変わらない想いをあなたへ

好天

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 「それであの時のお前はさぁ…」


 「もう、その話はやめてよ」


 青嵐との楽しい時間は1時間ほど続いていて、今後の話が尽きたかと思われたが、それからは昔話に花が咲き、僕がいかに注意力散漫で鈍くさかったかをとくと話されていた。とても機嫌がよさそうに笑う青嵐は悪い悪いと反省のそぶりも見せずに口にする。


 「ほら、機嫌なおせよ。これ、うまいだろ?」


 「ん…もうおなかいっぱいだよ」


 と言いつつも青嵐から渡されるものを無下にはできなくて、先ほどから小さな赤い実をいくつも食べさせられている。心なしか体が熱くなってきて、晴酒を飲む手が進む。


 「なんか…酔ってきたかも…」


 「大丈夫か?明日も早いだろうし、水でも飲むか?」


 「うん…」


 青嵐に手渡された水を飲んでから5分と立たない間に体の熱さが増幅し、無意識に手が震えだした。


 「あ…え?なんか…おかし…」


 「どうした、緑雨?」


 青嵐は心配そうに僕の頬に手を寄せると、肌を一撫でしてその場にとどまる。その刺激だけで僕の体は馬鹿になったみたいに火照りだした。青嵐の触れている箇所から震えは体中に広がり、吐く息がどうにも熱くなる。気を抜くと変な声が漏れそうで、必死で呼吸をし、壊れたように暴れる心臓を落ち着けようと試みる。


 「あーあ。辛そうだな。本当に昔から変わっていないな。緑雨」


 「ん、せ…らん?」


 そう言って、僕の頬から手を離すと、晴酒や少しだけ残された果物をサイドテーブルにまとめだした。


 「鈍感で警戒心なんてまるでゼロ。ま、そんなとこもかわいいんだけどさ?」


 にっこりと笑う青嵐の瞳はいつもより暗い緑色をしていて、そんな色にもなるのかと驚きつつもその美しさにとらわれていた。頭はぼーっとしてきているが、鳴りやまない心臓は青嵐の笑顔を見てさらに速度を上げたようで、ちぐはぐな頭と体は僕の意識を置いていくようだった。


 「ほら、体つらいんだろ?横になろうか」


 「ひっ…あ、」


 青嵐は僕の膝裏と腰の上あたりに手を差し込むと軽々と僕を持ち上げた。酩酊感に煽られた浮遊感は僕の恐怖心を刺激し、慌てて青嵐にしがみつく。頼りがいのある体に安心したのもつかの間、触れ合うところから否応なく熱が広がる。触れられているだけなのに心地よさと気持ちよさを感じてしまい、少しの振動に体が高まっていく。耳元でその美しくも落ち着いた低い笑い声が聞こえ、なんだか無性に恥ずかしくなった。


 「も、おろして…」


 「あぁ。ついたぜ」


 ゆっくりと僕をベッドに降ろして立ち去るかと思った青嵐だが、静かに同じベッドへ腰掛けた。それからは大事なものでも触るように僕に触れては、少し撫でて手を離すことを繰り返していた。そのたびにぴくぴくと震え、我慢できずに声を漏らす。


 「ん…はぁ、青嵐…」


 「どうした?」


 おそらく青嵐も気づいているだろうにそこをうまく避けて触れてくる。際どい足の付け根や、下腹部をさわさわと撫でられる。あまり使われていない僕の屹立はあろうことか徐々に存在を主張してきていて、無視できぬほどに布を押し上げている。


 「ん、くるし…」


 「あぁ…苦しそうだな?」


 にやりと笑う青嵐は先程まで散々焦らしていたそこを優しく撫でた。


 「ひ、んぅあ…?!」


 「うお、今ので出たのか?はは、かわいいな」


 撫でられただけで絶頂してしまった僕は先程より荒く息を吸い込んでは吐き出し、回らない頭を叱咤した。何かがおかしい。こんなことは今までなくて、羞恥心なのかなんなのかわからない感情が渦巻き必死で警報を鳴らしていた。明らかにいつもより敏感になっているのだが、頭はもやがかかったみたいに鈍い動きをしている。


