとしたが、走りながら何度も話しかけるわけにもいかない。それもこんなスピードで。
自分まで置いていかれてたまるかと、知らずリュウのスピードも上がった。
リュウが集団から離れてルーインの後を追いだしたのを見て、教官であるスティーブがにやりと笑みを浮かべた。
宇宙船の操船や戦闘はもちろん、銃やナイフの扱いを知らない素人に、連合宇宙軍士官候補となるための基礎をたたき込む機関である。
期間は2年。一般の兵士ではなく士官候補を育てるための学校だから、入校には厳しい基準があり、さまざまな選抜試験をクリアしたものしか入れない。難関と言われる試験をクリアしたものでも、ついていけなくて自分から辞めていったり、辞めさせられたりすることも多く、二年間の訓練をやり通し、卒業できるものは半数にも満たない。
この士官訓練センターを修了すれば、晴れて連合宇宙軍の士官候補生になれる。
エリートへの第一歩である。
各地の軍事基地に派遣されて兵士たちを指揮したり、宇宙艦隊に所属して、士官としての任務につくこともある。
士官候補生であるから、もちろん先任士官たちの見習いであり、宇宙軍兵士たちを指揮することの難しさを身をもって知ることになるのであるが…。
たとえ、連合宇宙軍の士官候補にならなくとも、士官訓練センターを修了したといえば、宇宙で生き抜くための知識、体力、武器の扱い、操船技術などすべてに高い能力がある証となるから、どんな仕事に就くのにも優遇される。
そして、ほんの少数ではあるが、士官訓練センターで特に優秀だと認められた士官候補生は連合宇宙軍の中心であるセントラルの士官学校へ送られ、エリート士官への道が開けるのである。
もちろん、ハイレベルな宇宙軍士官たちをも指揮できる上官になるために、また、それぞれの道のプロフェッショナルとなるために、いっそう厳しい特別プログラムが待っているのではあるが…。
リュウと一緒に士官訓練センターに入校したのは100名余りであった。スクールを卒業した18歳のものが中心だが、他の仕事に就いていて実戦経験のあるもの、高等教育プログラムを終えたものもいる。年齢や経験に幅があるが、ここでは訓練においても、教育においてもすべて平等に扱われる。年上だからと言って特別扱いするでもなし、年下だからと言って力が劣ることも許されない。これ以上はないくらいにシビアであった。
連合宇宙軍は争いが起こればどんな辺境へでも乗り込んでいく。
海賊や犯罪者たちも追わなければならない。
宇宙軍の兵士たちは優れた戦闘能力を持ち、精神的にも肉体的にも鍛え上げられていた。その連合宇宙軍兵士たちを指揮できる士官を作り出すためのプログラムであるから、訓練は超ハードであった。兵士たちを納得させることのできる知識や技術、戦闘力などが要求されるのである。
ここベルンの士官訓練センターでも、体力や能力の劣っているものを必要としていない。たとえ力のあるものでも、覚悟をしてトレーニングに励まなければ、すぐに落ちこぼれてしまうほどである。
最初の3カ月は、体力づくりと身体防衛のための基礎訓練が中心だ。厳しい実技トレーニングの合間には、宙航術や通信術、物理、電子工学、砲撃や操船を始める前の基礎学習などの座学もたっぷり用意されているのであるが…。訓練生にとっては、毎日が走ったり泳いだり、ウエイトトレーニングをしたり、重力や浮力への抵抗を高めたりという訓練の連続に思えた。銃やナイフの扱い方、素手での闘い方などもたたき込まれる。
体力はもちろん、かなりの根性がなければ乗り切れない、訓練生にとっては血を吐くようなスタートである。さらに、どこの軍でもそうだろうが、上官への絶対服従の姿勢もここでたたき込まれることになる。スクールとはまったく異なる環境に、柔軟性のない者はすぐに弾き出されるシステムになっていた。
それに。訓練生たちを鍛える教官は、いずれも連合宇宙軍で軍務を経験した猛者ばかりであった。
「阿刀野、手を抜くな。もっとスピードを出せ。おまえはリーダーだろ! そんなことではみながノルマをクリアできないぞ」
毎日必ず行われる基礎訓練では、各教官の怒鳴り声が絶えることがない。
しかし、一カ月も過ぎる頃からは、毎日のように怒声を浴びせられるのが、リュウの役目のようになっていた。好きでリーダーになったわけでもないのに。
士官訓練センターでは、教室、施設、マシーンの関係で、新訓練生たちを便宜上4つのクラスに分けていた。
リュウは阿刀野という名のためか、それとも、別の理由があったのかはわからないが、クラスのリーダーになってしまったのである。
クラス担当はスティーブ・トンプソン教官。連合宇宙軍のトップパイロットのひとりとして、さまざまな宙域を飛び回ってきた操縦のプロフェッショナルである。いかついカラダに鋭い目を光らせて、情け容赦なく訓練生たちを鍛えていた。
クラス全員に目を光らせるより、リュウひとりを押さえつけておく方が楽なためか、スティーブの目はいつもリュウを見ているようである。リュウにしてみれば、ミスひとつ、手抜きひとつできないつらい立場であった。
今だって、数々のトレーニングをこなした後、結構な距離を走らされているのだが、決められたタイム内にゴールするためにペースを上げろと怒鳴られたのだ。ペースが早すぎるとみなに後で文句をつけられるし、ついて来られないものもでるかもしれない。
もし途中でついて来られなくなったら…、体力面で無能の烙印を押されて、士官訓練センターを辞めさせられそうなやつもいる。
「教官! 俺は自分が倒れないでいるのが精一杯。手など抜いていませんし、リーダーだからと言って、みなを引っ張るどころではありません」と上官への不服従を承知で、仲間のことを考えた言葉を返した。
スティーブはリュウを咎めるかわりに別の指示を出した。
「ルーイン、前に立て!」
声が飛び、ルーインがすいっと前に出た。
ルーインはリュウより年上である。細身の身体つきはレイに似ているが、濡れるような黒髪である。普段は肩にきれいに流されている髪が、走っている今は後ろでひとつにまとまっていて、それが走るリズムにあわせて揺れていた。細面の顔に切れ長のグレイの目が冷たい雰囲気を醸す、整った顔立ちの男だ。
だが、笑みを見せることの少ない顔には甘さがひとかけらもない。
ルーインは美貌よりも、抜群のポテンシャルの持ち主として知られており、みなに一目置かれる存在であった。
しかし、どちらかというと冷たい雰囲気があり、近寄りがたくて、誰もそばに近づこうとしない。ただ、リュウは、どこかレイに似た雰囲気の静かな男に興味を持っていた。
ところが、ルーインは、何かにつけてリュウを目の敵にしていた。
「ルーイン。あまりペースを上げるとみんながついて行けない。考えてくれ」
リュウが後ろから小さく声をかけた。
「キミは甘いな。それともさっきの言葉とは違って、他人のことを考える余裕があると言うわけか? ついて来られないやつは放っておけ。鍛え足りないのが悪い」
冷えきった言葉を吐いたかと思うと、後は知らんふりでさらにペースがあがる。
リュウはムッとしたが、走りながら何度も話しかけるわけにもいかない。それもこんなスピードで。
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