五十の手習い

赤羽律紀

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就職はしたけれど

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 1987年3月、僕は中学校を卒業し、父の勤め先の子会社に就職した。     
 当初は仕事がなかなか見つからず、苦戦を強いられた。それを見兼ねた父が働き口としてこの会社を紹介してくれたのだった。
 だが、当時の僕は仕事にはやる気を見出せず休みを取るという悪循環が生まれた。今思うとただのわがままだったと思っている。
 当時の職場は再就職をした人が多く、厳しい現場だった。今考えると社会の厳しさを教えてくれた職場だったんだなと思う。社会に出る厳しさを改めて教えてくれたの事実である。時に厳しく、時に優しく。皆さんはそんな気持ちで接してくださった。
 そんな皆さんの期待に応える形で一年は頑張ってきた。しかし、その日々も長くは続かなかった。翌年3月、最初の勤め先をクビになった。今でこそ笑い話かもしれないが、当時の僕にとっては落ち込むほどの衝撃であった。
「社会の厳しさを知った。それを分かっただけでも良かった」
 今はその1年間をこう振り返るようにしている。社会人一年生の日々は、こうして幕を閉じた。そして、僕は次のステージへと向かい始めるのである。
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