 「こ…んな…んぅ、な、んで…」


 「あぁ。気にするな緑雨。さっき赤い実を食べたろ?あれは霧の実と呼ばれていてな。アルコールと反応するんだ。酔いが回りやすく、体が敏感になる。そんでさっきの水は…体がうずくように魔法をかけておいたんだ。まだ使いこなせてなくて物にしかかけれねぇんだけど…まぁ媚薬みたいなもんだな。」


 「…?なに、言ってるの…?」


 「とにかくお前の体は変になったんじゃない。心配せずとも大丈夫だ」



 そういって頭を優しく撫でられるとさっきまでの不安感が嘘のように消えていく。それと同時にほんのりと暖かな光が視界をかすめ頭に染み込んでゆく。青嵐の言葉は耳を通り抜けるが理解することを拒絶しているような。おかしな感覚。そう、まるで認識疎外の魔法をかけられたときのような…。そこまで考え付いたが夢のように儚く正常な思考は消えていった。それからは体の熱さが無視できなくなってきて、なんとか服を脱ごうとするが努力の甲斐なく、うまく力の入らない手は服の上を滑り落ちる。無情にもその刺激にも感じずにはいられなかった。


 「ひっ…あ、ついの…せいらん…」


 「はぁ…ほんとお前は…あぁ、脱がしてやるよ」


 眉根を寄せた厳しそうな顔と反対に呆れつつも優しい声音がよく知った青嵐で、なんだか安心した僕はふふと小さな笑みをこぼした。


 「なに笑ってんだよ」


 そういって睨みつつも変わらない優しい声と手つきが僕の心をふわりと温める。上はもうだいぶはだけていたが不思議と羞恥心はなかった。それよりも少しの高揚感と、大きな解放感が僕の心を占めていた。肌に当たる少し冷たい空気と青嵐の大きな手の温かさが心地いい。それから手が下に回り、そんなことも言っていられないくらいに焦ったのだけれど。


 「ち、ちょっと…待って、そこは…いい」


 「なんでだよ?むしろ出して気持ち悪いだろ?」


 「ぅ…自分で!」


 「そんな力入ってねぇのに?」


 たしかに今まで意識していなかったが何とも言えぬ気持ち悪さである。今にも脱ぎ捨ててしまいたいのだが青嵐の手前そんなこともできないし、何より力が入らない。にやりと笑った青嵐は手を止めることはなく、流れるような手つきで僕の下着を脱がしにかかった。僕はというと抵抗らしい抵抗もできずなすがままの状態である。先程の羞恥心が舞い戻ってきたようで、無意識に顔に熱が集まる。脱がし切っていっぱい出たなと笑う青嵐に一発拳を見舞いたい。


 「ふっ…真っ赤だな」


 そう言った青嵐は初めて見る雄の顔で笑っていた。妖艶なその姿は女の子だったら倒れてしまうのではないかと心配になるほどで、いやこれは万人がくらりとくるはずだと思いなおした。現に僕の心臓は今日でおそらく一生分の働きをしてくれている気がする。


 「顔も…ここも」


 「えっ?…は、ん!」


 僕から視線をそらさずゆっくりと体をかがめると、ピンと主張していた胸の飾りを見せつけるようになめだした。青嵐の真っ赤な舌がとてもいやらしく見えてそこに意識が向いてしまった僕はこの状況が理解できずにただあり得ない場所からの快感に翻弄されるしかなかった。


 「ちょ、ひぅ?!ん…ぁ…」


 止めようとあげた手は青嵐の頭を抑えてしまって無意識に反り返る背と相まって刺激をねだってしまっているようだった。咥えられていない方は骨ばった手に摘ままれ、舌とは違った刺激に困惑するも確かに快感として拾っていた。コリコリと擦り付けるように指を動かされたり、優しく撫でられたり、予想のできない他人からの刺激に面白いほどに体は反応していく。


 「む、り…まって…まっ……んぁぁ!」


 高められた体はそのまま駆け上がり、景色を白く染め上げた。それでも終わらない優しい愛撫によりなかなか止まらない気持ちよさは、息を吸い込むことも忘れさせる。


 「ぅ…は…ぁ…」

 
 「まだまだこれからだよ、緑雨」 


 頬を撫でられ、生理的に流れ出た涙にぼやけた視界が捉えた彼の瞳は、深い深い緑をしていて、燃え上がるほどの熱さを湛えていた。


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